上野竜生です。行列のランクの計算方法や意味を紹介します。
動画
今回の内容は動画にもしてあります。
意味
AのランクはAに含まれる1次独立な行ベクトルの最大個数でありAに含まれる1次独立な列ベクトルの最大個数。
たとえば連立方程式
4x+3y=1
2x+5y=2
は2つの文字に対し2つの式なので解けますが
4x+3y=1
12x+9y=3
は2つの式があっても実質1個しか式がないのと一緒です。この”実質何個の式”かを表すのがランクと思ってもいいでしょう。
行列Aのランクの計算方法
以下の基本変形を行います。
2. ある行と他の行を入れ替える。
3. ある行に他の行のc倍を加える。(c≠0)
5. ある列と他の列を入れ替える。
6. ある列に他の列のc倍を加える。(c≠0)
これを繰り返す。具体的には行基本変形(1.~3.)だけを使い次のようにする。
1. まず左から1列目を整理する。
1-1. (1,1)成分が0でなくなるように行を入れ替える。最初から1列目の成分がすべて0の場合この操作はできないのでステップ2へすすむ。
1-2. 1行目をc倍して(1,1)成分を1にする。(c=(1,1)成分の逆数)
1-3. 2行目以下に1行目の定数倍を加えて1列目の成分を2行目以下すべて0にする。
2. これで1列目と1行目は整理できた。次に左から2列目を整理する。
2-1. (2,2)成分が0でなくなるように行を入れ替える。ただしすでに整理済みの1行目とは入れ替えない。
2-2. 2行目をc倍して(2,2)成分を1にする。
2-3. 3行目以下に2行目の定数倍を加えて2列目の成分を3行目以下すべて0にする。
3. これで2列目と2行目は整理できた。以下同様に1列ずつ順番に整理する。
するとどこかですべての成分が0になるときがくる。(来ないときもある。)そうなれば終了する。
この操作が終わった時点で上から何行目まで0以外の数字が書き込まれているかを見る。その行数がランクである。
(1)\( \begin{pmatrix} 2 & 6 \\ 4 & 5 \end{pmatrix}\)
(2)\(\begin{pmatrix} 0 & 3 \\ 1 & 5 \end{pmatrix}\)
(3)\(\begin{pmatrix} 3 & 5 \\ 9 & 15 \end{pmatrix} \)
\(\begin{pmatrix} 2 & 6 \\ 4 & 5 \end{pmatrix} \rightarrow \begin{pmatrix} 1 & 3 \\ 4 & 5 \end{pmatrix} \rightarrow \begin{pmatrix} 1 & 3 \\ 0 & -7 \end{pmatrix}\)
2列目について
\(\begin{pmatrix} 1 & 3 \\ 0 & -7 \end{pmatrix} \rightarrow \begin{pmatrix} 1 & 3 \\ 0 & 1 \end{pmatrix} \)これで基本変形は終了。2行目まで0以外の数字が書かれているのでランクは2(2) 行基本変形を繰り返す。1列目について\(\begin{pmatrix} 0 & 3 \\ 1 & 5 \end{pmatrix} \rightarrow \begin{pmatrix} 1 & 5 \\ 0 & 3 \end{pmatrix} \)2列目について
\(\begin{pmatrix} 1 & 5 \\ 0 & 3 \end{pmatrix} \rightarrow \begin{pmatrix} 1 & 5 \\ 0 & 1 \end{pmatrix} \)
これで基本変形は終了。2行目まで0以外の数字が書かれているのでランクは2
(3) 行基本変形をすると
\( \begin{pmatrix} 3 & 5 \\ 9 & 15 \end{pmatrix} \rightarrow \begin{pmatrix} 1 & \frac{5}{3} \\ 9 & 15 \end{pmatrix} \rightarrow \begin{pmatrix} 1 & \frac{5}{3} \\ 0 & 0 \end{pmatrix}\)
これで基本変形は終了。1行目まで0以外の数字が書かれているのでランクは1
このようにみると基本的に2×2行列の時は比例っぽい感じ(上の例だと3:5=9:15)の時がランク1。それ以外はほぼランク2です。ということで普通練習問題では3×3行列か4×4行列で出題されます。計算が少し面倒ですが頑張りましょう!
ちなみにたとえば4×4行列の場合行基本変形をするときステップ1(1列目の整理)は4つの行について処理するので大変ですがステップ2(2列目の整理)は3つの行になり,3列目の整理は2つの行になり・・・と減るのでだんだん楽になります。
\(\begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 \\ 3 & 6 & a^2 \\ 6 & 4a & 5a+3 \end{pmatrix} \)
答え行基本変形を繰り返す。1列目について
これで1列目が整理できた。
a=3のとき
\(\begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 \\ 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 \end{pmatrix}\)
となり行基本変形は終了。1行目まで0以外の数字が書かれているからランクは1
a≠3のとき さらに行基本変形を続ける。
よってa=-3のときは3行目がすべて0であり2行目まで0以外の数字が書かれているからランクは2。
a≠±3のときは3行目まで0以外の数字が書かれているからランクは3
大学になるとあまりたくさんの問題数を出題されることはなく,1問でできるだけいろいろなパターンを問いたくなります。そのため今回のようなaの値によって処理や結果が変わる問題は好まれます。慣れておきましょう。
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