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上野竜生です。今回は複素積分を扱います。置換積分や線積分の要領で求めるタイプのものです。留数を使ったメインの計算はここでは扱わず,基本となる積分を考えます。最終的に留数を使って計算するときも一部この考えを使うので,大学生にとっては飛ばすわけにはいかないでしょう。

複素数の積分は積分経路が複雑

実数の積分だと
\(\displaystyle \int_0^1 f(x)dx \)とかけば積分経路は ”実軸上を” 0から1まで積分するのでスタートとゴールさえかけば実質1通りに定まりますが,複素数の積分は複素数平面をどういう経路で積分するかはスタートとゴールだけでは決まりません。そこでパラメータを使って積分経路を厳密に指定することがおおいです。

複素積分はパラメーターの積分の要領で考える

パラメーターの積分とは結局,置換積分のことです。置換積分がしっかりできていれば特に新しいことを教えなくても計算できるはずです。早速例題1を見てみましょう

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例題1 次の積分を計算せよ。

\(\displaystyle \int_C |z|^2 dz \)
ただしCは\( z=e^{i\theta} (0\leq \theta \leq \pi) \)を反時計回り

積分経路を図で書くとこのように単位円の上半分を1から-1に反時計回りに計算しています(赤色の部分のみ)。この経路での積分をするのですが,やりかたは非常に簡単で,zではなくθで積分するように置換積分しましょう。

積分経路

答え\(\displaystyle \frac{dz}{d\theta}=ie^{i\theta} \)であり,θは0→πでの積分となるので
\(\displaystyle \int_C |z|^2 dz = \int_0^{\pi} |e^{i\theta}|^2 ie^{i\theta} d\theta \)
絶対値の部分は1になる(θは実数だから\( e^{i\theta} = \cos{\theta}+i\sin{\theta} \))ので,これを計算すると
\(\displaystyle \int_0^{\pi} ie^{i\theta} d\theta = \left[ e^{i\theta} \right]_0^{\pi} = -2 \)
実軸上を1→-1に積分した場合
\(\displaystyle \int_{1}^{-1} |z|^2 dz =\int_{1}^{-1} x^2 dx = \left[\frac{1}{3}x^3 \right]_{1}^{-1}=-\frac{2}{3} \)
となるので例題の積分と結果は一致しません。つまり,複素積分は積分経路も正確に決めないといけません。
また,1→ -1までは例題1の赤色の経路で積分し,その後,-1→1まで実軸上(青色の経路)で積分して,結果的に1→1の積分と考えた場合,その値は0ではありません。
このように複素積分はスタートとゴールが一致していても計算結果が0になるとは限りません。

例題2

積分経路Cは原点から1+iまで向かう線分とする。次の積分を計算せよ。
\(\displaystyle \int_C (z^2+z+1) dz \)

パラメータにしたいのでまずは経路を式で表しましょう。
z=(1+i)t t:0→1
とかけますね。あとは例題1と同じです。

答え積分経路はz=t+it (t:0→1)である。
\(\displaystyle \frac{dz}{dt}=1+i\)なので
\(\displaystyle \int_0^1 \{ (t+it)^2 + (t+it)+1 \} (1+i) dt \\ \displaystyle = \left[\frac{1}{3} (t+it)^3 + \frac{1}{2}(t+it)^2 + (t+it) \right]_0^1 \\ =\displaystyle \frac{1}{3}(1+i)^3 + \frac{1}{2}(1+i)^2 +(1+i)=\frac{1+8i}{3} \)

ここまでやってみると,複素積分を計算することはそれほど難しくないということがわかりますね。ここからは重要な例題を2つやっておきます。

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例題3

Cは\( z=a+re^{i\theta} \),(θ:0→2π)とする。
次の積分を計算せよ。
\(\displaystyle \int_C (z-a)^n dz \)
積分経路は下の図の部分です。
積分経路
答え\(\displaystyle \int_C (z-a)^n dz = \int_0^{2\pi} (re^{i\theta})^n rie^{i\theta} d\theta = r^{n+1} \int_0^{2\pi} i e^{i(n+1)\theta} d\theta \)
n=-1のときは被積分関数がiになるから\( 2\pi i r^{n+1} \)となる。
n≠-1のとき,\( t=e^{i\theta} \)とおくと\(\displaystyle \frac{dt}{d\theta} = ie^{i\theta} =it \)だから求める積分は
\(\displaystyle r^{n+1} \int_1^1 it^{n+1} \frac{1}{it} dt=r^{n+1} \int_1^1 t^n dt = \left[ \frac{r^{n+1}}{n+1} t^{n+1}\right]_1^1 =0 \)

例題4 極限が0を示す(重要)

\(\displaystyle \lim_{R\to \infty} \int_C \frac{z-1}{z^4+1} dz=0 \)を示せ。
ただし,Cは\( z=Re^{i\theta} (\theta : 0 \to \pi ) \)とする。
積分経路
答え\(\displaystyle \int_C \frac{z-1}{z^4+1} dz= \int_0^{\pi} \frac{Re^{i\theta}-1}{R^4 e^{4i\theta} +1} \cdot Ri e^{i\theta} d\theta \)
\( \displaystyle 0 \leq \left| \int_0^{\pi} \frac{Re^{i\theta}-1}{R^4 e^{4i\theta} +1} \cdot Ri e^{i\theta} d\theta \right| \leq \int_0^{\pi} \left| \frac{Re^{i\theta}-1}{R^4 e^{4i\theta} +1} \cdot Ri e^{i\theta} \right| d\theta \\ =\displaystyle \int_0^{\pi} \left| \frac{Re^{i\theta} -1}{R^4 e^{4i\theta} +1} \cdot R \right| d\theta \leq \int_0^{\pi} \frac{R+1}{R^4-1}\cdot R d\theta \\ =\displaystyle \frac{R(R+1)}{R^4-1}\pi \)
この右辺はR→∞のとき0に収束するので求める積分も0に収束する。
途中の不等式を1つ1つ理解しましょう。
まず積分してから絶対値をとるより,絶対値をとってから積分をするほうが大きいです。
次に\( |i|=1 , |e^{i\theta}|=1 \)なので絶対値を考えるうえで関係のないところを省略しています。そして被積分関数ですが,一般に正の分数は分母を小さく,分子を大きくしたほうが大きくなります。なので分子は上からの評価,分母は下からの評価が必要です。
三角不等式
||a|-|b|| ≦ |a+b| ≦|a|+|b|
を使うことで分子は上から評価すると
\( |Re^{i\theta}-1| \leq |Re^{i\theta}| + |-1| = R+1 \)
分母は下から評価すると
\( |R^4 e^{4i\theta}+1| \geq || R^4 e^{4i\theta}| - |1| | = R^4-1 \)
となります。そのあとはただの定数関数の積分を計算しています。

具体的な値を求めるというよりは最後のように極限が0になることを示すことの方がこのあと頻繁に登場しますので例題4のタイプを訓練するようにしましょう。初見で思いつくのは難しいので,一度答えを見て解法の型として覚えるぐらいやっておくといいでしょう。

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