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上野竜生です。今回は三角形ABCの3つの角に対してsinA+sinB+sinC,sinAsinBsinC,cosA+cosB+cosC,cosAcosBcosCの最大・最小を扱います。

ちなみにtanA+tanB+tanC=tanAtanBtanC(=Xとおく)の取り得る範囲はこの記事で紹介している通り\( X<0,X\geq 3\sqrt{3} \)となります。

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例題

三角形ABCについて次の最大値と最小値を求めよ。ただし3つの角が180°,0°,0°の三角形など0°を含む三角形も三角形が成立しているとみなす。
(1)sinAsinBsinC
(2)sinA+sinB+sinC
(3)cosAcosBcosC
(4)cosA+cosB+cosC

まずわかりやすいところから片付けます。
sinA≧0,sinB≧0,sinC≧0なので
sinAsinBsinC≧0かつsinA+sinB+sinC≧0
180°,0°,0°の三角形のときに等号成立する。よって(1),(2)の最小値は0。
-1≦cosA≦1,-1≦cosB≦1,-1≦cosC≦1なので
cosAcosBcosC≧-1
等号成立は180°,0°,0°の三角形のとき。よって(3)の最小値は-1。
残りは難しいです。ですが基本的に最大値は正三角形のときだろうと予想できるのでまずCを消去して2変数にしたあと和積の公式や積和の公式でA+B,A-Bの式にしてA-B=0のときが最大にならないか考えましょう。「A+B」の関数にしてもいいのですがA+B=180°-CなのでCの関数でかくと見やすいですね。

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(1)(スタート→最初の式変形の部分。解1)

\( \sin{A}\sin{B}\sin{C} \\ = -\frac{1}{2}\{ \cos{(A+B)} - \cos{(A-B)} \} \sin{(180°-A-B)} \\ = -\frac{1}{2} \cos{(A+B)}\sin{(A+B)} + \frac{1}{2}\cos{(A-B)} \sin{(A+B)} \)
ここでsin(A+B)≧0,cos(A-B)≦1なので
\( \sin{A}\sin{B}\sin{C} \leq -\frac{1}{2} \cos{(A+B)}\sin{(A+B)} + \frac{1}{2}\sin{(A+B)} \)
ここでA+B=θとおくと
\( \sin{A}\sin{B}\sin{C} \leq -\frac{1}{2}\sin{\theta}\cos{\theta} + \frac{1}{2}\sin{\theta} \)
この右辺の最大値を求めればよい。

頭のイメージとしては解1のほうが理解しやすいと思いますが,最初からA+Bの式にするということを知っていればA+B=180°-CなのでCの式にするほうが新しい変数を持ってこなくていい分,見やすいかもしれません。

(解2。A+B=θとおく代わりにCの式にする)

\(\sin{A}\sin{B}\sin{C} \\ = -\frac{1}{2}\{ \cos{(A+B)}-\cos{(A-B)} \} \sin{C} \\ = -\frac{1}{2} \{ \cos{(180°-C)} -\cos{(A-B)} \} \sin{C} \\ =\frac{1}{2}\cos{C}\sin{C} + \frac{1}{2}\cos{(A-B)} \sin{C} \leq \frac{1}{2}\cos{C} \sin{C} + \frac{1}{2}\sin{C} \)
(最後の不等式はsinC≧0,cos(A-B)≦1より成り立つ)
あとはこの最後の辺の最大値を求めればよい。

解1と符号が違うかもしれませんがθ=A+B=180°-Cなので
sinθ=sinC, cosθ=-cosCが成り立つことから同じ式になります。以下では解2の式について最大を計算します。

(式変形→最大値の部分。解1)

2乗して考える。
\( \frac{1}{2}\cos{C}\sin{C}+\frac{1}{2}\sin{C} = \frac{1}{2}\sin{C}( \cos{C}+1) \geq 0 \)
なので2乗したものの最大を求めればよい。
2乗すると
\( \frac{1}{4}\sin^2{C} ( \cos{C}+1)^2 = \frac{1}{4} (1-\cos^2{C}) (\cos{C}+1)^2 = \frac{1}{4} (-\cos^4{C} -2\cos^3{C} +2\cos{C} +1) \)
t=cosCとすると\( \frac{1}{4}(-t^4-2t^3+2t+1) \)
\( f(t)=-t^4-2t^3+2t+1 \)とおき,-1≦t≦1での最大値を求めればよい。
\( f’(t)=-4t^3 - 6t^2+2 = -2(2t-1)(t+1)^2 \)なので増減表は下の通り

\begin{array}{c|ccccc} x & -1 & \cdots & \frac{1}{2} & \cdots & 1 \\ \hline f’(x) &  & + & 0 & - & - \\ \hline f(x) & f(-1) & \nearrow & \frac{27}{16} & \searrow & f(1) \end{array}

よって
\( \{ \frac{1}{2}\sin{C}(\cos{C}+1) \}^2 \leq \frac{27}{64} \)となるから
\( \frac{1}{2}\sin{C}(\cos{C}+1) \leq \frac{3\sqrt{3}}{8} \)
等号成立はcos(A-B)=1かつt=cosC=\( \frac{1}{2} \)
つまりA=B=C=60°のとき。
以上より最大値は\( \frac{3\sqrt{3}}{8} \)

(解2)

数IIIの微分を使う。
\( f(C) = \frac{1}{2}\sin{C}\cos{C} + \frac{1}{2}\sin{C} \)とする。
\( f’(C ) = \frac{1}{2}\cos^2{C} - \frac{1}{2}\sin^2{C} + \frac{1}{2}\cos{C} \\ \cos^2{C} +\frac{1}{2}\cos{C} - \frac{1}{2} \\ = (\cos{C} +1) (\cos{C} - \frac{1}{2} ) \)
f'(C)=0 ⇒ C=60°,180°で増減表は下の通り

\begin{array}{c|ccccc} C & 0° & \cdots & 60° & \cdots & 180° \\ \hline f’(C) &  & + & 0 & - & 0 \\ \hline f(C) & 0 & \nearrow & \frac{3\sqrt{3}}{8} & \searrow &  \end{array}

よってθ=60°のとき最大値は\( \frac{3\sqrt{3}}{8} \)
等号成立はcos(A-B)=1かつC=60°
つまりA=B=C=60°のとき。
以上より最大値は\( \frac{3\sqrt{3}}{8} \)

(2) sinA+sinB+sinC

以降ではCを180°-A-Bで置き換えてA+B,A-Bの式で表すのではなくA+Bを180°-Cに置き換え,cos(A-B)≦1(等号成立はA-B=0のとき)を使ってA,Bを消去する方針で統一します。

\( \sin{A}+\sin{B}+\sin{C} \\ = 2\sin{\frac{A+B}{2}}\cos{\frac{A-B}{2} } +\sin{C} \\ = 2\sin{\frac{180°-C}{2}} \cos{\frac{A-B}{2}} +\sin{C} \\ = 2\cos{\frac{C}{2}}\cos{\frac{A-B}{2}} + \sin{C} \\ \leq 2\cos{\frac{C}{2}}+\sin{C} \)
(最後の不等式は\(0 \leq \frac{C}{2} \leq \frac{\pi}{2} \)より\(\cos{\frac{C}{2}} \geq 0 \)かつ\( \cos{\frac{A-B}{2}} \leq 1 \)が成り立つので成立。)

以降は(1)と同じ。
\( 2\cos{\frac{C}{2}}+\sin{C} \\ = 2\cos{\frac{C}{2}}(1+\sin{\frac{C}{2}}) \)
2乗すると
\( 4(1-\sin^2{\frac{C}{2}})(1+\sin{\frac{C}{2}})^2 \)
\( t=\sin{\frac{C}{2}} \)とすると
\( 4(1-t^2)(1+t)^2 \)=4×「(1)のf(t)」
ここからは(1)と全く同じで\(t=\frac{1}{2} \)のとき最大値\(4 \times \frac{27}{16}=\frac{27}{4} \)
つまり
\( 2\cos{\frac{C}{2}}+\sin{C} \leq \frac{3\sqrt{3}}{2} \)
等号成立は\( \cos{(A-B)}=1 \)かつ\( t= \sin{\frac{C}{2}}=\frac{1}{2} \),つまりA=B=C=60°のとき

(2) 別解(発展) 凸不等式を使う
f(x)=sinxは0<x<πで上に凸なので図より
\(\displaystyle \frac{\sin{A}+\sin{B}+\sin{C}}{3} \leq \sin{\left( \frac{A+B+C}{3} \right)} = \sin{\frac{\pi}{3}}=\frac{\sqrt{3}}{2} \)

凸不等式
A=B=C=60°のとき等号が成立するので
\(\sin{A}+\sin{B}+\sin{C} \)の最大値は\( \frac{3 \sqrt{3} }{2} \)
さらに相加相乗平均の関係を使って(1)も示せます。
sinA≧0,sinB≧0,sinC≧0なので
\(\displaystyle \frac{\sqrt{3}}{2} \geq \frac{\sin{A}+\sin{B}+\sin{C}}{3} \geq \sqrt[3]{\sin{A}\sin{B}\sin{C} }\)
つまり\(\sin{A}\sin{B}\sin{C}\leq \frac{3\sqrt{3}}{8} \)
A=B=C=60°のとき等号成立

ところで半径1の円に内接する三角形ABCの周の長さの最大を求めよ。という問題の場合,正弦定理からAB=2sinC,BC=2sinA,CA=2sinBとなるので周の長さは2(sinA+sinB+sinC)となります。つまりsinA+sinB+sinCの最大を求めることができれば周の長さの最大も求められることに注意しましょう。
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(3) cosAcosBcosC

\( \cos{A}\cos{B} \cos{C} \\ = \frac{1}{2} \{ \cos{(A+B)} + \cos{(A-B)} \} \cos{C} \\ = \frac{1}{2}\{ \cos{(180°-C)}+\cos{(A-B)} \} \cos{C} \\ = -\frac{1}{2}\cos^2{C} + \frac{1}{2} \cos{(A-B)} \cos{C} \)

ここでcos(A-B)≦1を利用して\( \leq -\frac{1}{2}\cos^2{C} + \frac{1}{2}\cos{C} \)にしたいのですがそのためにはcosCが0以上でないといけません。しかし一般の三角形の場合cosCは必ずしも0以上とは限りません。そこでcosC≦0の場合を先に潰しておきます。

直角または鈍角三角形のときcosAcosBcosC≦0
鋭角三角形のときcosAcosBcosC>0だから最大値を求める時は鋭角三角形のときだけ考えればよい。このときcosC>0,cos(A-B)≦1だから
cosAcosBcosC
\( \leq -\frac{1}{2}\cos^2{C} + \frac{1}{2}\cos{C} \\ = -\frac{1}{2} ( \cos{C} -\frac{1}{2})^2 + \frac{1}{8} \leq \frac{1}{8} \)
(∵0≦C≦180°なので-1≦cosC≦1)
等号成立はcos(A-B)=1かつ\(\cos{C}=\frac{1}{2} \)のとき。つまりA=B=C=60°のとき。
最大値は\( \frac{1}{8} \)

(4) cosA+cosB+cosC

最大値について

\( \cos{A}+\cos{B}+\cos{C}\\ =2\cos{\frac{A+B}{2}} \cos{\frac{A-B}{2}} +\cos{C} \\ = 2\cos{\frac{180°-C}{2}} \cos{\frac{A-B}{2}} + \cos{C} \\ = 2\sin{\frac{C}{2}}\cos{\frac{A-B}{2}} + \cos{C} \\ \leq 2\sin{\frac{C}{2}} + \cos{C} \)
(∵\(\sin{\frac{C}{2}} \geq 0 , \cos{\frac{A-B}{2}} \leq 1\))
\( 2\sin{\frac{C}{2}} + \cos{C} \\ = 2\sin{\frac{C}{2}} +1-2\sin^2{\frac{C}{2}} \\ = -2(\sin{\frac{C}{2}} - \frac{1}{2})^2 + \frac{3}{2} \leq \frac{3}{2} \)
(∵\( 0\leq \sin{\frac{C}{2}} \leq 1 \))
等号成立は\( \cos{\frac{A-B}{2}}=1 \)かつ\( \sin{\frac{C}{2}} = \frac{1}{2} \)のとき,つまりA=B=C=60°のとき。
最大値は\( \frac{3}{2} \)

最小値について

次の「和積の公式」を2回使っています(2回目は加法定理から計算してもそれほど遠回りではありませんが...)

和積の公式

\(\cos{A}+\cos{B}=2\cos{\frac{A+B}{2}}\cos{\frac{A-B}{2}} \)
\(\cos{X}-\cos{Y}=-2\sin{\frac{X+Y}{2}}\sin{\frac{X-Y}{2}} \)

\(\cos{C}=\cos{(\pi - A-B)}=-\cos{(A+B)} \\ =1-2\cos^2{\frac{A+B}{2}} \)
に注意する。

\( \cos{A}+\cos{B}+\cos{C} \\ = 2\cos{\frac{A+B}{2}}\cos{\frac{A-B}{2}} + \cos{C} \\ = 2\cos{\frac{A+B}{2}}\cos{\frac{A-B}{2}} +1-2\cos^2{\frac{A+B}{2}} \\ = 2\cos{\frac{A+B}{2}} \{ \cos{\frac{A-B}{2}} - \cos{\frac{A+B}{2}} \} +1 \\ = 2\cos{\frac{A+B}{2}} \{ -2\sin{\frac{A}{2}} \sin{(-\frac{B}{2})} \} +1 \\ = 4\sin{\frac{A}{2}}\sin{\frac{B}{2}} \cos{\frac{180°-C}{2}}+1 \\ = 4\sin{\frac{A}{2}}\sin{\frac{B}{2}} \sin{\frac{C}{2}}+1\geq 1 \)
等号成立はA,B,Cの少なくとも1つが0°のとき。
よって最小値は1

このように問題はシンプルでもかなり難しいです。もともとが3変数であり,三角形の内角の和が180°であることから1変数消去したとしてもまだ2変数残るのでそれをどう処理するかが重要です。基本は「どうせ正三角形のときが求める時だろう」と予想して正三角形になるのはどういうときか(A-B=0のとき。cos(A-B)が最大のときなど)をうまく活かせる形にすることです。

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