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上野竜生です。今回は複素関数論をやるうえで必要不可欠な複素数の基礎知識を紹介します。具体的には実部・虚部・絶対値・偏角・共役・n乗(ここまでは例題1)と,eの複素数乗と自然対数(これは例題2)を扱います。

例題1は高校で複素数平面を習っていれば解けると思うので先に例題を見せます。できる人は飛ばして例題2にすすみましょう。

例題1

\(\alpha=\sqrt{3}-i \)とする。次のものを求めよ。偏角の範囲は-π<Arg(z)≦πとする。
(1)Re(α)
(2)Im(α)
(3)|α|
(4)Arg(α)
(5)\(\displaystyle \frac{1}{\alpha} \)
(6)\( \bar{\alpha} \)
(7)\( \alpha^2 \)
(8)\( \alpha^{11} \)

実数x,yを用いて複素数zはz=x+iyと表される。ここで\( i^2=-1 \)を満たす。

z=x+iyのxの部分を実部といい,Re(z)と書く。つまりRe(x+iy)=x

同様にyの部分を虚部といい,Im(z)と書く。Im(x+iy)=y

複素数平面でz=x+iyは点(x,y)に対応させる。
絶対値|z|は複素数平面上での原点からの距離である。つまり
\(|x+iy|=\sqrt{x^2+y^2} \)

複素数平面で(x,y)がx軸となす角(x軸正の向きから反時計回りにどれだけの角度回転させた位置にあるか)を偏角といい,arg(z)とかく。
arg(z)は1つ見つければそれと2nπずれたものも偏角になってしまう。
そこで-π<arg(z)≦πまたは0≦π<2πの範囲に制限すると1つに定まる。このように定めたものを主値といい,Arg(z)とかく。(最初のAが大文字)

x+iyと共役な複素数はx-iyのことである。これを\(\bar{x+iy}=x-iy \)とかく。

\( |x+iy|=R ,\) Arg\( (x+iy)=\theta \)とすると
\( x+iy=R(\cos{\theta}+i\sin{\theta}) \)とかける。
ここで,次が成り立つ(ド・モアブルの定理。証明は数学的帰納法)

\( (x+iy)^n = R^n (\cos{n\theta} +i\sin{n\theta}) \)

答え(1)Re(α)\( =\sqrt{3} \)
(2)Im(α)=-1
(3)|α|\( = \sqrt{(\sqrt{3})^2+(-1)^2}=2 \)
(4)\(\displaystyle \alpha=2(\cos{(-\frac{\pi}{6})}+i\sin{(-\frac{\pi}{6})}) \)となるので
Arg(α)=\(-\frac{\pi}{6} \)

argα=\(2\pi n-\frac{\pi}{6} \)ですが,「Arg」と大文字で書かれているときは主値のみを答えます。

(5)\(\displaystyle \frac{1}{\alpha}=\frac{(\sqrt{3}+i)}{(\sqrt{3}-i)(\sqrt{3}+i)}=\frac{1}{4}(\sqrt{3}+i) \)
(6)\( \bar{\alpha}=\sqrt{3}+i \)
(7)\( \alpha^2 = 2-2\sqrt{3}i \)
(8)\(\displaystyle \alpha^{11}=\left(2(\cos{(-\frac{\pi}{6})}+i\sin{(-\frac{\pi}{6})}) \right)^{11} \\ \displaystyle = 2^{11} \left(\cos{(-\frac{11}{6}\pi)}+i\sin{(-\frac{11}{6}\pi)}\right) \\ \displaystyle =2048\frac{\sqrt{3}+i}{2}=1024\sqrt{3}+1024i \)

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eの複素数乗の計算

POINT\( e^{iy} = \cos{y}+i\sin{y} \)が成り立つ(オイラーの公式)。よって
\( e^{x+iy} = e^x(\cos{y}+i\sin{y}) \)

これを定義として覚えておくと良い。

対数関数を考える。複素数の対数関数は基本的に底がeだと思ってよい。
\( e^{\beta}=\alpha \)を満たすときに\(\log{\alpha}=\beta \)が成り立つとしてβを求めればよい。

例題2

\(\alpha=\sqrt{3}-i \)とする。次のものを求めよ。偏角の範囲は-π<Arg(z)≦πとする。(例題1の続き)
(9)\( e^{\alpha} \)
(10)Log(α)
答え(9)\( e^{\sqrt{3}-i}=e^{\sqrt{3}}(\cos{1}-i\sin{1})\)
(10) \( e^{x+yi}=e^x(\cos{y}+i\sin{y})=2(\cos{(-\frac{\pi}{6})}+i\sin{(-\frac{\pi}{6})}) \)
より\( x=\log{2} , y=-\frac{\pi}{6} \)
よってLog\(\displaystyle (\sqrt{3}-i) = \log{2}-\frac{\pi}{6}i \)
こちらも\(z=\log{2}-(2\pi n+\frac{\pi}{6})i+ \)のとき\( e^z=\alpha\)なので\( \log{\alpha}=z \)ですが,Logと大文字で書かれているときは主値のみを答えます。
一般にlog(z)=\( \log{|z|} + i\arg{z} \)が成り立ちます。(左辺がLogなら右辺もArg)
つまり複素数の対数は一般には1つに定まりません。(Argの範囲を定めて無理やり1つに定めています)

複素数の解析をやるうえで基礎になりますが,だからといってこれからこれらの性質を頻繁に使うというわけではないです。ある程度できたら次に進みましょう。

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