上野竜生です。
基本的な積分計算はできるようになった人のための応用例として三角関数の直交性を紹介します。本格的にやると大学で習うレベルですが簡単な例だと高校範囲で十分できるので入試にもたまに出ます。
三角関数の直交性
(1) \(\displaystyle \int_0^{2\pi} \sin{nx}\cos{mx} dx \)
(2) \(\displaystyle \int_0^{2\pi} \sin{nx}\sin{mx} dx \)
(3) \(\displaystyle \int_0^{2\pi} \cos{nx}\cos{mx} dx\)
すべて積和の公式で和の形に直してから積分します。
\( \sin{\alpha}\sin{\beta}=\frac12 \{ \cos{(\alpha-\beta)} - \cos{(\alpha+\beta)}\} \)
\( \cos{\alpha}\cos{\beta}=\frac12 \{ \cos{(\alpha+\beta)} + \cos{(\alpha-\beta)}\} \)
\(\displaystyle \int_0^{2\pi} 0 dx =0 \)
n=m≠0のとき
\( \displaystyle \int_0^{2\pi} \frac{1}{2}\sin{2nx} dx \\
=\displaystyle \left[-\frac{1}{4n}\cos{2nx}\right]_0^{2\pi}\\
=0\)
n=-m≠0のとき
\( \displaystyle \int_0^{2\pi} \frac{1}{2}\sin{2nx} dx \\
=\displaystyle \left[-\frac{1}{4n}\cos{2nx}\right]_0^{2\pi}\\
=0\)
n≠±mのとき
以上よりすべての場合において
\(\displaystyle \int_0^{2\pi} \sin{nx}\cos{mx} dx =0\)
答え(2) n=m=0のとき
\(\displaystyle \int_0^{2\pi} 0 dx =0 \)
n=m≠0のとき
\( \displaystyle \int_0^{2\pi} \sin^2{nx} dx \\
=\displaystyle \int_0^{2\pi} \frac{1-\cos{2nx}}{2}dx\\
=\displaystyle \left[ \frac{1}{2}x-\frac{1}{4n}\sin{2nx} \right]_0^{2\pi}\\
=\pi\)
n=-m≠0のとき 上と同様にして
\( \displaystyle \int_0^{2\pi} -\sin^2{nx} dx=-\pi \)
n≠±mのとき
=\displaystyle \int_0^{2\pi} \{\frac{1}{2}\cos{(n-m)x}-\frac{1}{2}\cos{(n+m)x} \} dx\\
=\displaystyle \left[\frac{1}{2(n-m)}\sin{(n-m)x}-\frac{1}{2(n+m)}\sin{(n+m)x} \right]_0^{2\pi} \\=0\)
以上よりn=m≠0のとき\( \pi\) ,n=-m≠0のとき\( -\pi \),それ以外のとき0
答え(3) n=m=0のとき
\(\displaystyle \int_0^{2\pi} 1 dx =2\pi \)
n=m≠0のとき
\( \displaystyle \int_0^{2\pi} \cos^2{nx} dx \\
=\displaystyle \int_0^{2\pi} \frac{1+\cos{2nx}}{2}dx\\
=\displaystyle \left[ \frac{1}{2}x+\frac{1}{4n}\sin{2nx} \right]_0^{2\pi}\\
=\pi\)
n=-m≠0のとき 上と同様にして
\( \displaystyle \int_0^{2\pi} \cos^2{nx} dx=\pi \)
n≠±mのとき
=\displaystyle \int_0^{2\pi} \{\frac{1}{2}\cos{(n+m)x}+\frac{1}{2}\cos{(n-m)x} \} dx\\
=\displaystyle \left[\frac{1}{2(n+m)}\sin{(n+m)x}+\frac{1}{2(n-m)}\sin{(n-m)x} \right]_0^{2\pi} \\=0\)
以上よりn=±m≠0のとき\( \pi\) ,n=m=0のとき\( 2\pi\),それ以外のとき0
(1)ができればあとは同様ですが大学生のレポート問題で出題される可能性も考慮して(2),(3)も丁寧にかいておきました。入試では出てもこの中のどれか1つです。またn,mが整数ではなく自然数の場合だけで十分なことも多いです(そのときはn=m=0のときとn=-m≠0のときが不要)。n,mが自然数のときの結果をまとめておきます。
n,mが自然数のとき
\(\displaystyle \int_0^{2\pi} \sin{nx}\cos{mx} dx=0 \)
つまり2つの関数が同じ関数であれば\(\pi\)に,異なる関数なら0になる。
これを使った定番問題
が最小となるように定数a,b,cの値を定め,そのときの最小値を求めよ。
上の結果は既知とします。2乗を展開するとまだ計算していない積分はx2とxsinx,xsin2x,xsin3xです。x2の積分は簡単なので面倒そうなxsinkx(k=1,2,3)を先に計算します。
答えk=1,2,3に対し
\( \displaystyle \int_0^{2\pi} x\sin{kx} dx \\
=\displaystyle \left[ -\frac{x}{k}\cos{kx} \right]_0^{2\pi} + \int_0^{2\pi} \frac{1}{k}\cos{kx} dx \\
=\displaystyle -\frac{2\pi}{k}+\left[\frac{1}{k^2}\sin{kx}\right]_0^{2\pi} \\
=\displaystyle -\frac{2\pi}{k} \)
よって
=\displaystyle \frac{8\pi^3}{3}+\pi a^2+\pi b^2+\pi c^2+4\pi a +2\pi b +\frac{4}{3} \pi c\\
=\displaystyle \pi \{(a+2)^2+(b+1)^2+(c+\frac{2}{3})^2 -\frac{49}{9} + \frac{8\pi^2}{3} \} \)
よって\(\displaystyle a=-2, b=-1,c=-\frac{2}{3} \)のとき最小値\( \displaystyle \frac{8\pi^3}{3}-\frac{49\pi}{9} \)
∫f(x)2dxが最小となるように定数の値を定める問題は基本に忠実に計算するだけです。計算量が多くなりますが頑張りましょう。
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