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上野竜生です。問146の答えを発表します。

問146

ε(イプシロン)は0より大きく0.01以下の実数とする。
また,\( a_n=n \cdot 2^{-n} \)とする。
(1)ε=0.01のとき,\( |a_n|<\epsilon \)を満たす最小の自然数nを求めよ。
(2)n≧6のとき\( n < 2^{\frac{n}{2}} \)が成り立つことを示せ。
(3)0<ε<0.01のとき,\( |a_n|<\epsilon \)を満たす自然数nを求めよ。

【(3)の注】
・「最小の」自然数である必要はない。
・最終結果にεを用いてよい。
・最終結果にガウス記号[ ]を用いてよい。(実数xの整数部分,つまり,xを超えない最大の整数を[x]と表し,この[ ]のことをガウス記号という。)

 

答え

(1)
n≦6のとき
\(\displaystyle a_n = \frac{n}{2^n} \geq \frac{1}{2^6}=\frac{1}{64} > \frac{1}{100} \)
7≦n≦9のとき
\(\displaystyle a_n = \frac{n}{2^n} \geq \frac{7}{2^9}=\frac{7}{512} > \frac{1}{100} \)
n=10のとき
\(\displaystyle a_{10}=\frac{10}{1024} < \frac{1}{100} \)
だから最小の自然数はn=10

(2)
数学的帰納法で示す
n=6のとき6<8より成立。
n=kで成立すると仮定する。n=k+1のとき
(右辺)
\( = 2^{\frac{k+1}{2}} \\ = \sqrt{2} \cdot 2^{\frac{k}{2}} > \sqrt{2}k\cdots ① > k+1\cdots ② \)
=(左辺)よりn=k+1のときも成立
(①は帰納法の仮定。②はk>5なので両辺を\(\sqrt{2}-1 \)倍して
\( \sqrt{2}k -k >5\sqrt{2}-5>1\)を移項すると得られる。)

(3)数列の定義より明らかに\( 0<a_n \)なので絶対値は無視してよい。
ε<0.01なので少なくともn≧10であるから(2)の式は使える。(2)の式を使うと
\(\displaystyle a_n < \frac{2^{\frac{n}{2}}}{2^n} = 2^{-\frac{n}{2}} < \epsilon \)
最後の部分に2を底とする対数をとると
\(\displaystyle -\frac{n}{2} < \log_{2}{\epsilon} \)
\(\displaystyle n>-2\log_{2}{\epsilon} = \log_{2}{\frac{1}{\epsilon^2}} \)
よってこれを満たす自然数として
\(\displaystyle n= \left[ \log_{2}{\frac{1}{\epsilon^2}} \right] +1 \)
とすればよい。

【別解】指数の方を消す
(2)の関係が使えるところまではおなじ。(2)の式は両辺正だから
\( n^2 < 2^n \)
が成り立つ。よって
\(\displaystyle a_n < \frac{n}{n^2}=\frac{1}{n} < \epsilon \)
これを満たす自然数として
\(\displaystyle n=\left[ \frac{1}{\epsilon} \right] +1 \)
とすればよい。

最小でなくてもいいので別解のほうがみやすいかもしれませんが,実際は本解のほうがどちらかというとギリギリに近いところを攻めています。

大学で習うε-N論法を理解すれば,この結果から
\(\displaystyle \lim_{n \to \infty} n \cdot 2^{-n} = 0 \)
であることを定義に基づいて証明したことになります。

任意のεに対しN(εの式で表してよい)が存在しn>Nとなるすべてのnで\( |a_n |<\epsilon \)となるからn→∞の極限は0になります。
(今回の(3)で求めた値をNとすればいいが,正確にはそれより大きいnがすべて\( |a_n |<\epsilon \)を満たすことを示す必要がある。でもそれは単調減少などから容易に示せるでしょう。)

このときNとしてεを用いた式で良いことと,条件を満たすギリギリのNを探す必要はない(別解のようなめちゃくちゃ不必要に大きなnでもよい)ことを知っておきましょう。

 

正解者:1名(古春 さま)

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