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上野竜生です。今回は数IIの微分をするための基本的な極限と基本的な微分を学びます。普通の文系の人なら途中理解できなくても最後の微分だけできればいいかと思います。仕組みがわからなくても機械的に微分できるので最低限そこだけできるようにしましょう。

極限

x→aのときf(x)がAに限りなく近づくなら\(\displaystyle \lim_{x\to a} f(x)=A \)とかく。
これを極限という。「限りなく近づく」があいまいです。厳密な定義は大学でやるのですが,理解が難しい上に高校範囲では直感的に「限りなく近づく」で十分なのでこのように定義します。数学的に正確に定義できる考えなので厳密性は特に問題ありません。とりあえず認めましょう。ただし,極限を使った公式や定理などの証明は高校範囲ではできません(極限の厳密な定義が範囲外のため。よって証明はテストにも出題できず極限の定理などの証明は暗記不要)
数IIIになるといろいろな極限を習いますが数IIの範囲で知ってほしいことは2つ+オマケ2つ

POINT

不定形(0分の0など)の形以外は普通に値を代入すればOK
0分の0の不定形の場合,因数分解して約分すればOK
→①②の具体例は例題1を参照
オマケ
①極限は必ずしも存在するとは限らない。
たとえば\( y=\frac{1}{x} \)でx→0のときx>0でx→0に近づけると正の無限大に発散するし,x<0でx→0に近づけると負の無限大に発散する。このように近づけ方によって結果が変わるようなときは極限は存在しないという。
②f(a),g(a)の一方が0であり,\(\displaystyle \lim_{x\to a} \frac{f(x)}{g(x)} \)が0以外の有限の値で存在するならf(a),g(a)のもう片方も0である。
→具体例は例題2参照
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例題1

次の極限を求めよ。
(1) \(\displaystyle \lim_{x\to 1} \frac{x^2-7x+10}{x-2} \)
(2) \(\displaystyle \lim_{x\to 2} \frac{x^2-7x+10}{x-2} \)

答え

(1)これは単純にx=1を代入すればOKです。
\(\displaystyle \lim_{x\to 1} \frac{x^2-7x+10}{x-2}= \frac{1^2-7+10}{1-2}=-4 \)
(2)これは単純にx=2を代入すると0分の0になります。これが不定形です。この場合は約分できないか考えましょう
\(\displaystyle \lim_{x\to 2} \frac{(x-2)(x-5)}{x-2}=\lim_{x\to 2} (x-5) = -3 \)
注1
実は今回の関数は
\(\displaystyle \frac{x^2-7x+10}{x-2}=\frac{(x-2)(x-5)}{x-2}=x-5 \)
なのでただの1次関数です。ただし,x=2のときだけ分母が0になるので未定義です。なので厳密には今回の関数はx-5(x≠2)となります。
極限のイメージ
(1)ではx→1に近づいたとき単純に-4に近づくと答えればOKですが
(2)ではx=2での値がありません。ですがグラフからx→2で-3に限りなく近づくとわかりますね。極限はこういうものを表しているのです。もちろんこれ以外にもいろいろなパターンの極限がありますが数IIではこのパターンだけ理解すればOKです。
注2
limは省略しないように書きましょう。たとえば(2)で
\(\displaystyle \lim_{x\to 2} \frac{(x-2)(x-5)}{x-2}= x-5  \)
みたいに省略しがちです。言いたいことはわかりますがlimを書かないと厳密には正しくない式が出来上がります。減点されやすいので省略せずに書きましょう。

例題2

\(\displaystyle \lim_{x\to 1} \frac{x^2+ax+b}{x-1}=6 \)となるような定数a,bの値を求めよ。
単純にx=1を代入すると分母が0になります。分子も0にならないと不定形にならず,極限が有限の値にはなりません。なので分子も0に近づくことがわかります。厳密には数IIIで習います(そもそも極限の厳密の定義は大学で習います)ので数IIでは厳密性をちょっと無視して割と直感的に分子は0じゃないといけないと理解するだけで十分です。証明が厳密じゃないだけで結果は厳密に正しいです。

答え

分母→0より分子→0が必要
よって1+a+b=0 ∴b=-a-1
このとき
\(\displaystyle \lim_{x\to 1} \frac{x^2+ax-a-1}{x-1}=\lim_{x\to 1} \frac{(x+a+1)(x-1)}{x-1}=\lim_{x\to 1} (x+a+1)=a+2 \)
a+2=6だからa=4
b=-a-1=-4-1=-5
最初のa,bの式では因数分解できるかどうかもわかりませんが分子→0からbを消去すれば必ず因数分解できる形になることを意識しましょう。
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微分の定義

関数f(x)がx=aからx=a+hまで増えた時の平均変化率は次の通り
\[ \frac{f(a+h)-f(a)}{(a+h)-a} \]
x=aにおけるf(x)の微分はこれのh→0の極限,つまり
\[ \lim_{h \to 0} \frac{f(a+h)-f(a)}{h} \]
で表し,これをf'(a)とかく。
また,同様にすると
\[ f'(x)=\lim_{h \to 0} \frac{f(x+h)-f(x)}{h} \]
となり,これを導関数という。

微分の例

\( f(x)=x^n \)のとき
\( \displaystyle f'(x)=\lim_{h\to 0} \frac{(x+h)^n -x^n}{h} \)
ここで二項定理から
\( (x+h)^n-x^n = n x^{n-1}h + g(x,h) h^2 \)
とかける。(g(x,h)は二項定理の残りの項。具体的には
g(x,h)=\( {}_n C_2 x^{n-2} + {}_nC_{3} x^{n-3}h + \cdots + {}_n C_n h^{n-2} \))
よって
\( \displaystyle \lim_{h \to 0} \frac{nx^{n-1}h + g(x,h)h^2}{h} = \lim_{h \to 0} (nx^{n-1} +g(x,h)h) = nx^{n-1} \)
(∵h→0なら第2項は0に近づく)
よってf(x)=xnの導関数は\(f'(x)=nx^{n-1}\)
これは微分の公式として覚えておきましょう。
その他の微分の公式を下にまとめています。極限がわからなかった人もとにかく下のポイントだけ理解しましょう。

POINT

①\(f(x)=x^n\)のとき\(f'(x)=nx^{n-1}\)
②{f(x)±g(x)}'=f'(x)±g'(x) (複号同順)
③{k・f(x)}'= k・f'(x)
注 {f(x)g(x)}'≠f'(x)g'(x)です。正確には数IIIで習いますがf'(x)g(x)+f(x)g'(x)となります。

例題3

(1)f(x)が次のとき,f'(x)を求めよ。
(i) f(x)=x3
(ii) f(x)=x2+6x+8
(iii) f(x)=(x+1)(x+2)
(2) f(x)=(2x+1)3のときf'(2)を求めよ。

答え

公式を使うだけです。
(1)(i) f'(x)=3x2
(ii)f'(x)=2x+6
(iii)f(x)=x2+3x+2よりf'(x)=2x+3
(2)f(x)=8x3+12x2+6x+1より
f'(x)=24x2+24x+6
f'(2)=96+48+6=150
注:(2)でt=2x+1とおくとf(x)=t3だから微分して3t2=3(2x+1)2
とはならない。正確には数IIIで合成関数の微分として習います。
参考:誤答例の下線部「微分して」というのがtでの微分なので,今回のようにxで微分するのとは少しズレが生じます。どれだけズレるかを計算することができるのでそれを補正すると正しくなります。この例だとズレはちょうど2倍です。「2」という数字はt=2x+1の左辺をxで微分した値と等しいのです。これが合成関数の微分です。

最後の例題4ができれば数IIの微分の問題で出てくる計算の8割は困らないと思います。数IIの微分積分で極限が問われる確率は低いです。最初に新しい概念が出てきてそこで躓いて諦めないようにしましょう。

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