上野竜生です。今回はベクトルの関係式が与えられたとき三角形がどのような形状かを求めます。大体は角度が90°か同じ長さの辺になるかを求めます。
例題1
与えられた式よりAB=AC。よって二等辺三角形 じゃないの?
確かにB=Cのときは式は成り立ちます。でも三角形ABCが成立しているのでB≠Cになるはずです。長さについての等式ではなく内積の等式です。上の解答ではベクトルの内積の意味が理解できていません。正しくは次のようにやりましょう。
\( (\vec{AB}-\vec{AC})\cdot \vec{AC}=0 \)
\( \vec{CB} \cdot \vec{AC}=0 \)
よってCBとACは垂直だからC=90度の直角三角形
どうしてもわからなかったら特殊な場合で予想してから一般で証明!
この問題だとA(0,0),C(1,0),B(x,y)としてBの座標を求めます。するとx=1だけがえられるのでそれで答えの予想はつくでしょう。それがわかれば何を示せばいいのか見えるので一般に証明します。
例題2
左側の等式より、始点をAに統一すると
\( \vec{AB}\cdot \vec{AC} - |\vec{AB}|^2 = \vec{AB}\cdot \vec{AC}-|\vec{AC}|^2 \)
よって\( |\vec{AB}|^2=|\vec{AC}|^2 \)となるからAB=AC
対称性より同様に右側の等式について始点をBに統一するとBC=BA
よって三角形ABCは正三角形である。
解2 例題1のように考えて平面図形に帰着
左側の等式より
\( (\vec{AB}-\vec{CA})\cdot \vec{BC}=0 \)
ここで\( \vec{AB}-\vec{CA}=\vec{AB}+\vec{AC} \)
BCの中点をMとおくと\( \vec{AB}+\vec{AC}=2\vec{AM} \)
よって\(\vec{AM}\cdot \vec{BC}=0 \)
となるからAM⊥BC・・・①
三角形ABMと三角形ACMにおいて
共通だからAM=AM
MはBCの中点だからBM=MC
①より∠AMB=∠AMC=90°
2辺とその間の角がそれぞれ等しいから△ABM≡△ACM
よってAB=AC
右側の等式でも同様にすると対称性からBC=BA
よって三角形ABCは正三角形である。
もし左側の等式しかなかったとしたら答えはAB=ACの二等辺三角形となりますね。
例題3
(1)\( |\vec{OA}+\vec{OB}+\vec{OC}|=0\)となるための必要十分条件は三角形ABCが正三角形であることである。
(2)\(|\vec{OA}+\vec{OB}+\vec{OC}|=1\)となるための必要十分条件は三角形ABCが直角三角形であることである。
⇐: 三角形ABCが正三角形ならば∠AOB=∠BOC=∠COA=120°
(∵Oは外心。∠BAC=60°で円周角の定理から∠BOC=120°。以下も同様)
となる。
よって\( |\vec{OA}+\vec{OB}+\vec{OC}|=0 \)
⇒: \( |\vec{OA}+\vec{OB}+\vec{OC}|=0\)ならば\( \vec{OA}+\vec{OB}+\vec{OC}=\vec{0}\)であり,\( \vec{OC}=-\vec{OA}-\vec{OB}\)
両辺の大きさを取ると\( |\vec{OC}|^2=|\vec{OA}|^2+2\vec{OA}\cdot \vec{OB} +|\vec{OB}|^2 \)
\(|\vec{OA}|=|\vec{OB}|=|\vec{OC}|=1\)より\(\vec{OA}\cdot \vec{OB}=-\frac{1}{2} \)
よって∠AOB=120°
同様に∠BOC=∠COA=120°となるので∠ABC=∠BCA=∠CAB=60°となり正三角形。
(2) \( |\vec{OA}+\vec{OB}+\vec{OC}|=1\)⇔△ABCは直角三角形 を示す。
⇐: ∠A=90°とすると円周角の定理より∠BOC=180°
\(|\vec{OB}|=|\vec{OC}|\)だから\(\vec{OB}=-\vec{OC} \)
\( |\vec{OA}+\vec{OB}+\vec{OC}|=|\vec{OA}|=1\)。
∠B=90°,∠C=90°のときも同様。
⇒: \( |\vec{OA}+\vec{OB}+\vec{OC}|=1\)ならば\( |\vec{OA}+\vec{OB}+\vec{OC}|^2=1\)
整理すると
\(-1=-|\vec{OA}|^2=-\vec{OA}\cdot \vec{OA}\)より
\( (\vec{OA}+\vec{OC})\cdot \vec{OB} + (\vec{OC}+\vec{OA}) \cdot \vec{OA}=0 \)
\( (\vec{OA}+\vec{OC}) \cdot (\vec{OA}+\vec{OB})=0 \)
よって可能性は3通り。
①\(\vec{OA}+\vec{OC}=\vec{0} \)
②\(\vec{OA}+\vec{OB}=\vec{0} \)
③\((\vec{OA}+\vec{OC}) \)と\((\vec{OA}+\vec{OB}) \)が垂直に交わる。
①のとき\(\vec{OC}=-\vec{OA} \)だからAOCは同一直線上にあり、ACは直径。よって直径に対する円周角は90°だから∠B=90°の直角三角形。
②のときも同様にすると∠C=90°の直角三角形。
③のときABの中点をP,ACの中点をQとすると外心の性質より∠APO=∠AQO=90°
③の性質より∠POQ=90°。よって四角形APOQの残りの角である∠PAQ=90°となり∠A=90°の直角三角形。
よっていずれの場合も直角三角形であるから成立。
最後はかなり難問で,実際に入試でも出ています。ここまでできるようになれば大学受験突破レベルです。
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