当サイトは、PRを含む場合があります。

上野竜生です。不等式の証明問題で定番の問題を紹介します。証明方法はほぼワンパターンなので1度見ておけばできるようになると思いますが,難関大学になると不等式そのものも知識としてもっておいたほうがいいと思うので覚えておきたい不等式(主にマクローリン展開)を紹介します。

不等式の証明とマクローリン展開

例題

x≧0のとき,次の不等式を証明せよ。
\(\displaystyle x-\frac{x^3}{6} \leq \sin{x} \leq x \)

右のほうが項の数も少なく次数も低く,楽そうなので右から示します。sinx≦xを示すためにf(x)=x-sinxとおきf(x)の最小値が0以上であることを示す方針です。左も同様です。

答えf(x)=x-sinxとおく。
f'(x)=1-cosx≧0なのでf(x)は単調増加。
よってx=0のときに最小であり,f(0)=0なのでx≧0ではf(x)≧f(0)=0よってsinx≦xは成立。
\( g(x)=\sin{x}-x+\frac{x^3}{6} \)とおく。
\( g'(x)=\cos{x}-1+\frac{x^2}{2}\)(↓に続く)

ここまでは簡単ですがここで行き詰まったようにも見えます。

先ほどと同様g(x)≧0を示したい
→さっきと同様ならg'(x)≧0かつg(0)=0を示せばよい。
→g(0)=0はわかるがg'(x)が複雑でわからない
という感じです。

この場合のテクニックですがh(x)=g'(x)とおきましょう。示したいのはh(x)≧0なので微分して最小値が0の方針をとるんですよね。ということでもう1回微分します。h'(x)=g''(x)≧0かつh(0)=g'(0)=0を示せばいいことになります。答案上ではわざわざh(x)とおかなくてもg'(x)のままで大丈夫です。

答え(続き)g''(x)=-sinx+x=f(x)≧0なのでg''(x)≧0
ゆえにg'(x)は単調増加。g'(0)=0よりg'(x)≧0
よってg(x)は単調増加。g(0)=0よりg(x)≧0
以上より求める不等式が証明された。

次数が高くなればそれだけ微分する回数が増えるだけでやることは同じです。

ところでこの問題ではf(0)=0 , g(0)=g'(0)=0だしf'(x)≧0もg''(x)≧0も全く無駄のない値となっています。すごく美しい不等式にも見えますがこの問題の背景は何なのでしょうか?実は大学で習うマクローリン展開の一部なのです。

マクローリン展開とは関数を多項式で近似すること,で有名な関数たとえばsinxだと

\( \displaystyle \sin{x}=x-\frac{x^3}{3!}+\frac{x^5}{5!}-\frac{x^7}{7!}+\cdots \)

となっています。この和の計算を途中で止めても(たとえばx3の項でやめても)まあまあいい近似にはなりますが無限に繰り返すと等しくなります。

テイラー展開ともいえますが,テイラー展開とはx=aの周りで関数を多項式で近似することであり,マクローリン展開はテイラー展開のa=0の場合のことです。
広告

マクローリン展開の例

以下では有名な関数についてマクローリン展開を紹介します。基本的にプラスマイナスが交互に続くものではプラスの項でやめれば元の関数より大きく,マイナスの項でやめれば元の関数より小さくなるものと思って問題ないでしょう。

\( \displaystyle \sin{x}=x-\frac{x^3}{3!}+\frac{x^5}{5!}-\frac{x^7}{7!}+\cdots \)

\(\displaystyle \cos{x}=1-\frac{x^2}{2!}+\frac{x^4}{4!}-\frac{x^6}{6!}+\cdots \)

\( \displaystyle e^x=1+\frac{x}{1!}+\frac{x^2}{2!}+\frac{x^3}{3!}+\cdots \)

\( \displaystyle \log{(1+x)}=x-\frac{x^2}{2}+\frac{x^3}{3}-\frac{x^4}{4}+\cdots \)

これらから得られる不等式を知っておけばたとえばハサミウチで極限を求めたり積分値を評価するときなどに役立つでしょう。

なお記述式の入試などではなるべく最初に紹介したような証明をつけておきましょう。(通常は誘導で(1)で証明,(2)で利用することが多い)

sinxの評価方法その2(3乗も計算したくない場合)

sinxの評価方法としては先ほどの例題のような3次式で挟むことができますが,3次式で挟んでも極限値や積分がうまくいかない場合などもあるでしょう。この場合のsinxの評価方法は次のようなものです。

\(\displaystyle  0 \leq x \leq \frac{\pi}{2} \)のとき\(\displaystyle \frac{2}{\pi}x\leq \sin{x} \leq x\)

証明右側は先ほどの例題と同様にできる。左側についてはsinxを2階微分すると-sinx≦0よりsinxは上に凸。よってy=sinx上の点(0,0),\( (\frac{\pi}{2},1) \)を通る直線より上にある。この直線の式が\( y=\frac{2}{\pi}x \)なので求める不等式を得る。

ジョルダンの不等式

この評価方法も知っておくとよいでしょう。理論的にはexなどにも応用できます(0≦x≦1でx+1≦ex≦(e-1)x+1が成立など)が頻出なのはsinxのみです。

ハサミウチに使える不等式なので使いこなせるようにしましょう。

 

解説を読んで数学がわかった「つもり」になりましたか?数学は読んでいるうちはわかったつもりになりますが演習をこなさないと実力になりません。そのためには問題集で問題を解く練習も必要です。オススメの参考書を厳選しました

<高校数学> <大学数学> さらにオススメの塾、特にオンラインの塾についてまとめてみました。自分一人だけでは自信のない人はこちらも参考にすると成績が上がります。