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上野竜生です。今回は3次方程式の解の公式の考え方を理解しましょう。一般の場合で処理するのはきわめて大変なので比較的簡単な具体例で理解するようにします。
導出方法や本質部分はこれで十分理解できると思います。

一般の3次方程式を解くことはx3+cx+d=0を解くことと同じ

まず一般の3次方程式とは
\( ax^3+bx^2+cx+d=0 \)
のことです。「3次」方程式なのでa≠0と仮定します。
このとき両辺をaで割れば
\( x^3+b’x^2+c’x+d’=0 \)
の形になります。
つまり,a=1の場合の解の公式さえわかればOKということがわかります。

以下ではb,c,dに’をつけるのが面倒なので新たに
\( f(x)=x^3+bx^2+cx+d=0 \)
とおいて考えます。これをx軸方向にp平行移動させてみる
\( f(x-p)=(x-p)^3 + b(x-p)^2 + c(x-p) + d \)
となります。特に\( x^2 \)の係数は\( -3p+b \)となることに注意します。
つまり,\( p=\frac{b}{3} \)とすると\( x^2 \)の係数が0になります。
よって
\( f(x-\frac{b}{3})=x^3+c’x + d’ \)
とかけるのでこの形の解の公式がわかればもとの解の公式もわかります。
(∵ x軸方向の平行移動なので\( f(x-\frac{b}{3})=x^3+cx’+d’ \)の解が\( \alpha,\beta,\gamma \)ならばもとの方程式f(x)の解は\( \alpha- \frac{b}{3} , \beta- \frac{b}{3} , \gamma- \frac{b}{3} \))

つまり,a≠1やb≠0の場合について考えるのは,解の公式の本質ではない部分で複雑になってしまうということなので,本質をわかりやすくするためにa=1かつb=0の場合だけを考えることにします。

ここまできたら\( x^3+cx+d=0 \)の解の公式は2変数c,dしかないので簡単に覚えられそうと思うかもしれませんが,ここからでもかなり複雑です。比較的単純な具体例で見てみましょう。

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例題1

(1)\( x^3-x-6=0 \)を(因数分解するやり方で)解け。
(2)\( x^3+y^3+z^3-3xyz \\ =(x+y+z)(x^2+y^2+z^2-xy-yz-zx) \\ = (x+y+z)(x+\omega y + \omega^2 z)(x+ \omega^2 y + \omega z) \)
を利用して次を導け。ただしωは1の3乗根のうち,1でないもののうちの1つとする。
\( x^3 -3ab x - (a^3+b^3)=(x-a-b)(x-a \omega - b\omega^2 )(x-a\omega^2 - b \omega ) \)
(3)(2)で導いた関係を利用して\( x^3-x-6=0 \)を解け。
答え(1)\( x^3-x-6=(x-2)(x^2+2x+3)=0 \)
よって\( x=2 , -1 \pm \sqrt{2} i \)
(2)利用して良い式のyに-aを,zに-bを代入して整理すると明らか

【利用して良いと書いた式の部分について】
最初の因数分解は数Iの因数分解のラスボスとして紹介済み。

2つ目の部分は\( x^2+y^2+z^2-xy-yz-zx = x^2 - (y+z)x + (y^2-yz+z^2) \)を解の公式を用いて解いた後,複素数の範囲で因数分解すれば導出できる。
数Iでラスボスとして紹介した因数分解が3次方程式を解くときのキーになります。

(3)(2)で導いた関係と比較すると
\(\displaystyle ab=\frac{1}{3} , a^3+b^3=6 \)
つまり\(\displaystyle a^3 b^3=\frac{1}{27} \)となるので
\( a^3 , b^3 \)は2次方程式
\( t^2- 6t + \frac{1}{27}=0 \)の解である。
よって\( \displaystyle t=3 \pm \sqrt{\frac{242}{27}} = 3 \pm \frac{11}{9}\sqrt{6} \)
以上より求める解は
\(\displaystyle x=\sqrt[3]{ 3+ \frac{11}{9}\sqrt{6} } + \sqrt[3]{ 3- \frac{11}{9}\sqrt{6} } , \\ ~ \displaystyle  \sqrt[3]{ 3+ \frac{11}{9}\sqrt{6} }\omega + \sqrt[3]{ 3- \frac{11}{9}\sqrt{6} }\omega^2 , \\ \displaystyle ~ \sqrt[3]{ 3+ \frac{11}{9}\sqrt{6} }\omega^2 + \sqrt[3]{ 3- \frac{11}{9}\sqrt{6} }\omega \)

あれ?(1)で出した答えと違うのでは?と思った人もいると思います。実際,解の公式で出した答えと因数分解で求めた答えが一致するかどうかを確かめる部分が試験にでることもあります。

例題2

\(\displaystyle \sqrt[3]{ 3+ \frac{11}{9}\sqrt{6} } + \sqrt[3]{ 3- \frac{11}{9}\sqrt{6} }\)
を計算して簡単な値にせよ。

例題1から解いた人なら(1)と(3)より等しい,などとも言えますがいきなり例題2からだと,どの3次方程式に解の公式を適用したのかが不明なので3次方程式を導出しないといけません。

答え\(\displaystyle a=\sqrt[3]{ 3+ \frac{11}{9}\sqrt{6} } , b= \sqrt[3]{ 3- \frac{11}{9}\sqrt{6} }\)とおくと,求めるものはa+bである。x=a+bとおく。
\(\displaystyle a^3=3+ \frac{11}{9}\sqrt{6} , ~ ~ b^3 = 3- \frac{11}{9}\sqrt{6} \)なので
\( a^3+b^3=6 \)。また,
\(\displaystyle ab=\sqrt[3]{ (3+ \frac{11}{9}\sqrt{6})(3- \frac{11}{9}\sqrt{6}) } \\ \displaystyle = \sqrt[3]{9-\frac{121 \cdot 6}{81}} = \sqrt[3]{\frac{1}{27}}= \frac{1}{3} \)
よって
\( a^3 + b^3 = (a+b)^3 - 3ab(a+b) \)
\( 6=x^3 - x \)
\( x^3-x-6=(x-2)(x^2+2x+3) =0 \)
\( x=2 , -1\pm \sqrt{2}i \)
a,bは実数だからxも実数。よってx=a+b=2
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いちいちラスボスの因数分解なんて考えるのが面倒だぜ!って人向け

要はここまでの結果を見ると3次方程式の解の公式から出てくる解は
\(\displaystyle x= \sqrt[3]{ (\cdots) } + \sqrt[3]{ (\cdots) } \)
の形になるようである。ということでx=u+vとおいて整理するといいことがあるかも!?という考えになる。

\( x^3-x-6=0 \)を解く。x=u+vとかけるとする。
\( (u+v)^3 - (u+v) - 6= (u^3+v^3-6)+(3uv-1)(u+v) =0 \)
つまり\( u^3+v^3-6=0 , 3uv-1=0 \)
を満たせば十分。(以下模範解答と同じ)

初見では考えられない発想ですが意外と難しくないですね。

最後に解の公式を紹介します。
\( ax^3+bx^2+cx+d=0 \)の解の公式は不必要に長いので,\( x^3+cx+d=0 \)の解の公式を書くと
\(\displaystyle \alpha, \beta= \sqrt[3]{-\frac{d}{2}\pm \sqrt{(\frac{d}{2})^2+(\frac{c}{3})^3}} \)
とおいて(±のところはプラスのほうをα,マイナスのほうをβ)
\( x=\alpha+\beta , \alpha \omega +\beta \omega^2 , \alpha \omega^2 +\beta \omega \)
となります。(ωは1の3乗根のうち1でないもの)。全く覚える必要はありません。

 

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