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上野竜生です。前回はcosのチェビシェフの多項式を紹介しました。今回はsinにも類似の式があることを紹介します。

参考 cosのチェビシェフの多項式

\(g_1(x)=x , g_2(x)=2x^2-1 \)
\( g_{n+2}(x)=2xg_{n+1}(x)-g_{n}(x) \)
とおくと\( \cos{n\theta} = g_n(\cos{\theta}) \)となる。

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問題

(1)\( \sin{n\theta}=f_n(\cos{\theta})\sin{\theta}\)を満たすような
最高次の係数が\(2^{n-1} \)の(n-1)次整数係数多項式\( f_n(x) \)が存在することを示せ。
(2)\( f_n(x) \)はnが奇数のとき偶関数,偶数のとき奇関数であることを示せ。
(3)\( \{g_n(x)\}’=nf_n(x) \)が成り立つことを示せ。ただし\(g_n(x)\)は上の[参考]に書かれているcosのチェビシェフの多項式である。

(1)次の式が成立することに注意
\( \sin{(k+2)\theta} = 2\sin{(k+1)\theta}\cos{\theta}-\sin{k\theta} \)・・・(*)
(*)の証明
\( \sin{(k+2)\theta}+\sin{k\theta}
\\ = \sin{((k+1)\theta + \theta)}+\sin{((k+1)\theta-\theta)} \\ = \sin{(k+1)\theta} \cos{\theta}+\cos{(k+1)\theta}\sin{\theta} + \sin{(k+1)\theta}\cos{\theta} - \cos{(k+1)\theta}\sin{\theta} \\ = 2\sin{(k+1)\theta}\cos{\theta} \)
(和積の公式を知っていれば途中式を飛ばして一気に左辺=右辺が得られる。)これを移項すると(*)が得られる。

答えまとめて数学的帰納法で示す。
n=1,2のとき\( f_1(x)=1, f_2(x)=2x \)とすると成立。
n=k,k+1のとき成立すると仮定する。つまり
\( \sin{k\theta}=f_k (\cos{\theta})\sin{\theta} \) ・・・①
\( \sin{(k+1)\theta}=f_{k+1} (\cos{\theta})\sin{\theta} \)・・・②
\( f_k(x)\)は最高次の係数が\( 2^{k-1} \)である(k-1)次整数係数多項式・・・③
\( f_{k+1}(x)\)は最高次の係数が\( 2^{k} \)であるk次整数係数多項式・・・④
と仮定する。n=k+2のとき(*)より
\( \sin{(k+2)\theta} = 2\sin{(k+1)\theta}\cos{\theta} - \sin{k\theta} \\ = 2f_{k+1}(\cos{\theta})\sin{\theta}\cos{\theta} - f_k(\cos{\theta})\sin{\theta} \\ = \{ 2f_{k+1}(\cos{\theta}) \cos{\theta} - f_k(\cos{\theta})\} \sin{\theta} \)
(∵①②)
よって\( f_{k+2}(x)=2xf_{k+1}(x)-f_k(x) \)・・・⑤とおけばn=k+2のときも
\( \sin{(k+2)\theta}=f_{k+2}(\cos{\theta})\sin{\theta} \)が成立。
次に⑤の右辺の最高次の項に着目すると
第1項は④より最高次の係数が\( 2^{k+1} \)である(k+1)次整数多項式。
第2項は③より最高次の次数はk-1の整数係数多項式なので左辺は最高次の係数が\( 2^{k+1} \)である(k+1)次整数多項式。よってn=k+2のときも題意が成立。
この結果からわかる通りsinのチェビシェフの多項式は初項と第2項はcosのものと違いますが漸化式の部分はcosのものと全く同じです。
答え(2)nが奇数のとき\( f_n(-x)=f_n(x) \)
nが偶数のとき\( f_n(-x)=-f_n(x) \)
を示す。つまり\( f_n(-x)=(-1)^{n+1}f_n(x) \)・・・(**)を示せばよい。これを数学的帰納法で示す。
n=1,2のとき\( f_1(-x)=1=f_1(x) , f_2(-x)=-2x=-f_2(x) \)より成立。
n=k,k+1で成立すると仮定する。n=k+2のとき
\( f_{k+2}(x)=2xf_{k+1}(x)-f_k(x) \)に代入すると
\( f_{k+2}(-x)=-2xf_{k+1}(-x)-f_k(-x) \\ = -2x(-1)^{k+2}f_{k+1}(x) - (-1)^{k+1}f_k(x) \\ = (-1)^{k+3} 2xf_{k+1}(x) - (-1)^{k+3} f_k(x)\\ = (-1)^{k+3} f_{k+2}(x) \)
となるからn=k+2のときも成立。

もちろん偶数のとき,奇数のときで場合分けして示してもいいです。ちなみにfの性質(sinのn倍角の公式になっていること)を利用しsinやcosを代入して考える解法は少し注意がいります。
別解(要注意)
x=cosθとすると
\( f_n(-x)=f_n(-\cos{\theta})=f_n(\cos{(\pi-\theta)}) \)
ここで
\( f_n(\cos{(\pi-\theta)}) \sin{(\pi-\theta)}=\sin{(n(\pi-\theta))}\\ = \sin{n\pi}\cos{n\theta}-\cos{n\pi}\sin{n\theta} \\ = (-1)^{n+1}\sin{n\theta} \)
であることと
\( f_n(\cos{\theta})\sin{\theta}=\sin{n\theta} \)
を使うと
\( f_n(-\cos{\theta})=(-1)^{n+1} \frac{\sin{n\theta}}{\sin{\theta}}=(-1)^{n+1} f_n(\cos{\theta}) \)
となるので-1<x<1のとき(**)が成立。
\( f_n(x) \)はn-1次多項式であり,-1<x<1を満たす異なるn個の実数で(**)が成立するから一致の定理よりすべての実数で(**)が成立する。

一致の定理については下に補足しています。

答え(3)
\( g_n(\cos{\theta})=\cos{n\theta} \)の両辺をθで微分する
\( \{g_n(\cos{\theta})\}’ (-\sin{\theta})=-n\sin{n\theta}=-nf_n(\cos{\theta})\sin{\theta} \)
整理すると
\( \{g_n(\cos{\theta}) \}’ =n f_n(\cos{\theta}) \)
よって-1<x<1のときは\( \{g_n(x) \}’=nf_n(x) \)
つまり少なくとも-1<x<1を満たす異なるn個の実数xに対して成立する。
\( \{g_n(x) \}’ , f_n(x) \)はn-1次式なので一致の定理よりすべての実数に対して\( \{g_n(x) \}’=nf_n(x) \)が成立する。
[補足]一致の定理
F(x),G(x)はn-1次多項式とする。異なるn個の実数でF(x)=G(x)が成立するならすべての実数でF(x)=G(x)が成立する
<証明>
異なるn個の実数\( a_1,a_2,\cdots , a_n \)で\( F(a_1)=G(a_1), F(a_2)=G(a_2) , \cdots , F(a_n)=G(a_n) \)となるとする。
するとF(x)-G(x)に\( x=a_1 , a_2 , \cdots a_{n-1} \)を代入すると0だから因数定理より
\( F(x)-G(x)=A(x-a_1)(x-a_2)\cdots (x-a_{n-1}) \)
とかける。(∵左辺は高々n-1次式。右辺はn-1次式なのでAは定数)
\( x=a_n \)を代入しても0になるのでA=0
つまりF(x)-G(x)=0となり一致する。

(2)の別解や(3)のようにsinやcosを代入する場合は-1から1までの範囲でしか証明できないことを意識しましょう。しかしだからといってその範囲外の場合に全く別の解法を使うのではなく一致の定理というのを使います。あまり使わない定理ですが,難関大学ではたまに使わされるので難関大受験者は見ておきたいところです。

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