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上野竜生です。一般的に図形の通過領域はすでに扱いました。今回はその中でも特に線分の通過領域を扱います。少しだけ考えることが増えて厄介になります。まずパラメータの取り得る範囲が決められていた場合は解の配置問題に帰着した後の処理が厄介ですし,さらに直線ではなく「線分」という制限も考える必要があります。直感的に正解にたどり着く方法と厳密に記述する方法を紹介するので志望大学の望んでいる方を選んで解きましょう。

あわせてよみたい

例題[阪大2022]

正の実数tに対し,座標平面上の2点P(0,t)と\( Q( \frac{1}{t} ,0 ) \)を考える。tが1≦t≦2の範囲を動くとき,座標平面内で線分PQが通過する部分を図示せよ。

少し変えた例題’を解いてみましょう。

線分の通過領域の例題

【例題’】
正の実数tに対し,座標平面上の2点P(0,t)と\( Q( \frac{1}{t} ,0 ) \)を考える。tが1≦t≦2の範囲を動くとき,座標平面内で直線PQが通過する部分を図示せよ。

線分PQから直線PQに変えただけです。これなら図形の通過領域のところで解法を扱っています。まずはそれで解いてみます。

答えPQを通る直線の式は\( t^2x + y=t \)である。
\( f(t)=xt^2 - t + y \)とおく。
f(t)=0が1≦t≦2の範囲で解をもつような(x,y)の範囲を考える。
x=0のときは1次方程式なのでt=y。つまり1≦y≦2のとき条件を満たす。
①f(1)f(2)=0のとき
f(1)=0,つまりx-1+y=0のときt=1を解に持つ
f(2)=0,つまり4x-2+y=0のときt=2を解に持つので適。
②f(1)f(2)<0のとき,つまり(x-1+y)(4x-2+y)<0のときは1<t<2で解をもつので適。
③f(1)f(2)>0のとき
x>0のときはf(1)>0かつf(2)>0かつ1<軸<2かつ判別式≧0
つまり,x-1+y>0かつ4x-2+y>0かつ\( 1<\frac{1}{2x}<2 \)かつ\( 1-4xy\geq 0 \)
x>0とあわせると
\(\frac{1}{4} < x < \frac{1}{2} \)かつx-1+y>0かつ4x-2+y>0かつ\( 1-4xy\geq 0 \)
x<0のときはf(1)<0かつf(2)<0かつ1<軸<2かつ判別式≧0
x-1+y<0かつ4x-2+y<0かつ\( 1<\frac{1}{2x}<2 \)かつ\( 1-4xy\geq 0 \)
しかし,このときは軸の条件がx<0を満たさないので不適。
以上を図示すると下の斜線部分。
線分の通過領域
ただし境界はすべて含む。

解法としては答えをあわせることを重視するならこの解法のあと,

PQは線分だからx≧0,y≧0。
これとあわせて求める領域は下の斜線部分。ただし境界はすべて含む。

線分の通過領域。最終結果

としてもある程度は許されるかとは思います(最終結果は完全に正解と一致。本当にその範囲全部を動くかの説明がやや厳密性に欠けるため満点もらえるかは微妙?)が,より厳密な議論をする方法があるので紹介します。これなら厳密なので満点をもらえるでしょう。

別解 こちらのほうが厳密

答え線分PQを表す方程式は\( t^2x + y=t \) (\( 0 \leq x \leq \frac{1}{t} \)・・・①)である。
これが1≦t≦2・・・②で解を持つ条件を考える。
x=0のときはy=tとなるのでこれが②を満たすのは1≦y≦2のとき。
以下ではx≠0とする。(つまりx>0とする)
まず,①と②を整理する。①より\( t \leq \frac{1}{x} \)となるので「①かつ②」を整理すると
\( 0<x < \frac{1}{2} \)のとき,1≦t≦2
\( \frac{1}{2}\leq x \leq 1 \)のとき,1≦t≦\( \frac{1}{x} \)
これ以外のxでは①②の共通部分はない。
PQの式をyについて解くと\( y=-t^2 x+t= -x(t-\frac{1}{2x})^2 + \frac{1}{4x} \)
よってtの関数\( y= -X(t-\frac{1}{2X})^2 + \frac{1}{4X} \)と直線y=Yが1≦t≦2で共有点をもつような(X,Y)の領域を求めればよい。
\( g(t)=-t^2 X +t \)とおく。
(i) 軸のx座標\( \frac{1}{2X} >2 \),つまり\( 0 < X < \frac{1}{4} \)のときは,1≦t≦2でYの取り得る範囲は
g(1)≦Y≦g(2) ,つまり-X+1≦Y≦-4X+2
(ii)のとき
(ii) 軸のx座標\( \frac{3}{2} \leq \frac{1}{2X} \leq 2 \),つまり\( \frac{1}{4} \leq X \leq \frac{1}{3} \)のときは,1≦t≦2でYの取り得る範囲は
\(g(1)\leq Y\leq g(\frac{1}{2X}) \) ,つまり\( -X+1 \leq Y \leq \frac{1}{4X}\)
(iii) 軸のx座標\( 1<\frac{1}{2X} <\frac{3}{2} \),つまり\( \frac{1}{3} < X < \frac{1}{2} \)のときは,1≦t≦2でYの取り得る範囲は
\(g(2)\leq Y\leq g(\frac{1}{2X}) \) ,つまり\( -4X+2 \leq Y \leq \frac{1}{4X}\)
(iv) 軸のx座標\( \frac{1}{2X} \leq 1 \),つまり\( X \geq \frac{1}{2} \)のとき
最初に整理した範囲より\( \frac{1}{2}\leq X \leq 1\)のときだけ考えればよく,このとき\( 1\leq t \leq \frac{1}{X} \)でYの取り得る範囲は
\( g(\frac{1}{X})\leq Y\leq g(1) \) ,つまり0≦Y≦-X+1これを図で表すと下の通り。ただし境界を含む。
線分の通過領域

このように「tが動くときの通過領域」は「tが与えられた範囲で解をもつ条件」に帰着されますが,「線分であることの制限」をどう処理するかは直感的な解法と厳密な解法があります。余裕があれば厳密に述べたいところですが,直感的でもまずは正解にたどり着くことが大事でしょう。

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