上野竜生です。合同式は便利ですが書き方を間違えている人,少し意味を間違えている人が多いです。そこで書き方に注意して書けるようにしましょう。
A≡a (mod n)
とかく。
言い換えればA-aがnの倍数であるということです。
=ではなく三本線(≡)なので注意してください。
これを使う場面はほとんどの場合で「あまり」を表します。つまり10≡1 (mod 3)や,100≡2 (mod 7) などです。そのためmodは余りを返すものだと思ってる人もいるようですが必ずしもそうとは限りません。
最近SNSで見ましたがこんな感じの問題もありました(数値などは変えています)
b≡n (mod 5)
a+b≡0 (mod 3)となるnはいくらか?
意図としてはaはnを4で割った余り,bはnを5で割った余り。a+bが3の倍数といいたいのでしょう。たとえばn=10のとき
a=2 , b=0 a+b=2のつもりかもしれませんがあくまでも≡は余りが等しいことを表すのでa=6 ,b=0 a+b=6≡0 でもいいことになります。ということでmod4 とmod5を足し算することがそもそもおかしいということになります。
合同式の性質
A≡a ,B≡b (mod n)とする。このとき次が成り立つ。
- A+B≡a+b (mod n)
- A-B≡a-b (mod n)
- AB≡ab (mod n)
- 割り算は定義しません。
- x≡y (mod n)ならばxm≡ym (mod n)
- nとmが互いに素のときam≡bm (mod n)ならばa≡b (mod n)
これらの証明は左辺-右辺がnの倍数を示せばよいです。たとえば3.については
A≡a,B≡b(mod n)よりA-a=αn,B-b=βnとおける。(α,βは整数)
よってAB-ab=(αn+a)(βn+b)=(αβn+bα+aβ)n はnの倍数なので成立。
5.は二項定理で証明できます。なぜか頻出です。
x=kn+yとおける。このとき
最後の式の()の中は整数なのでxmとymはnで割ったあまりが等しい。
合同式を使えばいちいちこの証明をせずに式変形ができます(問題文で証明せよと書かれていない限り)
例題
n=1,2,3・・・を代入すると5nを6で割った余りは5,1,5,1,5,1・・・を繰り返します。よって偶数の時と予想できます。これを実際に記述式答案だと思って書いてみましょう。
答えnが偶数のときn=2kとおくと,
5n≡52k≡25k≡1k≡1 (mod 6) (∵25≡1 (mod 6))
よってnが偶数の時は成立。
nが奇数のときn=2k+1とおくと
5n≡52k+1≡5・52k≡5・1≡5(mod 6) (52k≡1 (mod 6)は上で示した)
よってnが奇数の時は不成立。以上よりnが偶数のとき。
ちなみに厳密にはこれ(2k+1とおく)だと3以上の奇数しか示せていないようにも見えます。念のためn=1も調べておいたほうがいいでしょう。
ちなみにこの場合次の別解もあります。
別解5≡(-1) (mod 6)より
\(5^n≡(-1)^n≡\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} -1 (nが奇数) \\ 1 (nが偶数) \end{array} \right.\end{eqnarray}\)
よって答えはnが偶数のとき
合同式を知らないと二項定理を使うことになります。毎回使えば練習になるかもしれませんが合同式を使えたほうが楽でしょう。ただし,合同式だと解答量が少ない分,書き方をミスすれば減点は大きくなる可能性があります。正しく書けるようにしましょう。
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