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上野竜生です。tanの性質と三角形の性質をあわせると有名な性質が得られます。これを一度見ておきましょう。

例題1

三角形ABCがある。次の問に答えよ。
(1)tanA+tanB+tanC=tanAtanBtanCを示せ。ただし三角形ABCは直角三角形ではないとする。
(2)*[発展] 三角形ABCが鋭角三角形であるときtanA+tanB+tanCの最小値を求めよ。
答え(1)A,B,Cは三角形の内角なので和は180°。つまりC=180°-A-B
\( \tan{C}=\tan{(180°-A-B)}=-\tan{(A+B)} \)である。
(左辺)=\(\tan{A}+\tan{B}-\tan{(A+B)} \)
\( \displaystyle \tan{A}+\tan{B}-\frac{\tan{A}+\tan{B}}{1-\tan{A}\tan{B}}=-\frac{\tan{A}\tan{B}(\tan{A}+\tan{B})}{1-\tan{A}\tan{B}} \)
(右辺)=\(\tan{A}\tan{B}\tan{(180°-A-B)} \)
\( \displaystyle =-\frac{\tan{A}\tan{B}(\tan{A}+\tan{B})}{1-\tan{A}\tan{B}} \)
となるので(左辺)=(右辺)
(2)tanA+tanB+tanC=Xとおく。
tanA>0,tanB>0,tanC>0なので相加相乗平均の関係から
\(\displaystyle \frac{\tan{A}+\tan{B}+\tan{C}}{3} \geq \sqrt[3]{\tan{A}\tan{B}\tan{C}} \)
(1)よりX=tanAtanBtanCでもあるから
\(\displaystyle \frac{X}{3} \geq \sqrt[3]{X} \)
X>0より両辺3乗して
\(\displaystyle \frac{X^3}{27} \geq X \)
∴\( X^3-27X=X(X-3\sqrt{3})(X+3\sqrt{3})\geq 0 \)
X>0なので\(X\geq 3\sqrt{3} \)
等号成立はtanA=tanB=tanCつまりA=B=C=60°のとき。
よって最小値は\( 3\sqrt{3} \)
直角三角形のときはtan90°が定義できないですが90°よりちょっと小さいほぼ直角二等辺三角形(たとえば46°,46°,88°のイメージ)だとXはいくらでも大きくなります。また,90°よりちょっと大きいほぼ直角二等辺三角形(たとえば44°,44°,92°のイメージ)だとXはいくらでも小さくなります。しかも1°,1°,178°のような三角形をイメージするとX<0の範囲では0にいくらでも近づけます。よって鋭角とは限らない三角形においてXの取り得る範囲は
\( X<0 , X\geq 3\sqrt{3} \)・・・(*)
となります。厳密に示したければA=θ,B=θ,C=180°-2θの二等辺三角形の場合だけでも(*)の範囲が示せるのでそれを示したあと,今回の問題のやり方でそれ以外は取れないことを示せば完璧です。
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例題2

三角形ABCの角について以下を示せ
(1)\(\displaystyle \tan{\frac{A}{2}}\tan{\frac{B}{2}}+\tan{\frac{B}{2}}\tan{\frac{C}{2}}+\tan{\frac{C}{2}}\tan{\frac{A}{2}}=1 \)を示せ。
(2)tanAtanB=1ならば三角形ABCは直角三角形であることを示せ。
答え(1)C=180°-A-Bより
\(\displaystyle \tan{\frac{C}{2}}=\tan{(90°-\frac{A+B}{2})} = \frac{1}{\tan{\frac{A+B}{2}}} \)
よって左辺=
\(\displaystyle \tan{\frac{A}{2}}\tan{\frac{B}{2}}+(\tan{\frac{A}{2}}+\tan{\frac{B}{2}})\frac{1}{\tan{\frac{A+B}{2}}} \\ = \displaystyle \tan{\frac{A}{2}}\tan{\frac{B}{2}}+(\tan{\frac{A}{2}}+\tan{\frac{B}{2}}) \frac{1}{\frac{\tan{\frac{A}{2}}+\tan{\frac{B}{2}}}{1-\tan{\frac{A}{2}} \tan{\frac{B}{2}}}} \\ = \displaystyle \tan{\frac{A}{2}}\tan{\frac{B}{2}}+(1-\tan{\frac{A}{2}}\tan{\frac{B}{2}})=1 \)
(2)\(\tan{A}\tan{B}=1\)なので
\(\displaystyle \frac{\sin{A}}{\cos{A}} \frac{\sin{B}}{\cos{B}}=1 \)
\( \sin{A}\sin{B}=\cos{A}\cos{B} \)
\( \cos{A}\cos{B}-\sin{A}\sin{B}=\cos{(A+B)}=0 \)
0<A+B<180°よりA+B=90°
よってC=90°となるから三角形ABCは直角三角形。別解
tanA<0かつtanB<0ならA>90°かつB>90°なのでA+B>180°となり,不適。よってtanA>0かつtanB>0であり,0°<A<90°かつ0°<B<90°である。
tanB≠0なので\(\displaystyle \tan{A}=\frac{1}{\tan{B}}=\tan{(90°-B)} \)
A=90°-B
∴A+B=90°。C=90°となるから三角形ABCは直角三角形。

 

例題3 tanが3つとも整数

三角形ABCにおいてtanA,tanB,tanCがすべて整数のとき,その3つの整数を求めよ。
答えA≧B≧Cとしても一般性を失わない
C+C+C≦A+B+C=180°より0°<C≦60°
0°<x≦60°でtanxは単調増加だから0<tanC≦tan60°=\(\sqrt{3} \)
tanCは整数だからtanC=1
よってC=45°であり,A+B=135°
\( \tan{(A+B)}= \frac{\tan{A}+\tan{B}}{1-\tan{A}\tan{B}}=-1 \)
∴\( \tan{A}+\tan{B}=\tan{A}\tan{B}-1 \)
\( \tan{A}\tan{B}-\tan{A}-\tan{B}+1=2 \)
∴\( (\tan{A}-1)(\tan{B}-1)=2 \)
C=45°でB≧C=45°だからA<90°(直角三角形のときはtanAが定義できないので不適)
よって三角形ABCは鋭角三角形であり,この範囲ではtanは単調増加だから
A≧B≧CならばtanA-1≧tanB-1≧tanC-1=0である。
よってtanA-1=2,tanB-1=1しかない。
∴tanA=3,tanB=2,tanC=1となる。
A≧B≧C以外の場合も含めても同様なので求める3つの整数は1,2,3。

別解1 例題1の関係を示した後普通の整数問題にもちこむ。

答えtanA+tanB+tanC=tanAtanBtanC
以下ではa=tanA,b=tanB,c=tanCとおき
a+b+c=abcを解く。
a≧b≧cとしても一般性を失わない
a+a+a≧a+b+c=abc
つまり3a≧abcが成り立つ。
a,b,cのうち少なくとも2つは正である(鋭角三角形なら3つとも正。鈍角三角形なら2つ正)なのでa≧b≧cとすればa>0。
よって両辺をa(>0)で割るとbc≦3
∴(b,c)=(3,1),(2,1),(1,1)
それぞれについてaを求めると
b=3,c=1のときa+4=3a ∴a=2はa≧b≧cを満たさない。
b=2,c=1のときa+3=2a ∴a=3
b=1,c=1のときa+2=a ∴不適
よってa=3,b=2,c=1
a≧b≧c以外も同様なので求める3つの整数は1,2,3。

別解2 tanが整数になるのはかなり絞られることを考える。

答えtanXが整数となる場合を考える。
三角形の成立条件よりtanX≠0
もし,tanX≧1ならば45°≦X<90°
もし,tanX≦-1ならば90°<X≦135°である。
鈍角三角形ならたとえばA>90°とするとB+C<90°
しかしtanB,tanCはともに整数だから少なくともそれぞれ45°以上となりB+C<90°にならない。∴△ABCは鋭角三角形
tan60°<2なのでtanX≧2ならば60°<X<90°
よってtanA≧2かつtanB≧2かつtanC≧2ならばA+B+C>180°となるので不適。
tanA,tanB,tanCのうち少なくとも1つは1である。
tanC=1としても一般性を失わない。C=45°
このときtanA≧2かつtanB≧2である(∵tanA,tanBの両方が1ならばA+B+C=135°で不適。片方が1なら直角二等辺三角形となるが条件を満たさない)
A>60°,B>60°,C=45°であり,A+B+C=180°だから
60°<A<75°,60°<B<75°でなければならない。
tan67.5°=\( 1+\sqrt{2} <3 \)なのでtanX≧3ならばX>67.5°である。
よってtanA,tanBの両方が3以上になることはない。つまり片方は2である。
tanB=2としても良い。
tanA=tan(180°-45°-B)=tan(135°-B)
\(\displaystyle = \frac{\tan{135°}-\tan{B}}{1+\tan{135°}\tan{B}}=\frac{-3}{1-2}=3 \)
よって3つの整数は1,2,3。

最後の問題は有名問題なので余力がある人は解法をある程度覚えてもいいぐらいです。

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