上野竜生です。今回は中線定理をいろいろな方法で証明したいと思います。
中線定理
図の△OABにおいてCはABの中点であるとする。このとき
OA2+OB2=2(OC2+AC2)
証明1 三角関数を用いて示す。
1-1 ∠Aをθとおく。
△OACと△OABで余弦定理を適用すると
\(\displaystyle \cos{\theta}=\frac{OA^2 + AC^2 - OC^2 }{2OA \cdot AC} = \frac{OA^2+AB^2-OB^2}{2 OA \cdot AB} \)
ここでAB=2ACに注意して右側の等式を2OA・AB倍すると
\( 2(OA^2+AC^2-OC^2)=OA^2+AB^2-OB^2 \)
AB=2ACだから
\( 2OA^2 + 2AC^2 - 2OC^2 = OA^2 + 4AC^2 - OB^2 \)
整理すると
\( OA^2+OB^2=2(OC^2+AC^2) \)
1-2 ∠OCB=θとおく。
∠OCB=θとおくと∠OCA=180°-θなので
\(\cos{∠OCA}=\cos{(180°-\theta)} = -\cos{\theta} \)
△OCBで余弦定理を適用すると
\( OB^2=OC^2+CB^2 - 2OC \cdot CB \cos{∠OCB} \)・・・①
△OACで余弦定理を適用すると
\( OA^2 = OC^2 + AC^2 -2OC \cdot AC \cos{∠OCA} \)・・・②
①+②より
\( OA^2+OB^2=2OC^2 + AC^2+BC^2 -2OC \cdot CB \cos{\theta} -2OC \cdot AC \cdot (-\cos{\theta}) \\ = 2OC^2+2AC^2 \)
∵AC=BC
よって中線定理が示された。
普通は余弦定理を用いた証明を行うことになります。1-2のようにθを定めると美しく仕上がります。私が学生の時に1-2のような証明をしたところ「そこをθとおくのか!」と感動されたことがありますが,実際は1-1のように∠A=θとおいてもできます。うまいところをθとしないと示せないというわけではないのです。
次にベクトルを用いた証明をします。こちらもCを基準にしたほうが美しいですが,素直に考えるとOA,OBベクトルを基準にすることになります。どちらでもできるので紹介します。
証明2 ベクトルを使う
2-1 OA,OBを基準とするベクトルで考える。
左辺=\( | \overrightarrow{OA}|^2+ | \overrightarrow{OB} |^2 \)
\(\displaystyle \overrightarrow{OC} = \frac{\overrightarrow{OA} + \overrightarrow{OB} }{2} \)
\(\displaystyle \overrightarrow{AC} = \frac{\overrightarrow{OB} - \overrightarrow{OA} }{2} \)
なので
\(\displaystyle |\overrightarrow{OC}|^2 + |\overrightarrow{AC}|^2 = \frac{1}{4}|\overrightarrow{OA}|^2 + \frac{1}{2}\overrightarrow{OA} \cdot \overrightarrow{OB} + \frac{1}{4}|\overrightarrow{OB}|^2 + \frac{1}{4}|\overrightarrow{OB}|^2 - \frac{1}{2}\overrightarrow{OA}\cdot \overrightarrow{OB} + \frac{1}{4}|\overrightarrow{OA}|^2 \\ = \displaystyle \frac{1}{2}|\overrightarrow{OA}|^2+ \frac{1}{2}|\overrightarrow{OB}|^2 \)
よって
右辺= \( 2(|\overrightarrow{OC}|^2+|\overrightarrow{AC}|^2 )=|\overrightarrow{OA}|^2+|\overrightarrow{OB}|^2 =\)左辺
2-2 \( \overrightarrow{x}=\overrightarrow{CB} , \overrightarrow{y}=\overrightarrow{CO} \)とおく。
\(\overrightarrow{CA}=-\overrightarrow{x} , \overrightarrow{OA}=\overrightarrow{CA}-\overrightarrow{CO}=-\overrightarrow{x}-\overrightarrow{y} , \overrightarrow{OB}=\overrightarrow{x}-\overrightarrow{y} \)だから
右辺=\(2(|\overrightarrow{x}|^2+|\overrightarrow{y}|^2) \)
左辺=\( |-\overrightarrow{x}-\overrightarrow{y}|^2 + |\overrightarrow{x}-\overrightarrow{y}|^2 \\ \displaystyle = |\overrightarrow{x}|^2 +2\overrightarrow{x}\cdot \overrightarrow{y} +|\overrightarrow{y}|^2+|\overrightarrow{x}|^2-2\overrightarrow{x}\cdot \overrightarrow{y} +\overrightarrow{y}|^2 \\ =2|\overrightarrow{x}|^2+2|\overrightarrow{y}|^2 \)
となるから左辺=右辺。
次に複素数平面の知識を使った証明を示します。しかし,内積をがっつり計算するわけではないのでベクトルと複素数は本質的に同じような証明になります。一応示しておきます。
証明3 複素数平面を利用する
3-1 複素数平面を使う(Oが原点)
複素数平面でOを原点とし,A,Bを表す複素数をそれぞれα,βとする。
このときC\(\displaystyle = \frac{\alpha + \beta}{2} \)
左辺\( =OA^2+OB^2= |\alpha|^2+|\beta|^2 \)
右辺\( =2(OC^2+AC^2) \)
\(\displaystyle = 2\left( |\frac{\alpha+\beta}{2}|^2 + |\frac{\alpha+\beta}{2}-\alpha|^2 \right) \\ = \displaystyle \frac{1}{2}( |\alpha+\beta|^2 + |\beta-\alpha|^2 ) \\ = \displaystyle \frac{1}{2} \left\{ (\alpha+\beta)(\bar{\alpha}+\bar{\beta}) + (\beta-\alpha)(\bar{\beta}-\bar{\alpha}) \right\} \\ =\displaystyle \frac{1}{2} (|\alpha|^2+ \alpha \bar{\beta} + \beta \bar{\alpha} + |\beta|^2 + |\beta|^2 - \alpha \bar{\beta} - \beta \bar{\alpha} + |\alpha|^2 ) \\ = |\alpha|^2+|\beta|^2 \)
3-2 複素数平面を使う。(Cが原点)
Cを原点とする。B,Oを表す複素数をそれぞれβ,γとおく。このときAは-βと表せるので
左辺\(= |\beta+\gamma|^2+|\beta-\gamma|^2 \\ = (\beta+\gamma)(\bar{\beta}+\bar{\gamma} ) + (\beta - \gamma)( \bar{\beta} - \bar{\gamma}) \\ = |\beta|^2+ \beta \bar{\gamma} + \gamma \bar{\beta} + |\gamma|^2 + |\beta|^2- \beta \bar{\gamma} - \gamma \bar{\beta} + |\gamma|^2 \\ = 2|\beta|^2 + 2|\gamma|^2 \)
右辺=\( 2(OC^2+AC^2)=2(|\gamma|^2+|\beta|^2) \)
証明4 点の座標を設定する。
O(a,b),A(c,d),B(e,f)とおいてもできますが計算が複雑になるので0を多く含むように取りましょう。この場合だとCが原点になるように平行移動してBがx軸上にくるように回転させれば0が多くなります。
B(a,0),C(0,0),A(-a,0),O(b,c)とおく。
このとき
左辺\(= (a+b)^2+c^2 + (a-b)^2+c^2 = 2a^2+2b^2+2c^2 \)
右辺\(= 2(a^2+b^2+c^2) \)
となるから左辺=右辺
証明5 三平方の定理を使う。
OからABに垂線をおろし,その交点をHとする。
Hが辺CB上にあるとき(端点を含む)
CB=x,CH=y , OH=hとおくと三平方の定理から
\( OA^2+OB^2=(x+y)^2+h^2 + (x-y)^2+h^2=2x^2+2y^2+2h^2 \)
\( OC^2+AC^2=y^2+h^2+x^2 \)
なので\( OA^2+OB^2=2(OC^2+AC^2) \)が成立。
Hが辺CA上にあるときも同様。
Hが辺ABの外側にあるとき。A,B,Hの順に並んでいるときは
CB=x,CH=y , OH=hとおくと三平方の定理から
\( OA^2+OB^2=(x+y)^2+h^2 + (y-x)^2+h^2=2x^2+2y^2+2h^2 \)
\( OC^2+AC^2=y^2+h^2+x^2 \)
なので\( OA^2+OB^2=2(OC^2+AC^2) \)が成立。
H,A,Bの順に並んでいるときも同様。
よって中線定理は成立。
この場合は三平方の定理を立式するときの図で場合分けがいります。結果として同じような式になりますが,Hが辺AB上にある時しかそもそも考えていないような答案を提出すると印象が悪く減点される可能性が高いです。
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