上野竜生です。積分計算でヤコビ行列を計算する必要があるといいました。その計算方法をまとめておきます。
動画
今回初の試みとしてこのページで解説している内容を動画にもしてみました。好評なら他のジャンルでも作りますので改善点などがあればコメントで教えていただけるとありがたいです。
基本計算
\( \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l}x=x(u,v)\\ y=y(u,v)\end{array} \right.\end{eqnarray} \)という変数変換をしたとする。このときのヤコビ行列Jは次のとおりであり、ヤコビアンとはヤコビ行列の行列式の絶対値である。
$$ J=\begin{pmatrix} \frac{\partial x}{\partial u} & \frac{\partial x}{\partial v} \\ \frac{\partial y}{\partial u} & \frac{\partial y}{\partial v} \end{pmatrix} $$
ちなみに3変数でも同様です。つまり、x=x(u,v,w) , y=y(u,v,w) , z=z(u,v,w)で変数変換したときのヤコビ行列は
$$ \begin{pmatrix} \frac{\partial x}{\partial u} & \frac{\partial x}{\partial v} & \frac{\partial x}{\partial w} \\ \frac{\partial y}{\partial u} & \frac{\partial y}{\partial v} & \frac{\partial y}{\partial w} \\ \frac{\partial z}{\partial u} & \frac{\partial z}{\partial v} & \frac{\partial z}{\partial w} \end{pmatrix} $$
覚えやすいといえば覚えやすいですが分母と分子でどっちが縦でどっちが横だっけ・・・?ってなりやすいです。よく使われれる覚え方は下のような「行列」という漢字で覚えます。
分子(上)が行列の行という字に対応して横に整列していて,分母(下)が列という字に対応して縦に整列しています。縦書きで「行列」とかけば自然と覚えられます。
覚えておきたい具体例
極座標変換
(x,y)→(r,θ)を\( x=r\cos{\theta} , y=r\sin{\theta} \)と変換します。これについて定義通り計算します。
\(\displaystyle \frac{\partial x}{\partial r}=\cos{\theta} , \hspace{ 3pt } \frac{\partial x}{\partial \theta}=-r\sin{\theta} \\
\displaystyle \frac{\partial y}{\partial r}=\sin{\theta} , \hspace{ 3pt } \frac{\partial y}{\partial \theta}=r\cos{\theta} \)
より
\(\displaystyle \det \begin{pmatrix} \cos{\theta} & -r\sin{\theta} \\ \sin{\theta} & r\cos{\theta} \end{pmatrix} \\
=r\cos^2{\theta} + r\sin^2{\theta} =r\)
円筒変換
(x,y,z)→(r,θ,z)を\( x=r\cos{\theta} , y=r\sin{\theta} ,z=z\)と変換します。これについても同様にすると
$$\det \begin{pmatrix} \cos{\theta} & -r\sin{\theta} & 0 \\ \sin{\theta} & r\cos{\theta} & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} = r $$
球面変換
(x,y,z)→(r,θ,φ)を
と変換する。これについても同様にすると
\\= \ (\sin{\theta}\sin{\phi})(-r\sin{\theta})(-r\sin{\theta}\sin{\phi})\\ \ +(r\cos{\theta}\cos{\phi})(r\sin{\theta}\cos{\phi})(\cos{\theta})
\\ \ -(-r\sin{\theta}\sin{\phi})(r\cos{\theta}\sin{\phi})(\cos{\theta})\\ \ -(\sin{\theta}\cos{\phi})(-r\sin{\theta})(r\sin{\theta}\cos{\phi})
\\= \ r^2\sin^3{\theta}\sin^2{\phi}+r^2\sin{\theta}\cos^2{\theta}\cos^2{\phi}\\ \ +r^2\sin{\theta}\cos^2{\theta}\sin^2{\phi}+r^2\sin^3{\theta}\cos^2{\phi}
\\= r^2\sin^3{\theta}+r^2\sin{\theta}\cos^2{\theta}
\\= r^2\sin{\theta} \)
<暗記事項>に載せた3つのヤコビアンは超頻出なので毎回計算しなくてもいいように覚えます。(円筒はやや頻度低いです)
ごくまれにこの3パターン以外(楕円など)で出題されることがあります。その場合はこのヤコビ行列を知っているかの問題ですので必ずヤコビアンの導出過程も書きましょう(記述式の場合)3パターンのどれにも当てはまらない例題を出します。
例題
\( \displaystyle \iint_{D} (2x+5y)(3x-7y) dxdy\)
変数変換(x,y)→(u,v)を\( u=2x+5y , v=3x-7y \)とする。
答え\( x=\frac{7}{29}u+\frac{5}{29}v , y=\frac{3}{29}u-\frac{2}{29}v \)となるのでヤコビアンは
\(\displaystyle \det \begin{pmatrix} \frac{7}{29} & \frac{5}{29} \\ \frac{3}{29} & \frac{-2}{29} \end{pmatrix}=\frac{-14-15}{29^2} \)
の絶対値なので\( \frac{1}{29} \)
よって求める積分は
\( \displaystyle \int_{D} (2x+5y)(3x-7y) dxdy
\\ \displaystyle = \int_{0}^{3} \int_{0}^{1} uv \cdot \frac{1}{29} dudv
\\ \displaystyle = \int_{0}^{3} \frac{1}{2}v \cdot \frac{1}{29} dv
\\ \displaystyle = \frac{1}{2} \cdot \frac{9}{2} \cdot \frac{1}{29}
\\ \displaystyle = \frac{9}{116} \)
クイズ
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