上野竜生です。今回はフーリエ級数に展開する方法とその典型的な応用問題としてパーセヴァルの等式を使った例題などを紹介します。
周期2πの関数のフーリエ級数
あとで出てくる一般の周期を覚えれば一発ですが圧倒的に使用頻度が高いのでまずはここから練習します。
周期が2πの関数f(x)は次のようにフーリエ展開できる
\(\displaystyle f(x) ~ \frac{a_0}{2} + \sum_{n=1}^{\infty} (a_n \cos{nx} + b_n \sin{nx}) \)・・・(★)
ただし
\(\displaystyle a_n = \frac{1}{\pi} \int_{-\pi}^{\pi} f(x) \cos{nx}dx \)
\(\displaystyle b_n = \frac{1}{\pi} \int_{-\pi}^{\pi} f(x) \sin{nx}dx \)
積分区間はそもそも周期が2πなので-π→πでも0→2πでも同じ事です。
フーリエ級数を求めよと言われたら,\(a_n,b_n\)の計算をして,上のテンプレート(★)に代入した形を答えよということです。
偶関数の積分や奇関数の積分より,f(x)が偶関数ならsinのほうが全部消えます。(\(b_n=0 \))
f(x)が奇関数なら定数項とcosの項が全部消えます。( \(a_n=0 \))
周期が2lのフーリエ級数
周期が\(2l\)の関数f(x)は次のようにフーリエ展開できる
\(\displaystyle f(x) ~ \frac{a_0}{2} + \sum_{n=1}^{\infty} (a_n \cos{\frac{\pi nx}{l}} + b_n \sin{\frac{ \pi nx}{l} }) \)
ただし
\(\displaystyle a_n = \frac{1}{l} \int_{-l}^{l} f(x) \cos{\frac{\pi nx}{l}}dx \)
\(\displaystyle b_n = \frac{1}{l} \int_{-l}^{l} f(x) \sin{\frac{\pi nx}{l}}dx \)
ちなみに,もともとフーリエ級数の形になっているものをフーリエ級数の公式で積分して係数を求めてフーリエ展開するともとの関数になります。証明はsinやcosの直交性などを使います。
これから計算するにあたって知っておいた方がいいことをまとめておきます。
積和の公式
\( \sin{\alpha}\sin{\beta} = -\frac{1}{2} \{ \cos{(\alpha+\beta)} - \cos{(\alpha-\beta)} \} \)
\( \sin{\alpha}\cos{\beta} = \frac{1}{2} \{ \sin{(\alpha+\beta)} + \sin{(\alpha-\beta)} \} \)
\( \cos{\alpha}\sin{\beta} = \frac{1}{2} \{ \sin{(\alpha+\beta)} - \sin{(\alpha-\beta)} \} \)
\( \cos{\alpha}\cos{\beta} = \frac{1}{2} \{ \cos{(\alpha+\beta)} + \cos{(\alpha-\beta)} \} \)
nが整数のとき,\( \sin{n \pi} =0 , \cos{n \pi}=(-1)^n \)
a,bが整数のとき,\( (-1)^{an+b} = (-1)^{an-b}=(-1)^{-an+b} = (-1)^{-an-b} \)
よく考えれば自明ですが,これらの性質はよく使います。
例題1
\(\displaystyle \begin{eqnarray} f(x)= \begin{cases} 0 & ( -\pi \leq x \leq 0 ) \\ \sin{x} & ( 0 \leq x \leq \pi ) \end{cases} \end{eqnarray} \)
(周期は2π)
やることは高校数学の数IIIレベルの計算を正確に行うだけですが,細かい部分まで考えないと少し間違えてしまいます。例題としてはやや難易度が高いですがチャレンジしてみましょう。
\(\displaystyle a_n=\frac{1}{\pi} \int_{0}^{\pi} \sin{x}\cos{nx}dx \)
\(\displaystyle b_n=\frac{1}{\pi} \int_{0}^{\pi} \sin{x}\sin{nx}dx \)
を計算すればよい。積和の公式より
\(\displaystyle a_n=\frac{1}{\pi} \int_{0}^{\pi} \frac{1}{2} \{ \sin{(n+1)x} +\sin{(1-n)x} \} dx \)
ここでn≠1のとき
\(\displaystyle a_n=\frac{1}{2\pi} \left[ -\frac{1}{n+1} \cos{(n+1)x} - \frac{1}{1-n} \cos{(1-n)x} \right]_0^{\pi} \\ = \displaystyle \frac{1}{2\pi} \left\{ -\frac{1}{n+1} (-1)^{n+1} - \frac{1}{1-n} (-1)^{n-1} +\frac{1}{n+1} + \frac{1}{1-n} \right\} \\ = \displaystyle \frac{1}{2\pi} \cdot \frac{2}{1-n^2} \{ 1+(-1)^n \} \)
n=1のとき
\(\displaystyle a_1=\frac{1}{\pi} \int_{0}^{\pi} \sin{x}\cos{x}dx \\ = \displaystyle \frac{1}{2\pi} \int_0^{\pi} \sin{2x}dx \\ = \displaystyle \left[ -\frac{1}{4\pi} \cos{2x} \right]_0^{\pi} = 0 \)
n=0のとき
\(\displaystyle a_0= \frac{1}{\pi} \int_0^{\pi} \sin{x}dx \\ = \displaystyle \left[ -\frac{1}{\pi} \cos{x} \right]_0^{\pi} \\ = \displaystyle \frac{2}{\pi} \)
となるから上の結果と同じ
次に\( b_n \)も積和の公式を使って求める。
n≠1のとき
\(\displaystyle b_n=\frac{1}{\pi} \int_{0}^{\pi} \sin{x}\sin{nx}dx \\ = \displaystyle \frac{1}{\pi} \int_0^{\pi} -\frac{1}{2} \{ \cos{(n+1)x} - \cos{(1-n)x} \} dx \\ = \displaystyle -\frac{1}{2\pi} \left[ \frac{1}{n+1} \sin{(n+1)x} - \frac{1}{1-n} \sin{(1-n)x } \right]_0^{\pi} \\ =0 \)
n=1のとき
\(\displaystyle \frac{1}{\pi} \int_0^{\pi} \sin^2{x} dx \\ = \displaystyle \frac{1}{\pi} \int_0^{\pi} \frac{1}{2} - \frac{1}{2}\cos{2x} dx \\ = \displaystyle \frac{1}{\pi} \left[ \frac{1}{2}x - \frac{1}{4}\sin{2x} \right]_0^{\pi} \\ =\displaystyle \frac{1}{2} \)
(上のn≠1のときの結果とは異なる)以上より
\(\displaystyle \frac{a_0}{2} + \sum_{n=1}^{\infty} (a_n \cos{nx} + b_n \sin{nx}) \\ = \displaystyle \frac{1}{\pi} + \frac{1}{2}\sin{x} + \frac{1}{\pi} \sum_{n=2}^{\infty} \frac{1+(-1)^n}{1-n^2} \cos{nx} \\ = \displaystyle \frac{1}{\pi} + \frac{1}{2}\sin{x} + \frac{1}{\pi} \sum_{n=1}^{\infty} \frac{2}{1-4n^2} \cos{2nx} \)
今回は積和を使った後の計算で分数が前にでてくるときに分母≠0が必要なのでn≠1とn=1で場合分けをしましたが,大体の場合,n=0のときの\( a_0 \)とn≧1のときの\( a_n \)を場合分けして求めることが多いです。(\( a_n \)の計算途中に\(\frac{1}{n} \)が出てきたら場合分けがいる。)そういう細かい部分でミスがないようにしましょう。
なお,この問題に関してはa0はあえて場合分けせずn≠1の結果を使って問題ありません。
最終結果は下から2行目で終わっても1番下の行まで変形してもどっちでも大丈夫でしょう。
フーリエ級数に展開した後のよくある応用
その1 代入して\(\sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n^{△}} \)などを求めさせる
f(x)をフーリエ展開したものをg(x)とします。つまり最初の定義式で書いたテンプレート(★)の右辺がg(x)です。
このとき,実数aについて次が成り立ちます。
\(\displaystyle \frac{f(a-0)+f(a+0)}{2} = g(a) \)
特にf(x)がx=aで連続ならばf(a)=g(a)
連続ならf(a)=g(a),連続じゃない点であってもx→a-0とx→a+0のf(x)の極限を足して2で割ったものがg(a)と等しくなります。
その2 パーセヴァルの等式を使って直接は求めにくい計算をさせる
パーセヴァルの等式とは次の式です:
\(\displaystyle \frac{1}{\pi} \int_{-\pi}^{\pi} \{ f(x) \}^2 dx = \frac{a_0^2}{2}+\sum_{n=1}^{\infty} (a_n^2+b_n^2)\)
これを証明しないと結果を使ってはいけないという例は非常に珍しく,大抵はこの公式は認めて適用する問題が出題されます。
例題2
(周期2π)について
(1)フーリエ余弦級数に展開せよ。
(2)奇数の平方の逆数の和\(\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{(2n-1)^2} \)を求めよ。
(3)パーセヴァルの等式を用いて\(\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n^4} \)を求めよ。
f(x)は偶関数だから0からπまで積分して2倍すればいいことに注意。
\(\displaystyle a_n=\frac{1}{\pi} \int_{-\pi}^{\pi} f(x) \cos{nx} dx = \frac{2}{\pi} \int_0^{\pi} (\frac{\pi}{2} -x)\cos{nx} dx \)
n=0のとき
\(\displaystyle a_0= \frac{2}{\pi} \int_0^{\pi} \frac{\pi}{2}-x dx = \frac{2}{\pi} \left[ \frac{\pi}{2}x - \frac{1}{2}x^2 \right]_0^{\pi} = 0 \)
n≠0のときは部分積分して
\(\displaystyle a_n=\frac{2}{\pi} \left[ \frac{1}{n} (\frac{\pi}{2}-x) \sin{nx} \right]_0^{\pi} - \frac{2}{\pi} \int_0^{\pi} \frac{1}{n} \cdot (-1) \sin{nx}dx \\ = \displaystyle \frac{2}{\pi} \int_0^{\pi} \frac{1}{n} \sin{nx}dx \\ = \displaystyle \frac{2}{\pi} \left[ - \frac{1}{n^2} \cos{nx} \right]_0^{\pi} = \frac{2}{\pi} \cdot \frac{1-(-1)^n}{n^2} \)
つまりnが偶数のときは0,奇数のときは\(\displaystyle \frac{4}{\pi n^2} \)
よってフーリエ級数に展開すると
\(\displaystyle f(x) ~ \frac{4}{\pi} \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{(2n-1)^2} \cos{(2n-1)x } \)
(2) (1)の結果の両辺にx=0を代入する。(f(x)はx=0で連続なのでただ代入するだけ)
\(\displaystyle f(0)=\frac{\pi}{2} = \frac{4}{\pi} \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{(2n-1)^2} \)
整理すると
\(\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{(2n-1)^2} = \frac{\pi^2}{8} \)
(3)途中まで パーセヴァルの等式にそのまま代入すると
\(\displaystyle \frac{1}{\pi} \int_{-\pi}^{\pi} \{ f(x) \}^2 dx= \sum_{n=1}^{\infty} \frac{16}{\pi^2 (2n-1)^4 }\)
あとは左辺を計算すればよい。左辺は偶関数なので
\(\displaystyle 2 \cdot \frac{1}{\pi} \int_0^{\pi} (x-\frac{\pi}{2})^2 dx = \frac{2}{\pi} \left[ \frac{1}{3}(x-\frac{\pi}{2})^3 \right]_0^{\pi} = \frac{\pi^2}{6} \)
よって
\(\displaystyle \frac{\pi^2 }{6} = \sum_{n=1}^{\infty} \frac{16}{\pi^2 (2n-1)^4} \)
となるから
\(\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{(2n-1)^4}=\frac{\pi^4}{96} \)
あれ?奇数の逆数の4乗和はわかったけど問題は自然数の逆数の4乗和じゃないの...
と思った人もいるかもしれませんが,ここまでわかればほぼゴールです。最後のひと工夫を考えましょう。
\( \displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{(2n)^4} = \frac{1}{16} \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n^4} = \frac{1}{16}A \)
なので奇数の逆数の4乗和は\(\displaystyle A-\frac{1}{16}A= \frac{15}{16}A \)
です。
よって\(\displaystyle \frac{15}{16}A= \frac{\pi^4}{96} \)が成り立つので
\(\displaystyle A=\frac{\pi^4}{90} \)
と求めることができます。
計算式はシンプルですがその計算が結構面倒ですし,最後の答え方をちょっと注意しないといけません。何個か練習してできるようにしましょう。
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