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上野竜生です。不等式の証明の基本は(左辺)-(右辺)を計算するか,両辺が正であるとわかっていれば(左辺)2-(右辺)2を計算することでした。しかし,実際の入試だとそれだけでは解ききれない不等式の難問もたくさんあります。今回は比較的有名な不等式で,少し一筋縄ではいかないものを集めました。

なお,相加相乗平均とコーシーシュワルツは別ページで紹介済みです。

例題1

a,b,cを正の実数とするとき
\( a^2 b + ab^2 + b^2c + bc^2 + c^2 a+ca^2 \geq 6abc \)を示せ。

なんか因数分解したくなるけどどうもうまくいかない感じです。でも不等式の証明の場合は必ずしも完全に因数分解する必要はないのです。そこがかえって選択肢を広くして難しくしています。

解法1 少しひらめきにくいけど式変形で処理する

(左辺)-(右辺)
\( a(b^2 - 2bc+c^2) + b(a^2-2ac+c^2) + c(a^2-2ab+b^2) \\ = a(b-c)^2+b(c-a)^2 + c(a-b)^2 \geq 0\)
等号成立はa=b=cのとき

答えを見てしまえば簡単ですが,問題だけをみてこの変形は少し訓練しないと難しいです。
というわけでもう少し簡単な別解も紹介します。別解はいろいろありますがとりあえず1つ紹介します。

解法2

a,b,cは正だから相加相乗平均の関係より
\( a^2 b + bc^2 \geq 2\sqrt{a^2 b \cdot bc^2 }=2abc \)
\( b^2 c + ca^2 \geq 2\sqrt{b^2 c \cdot ca^2 }=2abc \)
\( c^2 a + ab^2 \geq 2\sqrt{c^2 a \cdot ab^2 }=2abc \)
これらを足すと求める不等式を得る。
等号成立はa=bかつb=cかつc=a,つまりa=b=cのとき

実は3変数の相加相乗でも示せますし,6変数の相加相乗平均の関係を使えば一発です。

他にも示し方はたくさんあると思いますがこの問題はこの2種類ぐらい知っていれば十分です。

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例題2 チェビシェフの和の不等式の証明

(1)a≧b,x≧yのとき\(\displaystyle \frac{ax+by}{2} \geq \frac{a+b}{2} \cdot \frac{x+y}{2} \geq \frac{ay+bx}{2} \)
を証明せよ。
(2)a≧b≧c,x≧y≧zのとき\(\displaystyle \frac{ax+by+cz}{3} \geq \frac{a+b+c}{3} \cdot \frac{x+y+z}{3} \geq \frac{az+by+cx}{3} \)
を証明せよ。
答え(1)左側の不等式
4{(左辺)-(中辺)}
\(= ax+by-ay-bx \\ = a(x-y)-b(x-y) \\ = (a-b)(x-y) \geq 0 \)
右側の不等式は
4{(中辺)-(右辺)}
\( = ax-ay-bx+by \\ = (a-b)(x-y) \geq 0 \)
等号成立はa=bまたはx=yのとき
(2)左側の不等式
9{(左辺)-(中辺)}
\( = 3(ax+by+cz)-(ax+ay+az+bx+by+bz+cx+cy+cz) \\ = 2ax+2by+2cz -ay-az-bx-bz-cx-cy \\ = (ax+by-ay-bx)+(by+cz-bz-cy)+(cz+ax-cx-az) \\ = (a-b)(x-y)+(b-c)(y-z)+(c-a)(z-x) \geq 0 \)
右側の不等式は
x≧y≧zより-z≧-y≧-xが成り立つので左側の不等式のx,y,zをそれぞれ-z,-y,-xに置き換えてもよい。すると
\(\displaystyle \frac{-az-by-cx}{3} \geq \frac{a+b+c}{3} \cdot \frac{-x-y-z}{3} \)
となるから両辺(-1)倍すると右側の不等式も得る。
等号成立は
「a=bまたはx=y」かつ「b=cまたはy=z」かつ「c=aまたはz=x」のとき
つまりa=b=cまたはx=y=zのとき

最後の等号成立条件の整理について

3つとも前者・3つとも後者のときは明らかにそれぞれa=b=c,x=y=zが得られる。・・・①
それ以外の組み合わせとしては2つ前者1つ後者または1つ前者2つ後者のときである。2つ前者を選べばa=b=cが得られるし2つ後者を選べばx=y=zが得られる。
残った1つの条件からもう1つ絞り込めるが①のときは絞り込めないので結局無意味である。

この不等式はn変数でも成り立ちます。名前がついてるだけあって,ただ式変形すれば得られるという感じではありません。実際(2)の前半の式変形はなかなか思いつきにくいです。n変数の証明のアイデアは
(a-b)(x-y)≧0のように2つの差をとった積をひたすらあつめて足し算すると示したい式の両辺の差と等しくなるという感じです。
なお,この不等式を使ってさらに難しい不等式が示せたりもするので割と便利な不等式です。ですが教科書の範囲外なので通常はこれより奥に進むことはありません。(数学オリンピックレベル)

例題3 レムスの不等式

三角形の3辺の長さをa,b,cとするとき
abc≧(-a+b+c)(a-b+c)(a+b-c)
が成り立つことを示せ。
答えx=-a+b+c , y=a-b+c , z=a+b-c
とおくと三角形の成立条件よりx>0,y>0,z>0
\(\displaystyle a=\frac{y+z}{2} , b= \frac{z+x}{2} , c=\frac{x+y}{2} \)
よって(左辺)
\(\displaystyle = \frac{y+z}{2} \cdot \frac{z+x}{2} \cdot \frac{x+y}{2} \geq \sqrt{yz} \cdot \sqrt{zx} \cdot \sqrt{xy} =xyz \)
となり成立(∵x,y,z>0だから相加相乗平均の関係が使える)

「三角形の3辺の長さ」を文字で置いてるなら今回のような置き換えをすると三角形成立条件からx>0,y>0,z>0となり見通しがよくなる問題もあります。ただしどちらかというと数学オリンピックとかのレベルでたまに見るぐらいであって,大学受験の問題ではあまり見かけません。出たとしてもこのレムスの不等式ぐらいです。

ちなみにレムスの不等式の右辺はヘロンの公式っぽいと思った人もいるでしょう。もしそう思ったのならすごくいい発想をしています。実はヘロンの公式とレムスの不等式をあわせるとオイラーの不等式
(三角形の外接円の半径)≧2(三角形の内接円の半径)
が得られます。

今回は超難関大学で出てくるかなというような少しマニアックな不等式を集めてみました。高校範囲で示せるので大学入試に出る可能性は十分ありますが,どれもアイデアが難しいです。有名不等式なのでそのまま出題されることがあります。そのとき,一度見たことがあれば他の人と大きな差をつけることができます。

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