上野竜生です。今回は広義積分の計算と収束・発散の判定を扱います。計算はほぼ高校と同じですぐわかると思うのでほとんど高校の復習です。
広義積分とは
\(\displaystyle \int_0^1 \frac{1}{x}dx \)を計算するとき普通に計算すると\([\log{|x|}]_0^1\)になりますがx=0の代入ができません。この場合はx→+0の極限を考えて積分します。なので本来は
\(\displaystyle \lim_{t\to +0} \int_t^1 \frac{1}{x}dx \)と書くべきなのですが毎回極限を使って書くのが面倒なのでこれを\(\displaystyle \int_0^1 \frac{1}{x}dx \)と書きます。同様に無限大の極限も
\(\displaystyle \lim_{R\to \infty} \int_0^R f(x)dx \)と書くべきところを単に\(\displaystyle \int_0^{\infty} f(x)dx\)と書きます。
このような極限を考える積分を広義積分といいます。
例題1
(1)\(\displaystyle \int_1^{\infty} \frac{1}{x^2} dx \)
(2)\(\displaystyle \int_0^1 \frac{1}{x^2} dx \)
(3)\(\displaystyle \int_{-\infty}^{\infty} \frac{x}{x^2+1} dx \)
(4)\(\displaystyle \int_{-1}^{1} \frac{1}{x} dx \)
(1)\(\displaystyle \int_1^{\infty} \frac{1}{x^2} dx=\lim_{t \to \infty} \int_1^t \frac{1}{x^2} dx \)
なので積分の部分を計算すると
\[ \left[ -\frac{1}{x} \right]_1^t = 1-\frac{1}{t} \]
よって\(\displaystyle \lim_{t\to \infty} 1-\frac{1}{t}=1 \)なので1に収束する。
(2)\(\displaystyle \int_0^1 \frac{1}{x^2} dx=\lim_{t \to +0} \int_t^1 \frac{1}{x^2} dx \)
なので積分の部分を計算すると
\[ \left[ -\frac{1}{x} \right]_t^1 = \frac{1}{t}-1 \]
よって\(\displaystyle \lim_{t\to +0} \frac{1}{t}-1 =\infty \)だから発散する。
(3)
第1項は
\[ \lim_{R \to -\infty} \int_{R}^0 \frac{x}{x^2+1}dx \]
である。積分を計算すると
よってこの極限は発散する。
第2項も
となり発散する。よってこの積分は発散する
【誤答例】
(4)
第1項は
\[ \lim_{t \to -0} \int_{-1}^t \frac{1}{x} dx=\lim_{t \to -0} \log{|t|}=-\infty \]
となり発散。第2項は
となり発散。よって発散する。
\(\displaystyle \int_{-1}^{1} \frac{1}{x} dx=[ \log{|x|} ]_{-1}^1 =0 \)
これはx→0付近の極限を考える時のx→+0とx→-0の極限の広がり方がピッタリ一致としているのですがそうとは限らないのです。
例題2
(1)\(\displaystyle \int_0^1 \log{x} dx \)
(2)\(\displaystyle \int_1^{\infty} \frac{1}{x\sqrt{x^2-1}} dx \)
(1)\(\displaystyle \int_0^1 \log{x}dx = \lim_{t \to +0} \int_t^1 \log{x}dx \)
\(=\displaystyle \lim_{t \to +0} \left[ x\log{x} -x \right]_t^1 \\ = \displaystyle \lim_{t \to +0} -1-t\log{t}+t=-1\)
(2)\(t=\sqrt{x^2-1}\)とおくと\(\displaystyle x=\sqrt{t^2+1} , \frac{dx}{dt}=\frac{t}{\sqrt{t^2+1}}\)
\[=\lim_{R \to \infty} [\arctan{t}]_0^{R} = \frac{\pi}{2} \]
収束の条件
基本的な関数の収束・発散条件
αを実数の定数とする。
(1) 広義積分\(\displaystyle \int_1^{\infty} \frac{1}{x^{\alpha}} dx\)
が収束するための必要十分条件はα>1である。
(2) 広義積分\(\displaystyle \int_0^1 \frac{1}{x^{\alpha}}dx \)
が収束するための必要十分条件はα<1である。
これは計算すれば簡単なので確認しておきましょう。α=1のとき
\[ \int \frac{1}{x}dx = \log{x}+C \]
x→∞でもx→+0でも発散するのでα=1のときは(1)(2)ともに発散する。
α≠1のとき
\[ \int \frac{1}{x^{\alpha}}dx =\frac{1}{1-\alpha} x^{1-\alpha} +C \]
(1)x→∞のときは指数が0より小さい,つまりα>1のときに収束し,それ以外は発散する。
(2)x→+0のときは指数が0より大きい,つまりα<1のときに収束し,それ以外は発散する。
収束・発散を判定するのに便利な定理
関数f(x), g(x) は区間(a, b] で不定積分をもち,次の不等式が成り立つとする。
|f(x)|≦ g(x) (a<x≦b)
このとき,広義積分
\(\displaystyle \int_a^b g(x) dx \)が収束すれば,広義積分
\(\displaystyle \int_a^b f(x)dx \)も収束する。
区間(a, b] を[a, b), [a,∞), (-∞, b] に置き換えても同様のことが成り立つ。
これは|f(x)|よりも大きな関数g(x)が収束すればf(x)も収束することを意味している。ちなみに,|f(x)|よりも小さな関数g(x)が正の無限大に発散すればf(x)も発散する。
定理自体は難しくないのですが演習問題になると途端に難しくなります。次の例題が解けるか確認してみましょう。
例題3
(1)\(\displaystyle \int_0^{\infty} \frac{x^2+1}{\sqrt{x^6+1}} dx \)
(2)\(\displaystyle \int_0^{\infty} xe^{-x^3} dx \) (見えにくい人のために:一番右上の指数は3乗)
(3)\(\displaystyle \int_0^{\infty} \frac{x^{\alpha-1}}{1+x} dx \)(α>0とする。場合分けして求めよ)
(1)
x≧1のとき
なので第2項は
これは発散するので(1)の積分も発散する。
(2)\(\displaystyle \int_0^{1} xe^{-x^3} dx+ \lim_{R \to \infty} \int_1^{R} xe^{-x^3} dx \)
第1項は定数であることに注意。第2項については
x≧1のとき\( |xe^{-x^3}| \leq x^2 e^{-x^3} \)であり,
と収束するので第2項も収束する。よって積分全体も収束する。
(3)積分を2項にわける。
\[ \int_0^1 \frac{x^{\alpha-1}}{1+x} dx+ \int_1^{\infty} \frac{x^{\alpha-1}}{1+x} dx\]
α≧1のとき第2項は
x≧1のとき\(\displaystyle \frac{x^{\alpha-1}}{1+x} \geq \frac{x^{\alpha-1}}{2x} \geq \frac{1}{2x} \)であり,
\(\displaystyle \int_1^{\infty} \frac{1}{2x} dx \)が発散するので積分は発散する。
0<α<1のとき0<x≦1なら\(\displaystyle 0<\frac{x^{\alpha-1}}{1+x} \leq x^{\alpha-1} \)なので
となり第1項は収束する。x≧1なら\(\displaystyle 0<\frac{x^{\alpha-1}}{1+x} \leq x^{\alpha-2} \)なので
なので第2項も収束する。よってまとめると
0<α<1のとき収束。α≧1のとき発散。
大学の積分では広義積分を求めるのはそこまで大変ではないですが収束・発散の判定のほうがかえって難しいイメージです。なぜなら自分で積分区間を区切り,それぞれの範囲で都合のいい関数を見つけてくる必要があるからです。どこまで講義で要求されているかによって不必要なら最後の収束・発散に関する判定の部分は捨てちゃうのも手です。
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