上野竜生です。cosのn倍角の公式を紹介します。
cosのn倍角の公式
始めのうち(n=3まで)は教科書で習いますし,n=4,5ぐらいなら現実的な時間で導けると思います。結果だけ示します。
cosθ=cosθ
cos2θ=2cos2θ-1
cos3θ=4cos3θ-3cosθ
cos4θ=8cos4θ-8cos2θ+1
cos5θ=16cos5θ-20cos3θ+5cosθ
・・・
ここから任意の自然数nについて「cosnθはcosθの多項式で表せそうだな・・・」と思うかもしれません。これは正しいのでしょうか?答えはYesです。これを証明します。
チェビシェフの多項式(結果)
まず結果だけ述べます。
ただし,関数Tn(x)は次の漸化式で定められる多項式である。
T1(x)=x , T2(x)=2x2-1
Tn+2(x)=2xTn+1(x)-Tn(x)
ではこれを証明します。
チェビシェフの多項式(証明)
n=1,2のときTn(x)が正しいことは明らか。漸化式を示す。
三角関数の加法定理より
cos(n+1)θ=cosnθcosθ-sinnθsinθ
cos(n-1)θ=cosnθcosθ+sinnθsinθ
辺々加えると
cos(n+1)θ+cos(n-1)θ=2cosnθcosθ
よってcos(n+1)θ=2cosθcosnθ-cos(n-1)θ
つまり
cos(n+2)θ=2cosθcos(n+1)θ-cosnθ
となるから
Tn+2(x)=2xTn+1(x)-Tn(x)
が成立。
<別解> ド・モアブルの公式を利用する
この場合,漸化式ではなく一般項(ただしΣは残る)が出てきます。
ド・モアブルの公式より
\( \cos{n\theta}+i\sin{n\theta}\\=(\cos{\theta}+i\sin{\theta})^n \\ \displaystyle = \sum_{k=0}^n {}_nC_{k} \cos^{n-k}\theta+(i\sin{\theta})^k \)
ここで実部だけを取り出す。右辺はkが奇数のときは純虚数でkが偶数のときが実数なのでkが偶数のときだけを足せば良い。よって
\(\displaystyle \cos{n\theta}= \sum_{k=0}^{n'} {}_nC_{2k} (\cos{\theta})^{n-2k}(-\sin^2{\theta})^k \\
\displaystyle = \sum_{k=0}^{n'} {}_nC_{2k} (\cos{\theta})^{n-2k}(\cos^2{\theta}-1)^k \)
ただし\(\displaystyle n'=[\frac{n}{2}]=\begin{eqnarray} \begin{cases} \frac{n}{2} & ( nが偶数 ) \\ \frac{n-1}{2} & ( nが奇数 ) \end{cases} \end{eqnarray}\)
よって
\(\displaystyle T_n(x)=\sum_{k=0}^{n'} {}_nC_{2k} x^{n-2k} (x^2-1)^k \)
である。
<補足>もっときれいに書ける
導出過程がやや面倒ですので省略しますが漸化式で書かれたTn(x)の式は次のようにきれいに解くことができます。
\( \displaystyle T_n(x)=\sum_{k=0}^{n'} \frac{(-1)^k n}{2(n-k)}{}_{n-k}C_k (2x)^{n-2k} \)
sinやtanは・・・?
sinnθがsinθの多項式でかけるかと言うと答えはNoです(n=2ですでに反例)が,
sinnθ=sinθ×(cosθの多項式)
の形で書けます。
tannθはそもそも加法定理がtanのみで表せるのでもちろんtanθのみでかけますが分数であることには変わりありません。
cos以外はやや複雑ですのでこれらは次回にします。
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