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上野竜生です。整数係数方程式の整数解に関する問題を扱います。整数分野にしてますが数Bの数学的帰納法や数学系大学のアイゼンシュタインの既約判定法を扱っているのでかなり難易度は高いです。超難関大学・特色入試を受ける人は全部理解したいですが普通の難関大学レベルでは例題2以降は不要かもしれません。
例題1
n≧2 p:素数とする。
\[f(x)=x^n +a_{n-1}x^{n-1}+a_{n-2}x^{n-2}+\cdots + a_1x +a_0 \]
を考える。
(1)\( a_0,a_1,\cdots,a_{n-1} \)はpの倍数・・・(★)とする。
f(x)=0が整数解αをもつならばαはpの倍数であることを示せ。
(2)(★)かつ「a0がp2で割り切れない」とき,f(x)=0は整数解を持たないことを示せ。
\[f(x)=x^n +a_{n-1}x^{n-1}+a_{n-2}x^{n-2}+\cdots + a_1x +a_0 \]
を考える。
(1)\( a_0,a_1,\cdots,a_{n-1} \)はpの倍数・・・(★)とする。
f(x)=0が整数解αをもつならばαはpの倍数であることを示せ。
(2)(★)かつ「a0がp2で割り切れない」とき,f(x)=0は整数解を持たないことを示せ。
答え(1)f(α)=0より
\(\alpha^n = -(a_{n-1}\alpha^{n-1}+a_{n-2}\alpha^{n-2}+\cdots + a_1\alpha +a_0) \)
ここで右辺の各項は(★)よりpの倍数だから右辺はpの倍数。
よって左辺もpの倍数となりαはpの倍数。
(2)整数解αをもつと仮定する。(1)より整数解をもつならpの倍数なのでα=pβとおく。
f(pβ)=0より
\( a_0=-((p\beta)^n +a_{n-1}(p\beta)^{n-1}+a_{n-2}(p\beta)^{n-2}+\cdots + a_1(p\beta)) \)
ここで右辺の第1項はn≧2よりpで少なくとも2回割り切れる。第2項以降はpが少なくとも1回かけられていて,かつ(★)の条件から各aiがpの倍数なので各項は少なくともpで2回割り切れる。
よって右辺はp2の倍数である。しかし左辺はp2で割り切れないので矛盾。よって背理法よりf(x)=0は整数解をもたない。
\(\alpha^n = -(a_{n-1}\alpha^{n-1}+a_{n-2}\alpha^{n-2}+\cdots + a_1\alpha +a_0) \)
ここで右辺の各項は(★)よりpの倍数だから右辺はpの倍数。
よって左辺もpの倍数となりαはpの倍数。
(2)整数解αをもつと仮定する。(1)より整数解をもつならpの倍数なのでα=pβとおく。
f(pβ)=0より
\( a_0=-((p\beta)^n +a_{n-1}(p\beta)^{n-1}+a_{n-2}(p\beta)^{n-2}+\cdots + a_1(p\beta)) \)
ここで右辺の第1項はn≧2よりpで少なくとも2回割り切れる。第2項以降はpが少なくとも1回かけられていて,かつ(★)の条件から各aiがpの倍数なので各項は少なくともpで2回割り切れる。
よって右辺はp2の倍数である。しかし左辺はp2で割り切れないので矛盾。よって背理法よりf(x)=0は整数解をもたない。
ここから先は大学レベルです。興味のある人は覗いてみてください。大学入試ではほとんど見かけませんが出題されてもおかしくはないレベルです。
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例題2 アイゼンシュタインの既約判定法<大学レベル>
n≧2 p:素数とする。整数係数多項式
\[f(x)=a_n x^n +a_{n-1}x^{n-1}+a_{n-2}x^{n-2}+\cdots + a_1x +a_0 \]
の係数について次の3条件が成り立っている
(i)a0はpの倍数だがp2の倍数ではない
(ii)a1からak-1まではpの倍数
(iii)akはpの倍数ではない
このとき,f(x)を整数係数で因数分解するとk次式以上の因数がでることを示せ。(数Bの数学的帰納法を使うので習ってなければ証明は省略してもOK)
\[f(x)=a_n x^n +a_{n-1}x^{n-1}+a_{n-2}x^{n-2}+\cdots + a_1x +a_0 \]
の係数について次の3条件が成り立っている
(i)a0はpの倍数だがp2の倍数ではない
(ii)a1からak-1まではpの倍数
(iii)akはpの倍数ではない
このとき,f(x)を整数係数で因数分解するとk次式以上の因数がでることを示せ。(数Bの数学的帰納法を使うので習ってなければ証明は省略してもOK)
答えf(x)=g(x)h(x)と書けるとする。ここで
\( g(x)=b_s x^s +b_{s-1} x^{s-1}+\cdots +b_1 x+b_0 \)
\( h(x)=c_t x^t+ c_{t-1}x^{t-1} +\cdots + c_1 x + c_0 \)
とおく。
g(x)h(x)のxmの係数は
\[ \sum_{i=0}^m b_i c_{m-i} \]
であることに注意。
f(x)=g(x)h(x)の定数項に着目すると
\( a_0= b_0 c_0 \)
条件(i)より左辺はpで1回だけ割り切れるので右辺もpで1回だけ割り切れる。ここでb0がpの倍数で,c0はpの倍数ではないとしても一般性を失わない。
次にxの係数に着目すると
\( a_1= b_0 c_1+b_1 c_0 \)
すると左辺はpの倍数でb0はpの倍数かつc0がpの倍数でないからb1もpの倍数。
同様にxm(1≦m≦k-1)に着目すると
\[a_m= \sum_{i=0}^m b_i c_{m-i}=\sum_{i=0}^{m-1} b_i c_{m-i} + b_m c_0 \]
となり左辺は(ii)よりpの倍数かつ右辺のΣの中は帰納的にpの倍数になるから\(b_mc _0 \)がpの倍数。
c0がpの倍数でないからbm(m=1,2,3,・・・,k-1)はpの倍数となる。
最後にxkの係数に注意すると
\[a_k= \sum_{i=0}^k b_i c_{k-i}=\sum_{i=0}^{k-1} b_i c_{k-i} + b_k c_0 \]
ここで左辺は(iii)よりpの倍数ではない。右辺のΣはpの倍数となる。よって
\[ b_k c_0=a_k - \sum_{i=0}^{k-1} b_i c_{k-i} \]
と変形すると右辺はpの倍数ではないので(右辺)≠0
さらにc0もpの倍数ではないのでc0≠0
よってbk≠0となるのでg(x)はk次式以上である。
\( g(x)=b_s x^s +b_{s-1} x^{s-1}+\cdots +b_1 x+b_0 \)
\( h(x)=c_t x^t+ c_{t-1}x^{t-1} +\cdots + c_1 x + c_0 \)
とおく。
g(x)h(x)のxmの係数は
\[ \sum_{i=0}^m b_i c_{m-i} \]
であることに注意。
f(x)=g(x)h(x)の定数項に着目すると
\( a_0= b_0 c_0 \)
条件(i)より左辺はpで1回だけ割り切れるので右辺もpで1回だけ割り切れる。ここでb0がpの倍数で,c0はpの倍数ではないとしても一般性を失わない。
次にxの係数に着目すると
\( a_1= b_0 c_1+b_1 c_0 \)
すると左辺はpの倍数でb0はpの倍数かつc0がpの倍数でないからb1もpの倍数。
同様にxm(1≦m≦k-1)に着目すると
\[a_m= \sum_{i=0}^m b_i c_{m-i}=\sum_{i=0}^{m-1} b_i c_{m-i} + b_m c_0 \]
となり左辺は(ii)よりpの倍数かつ右辺のΣの中は帰納的にpの倍数になるから\(b_mc _0 \)がpの倍数。
c0がpの倍数でないからbm(m=1,2,3,・・・,k-1)はpの倍数となる。
最後にxkの係数に注意すると
\[a_k= \sum_{i=0}^k b_i c_{k-i}=\sum_{i=0}^{k-1} b_i c_{k-i} + b_k c_0 \]
ここで左辺は(iii)よりpの倍数ではない。右辺のΣはpの倍数となる。よって
\[ b_k c_0=a_k - \sum_{i=0}^{k-1} b_i c_{k-i} \]
と変形すると右辺はpの倍数ではないので(右辺)≠0
さらにc0もpの倍数ではないのでc0≠0
よってbk≠0となるのでg(x)はk次式以上である。
例題2により例題1(2)のような状況では1次式で因数分解できないどころか全く因数分解できないことがわかります。特色入試でもない限り例題2の解法は覚えなくていいでしょう。例題1は割と標準レベルなので知らなくても解けるぐらいにしておきたいですね。
この判定法を知っていれば因数分解「できない」ことが示せるようになります。
例題3
x4+2x3+3x2+6x+12はこれ以上因数分解できないことを示せ。
アイゼンシュタインの判定で考えます。pが素数じゃないといけないのでp=6とかで考えてはいけません。係数から考えるとp=3で考えるのがよさそうです。
答えp=3として例題2の結果を使うと
因数分解したときに3次式以上が現れる。よって(2次式)×(2次式)には因数分解できない。
(3次式)×(1次式)に分解できるとすると
f(1),f(2),f(3),f(4),f(6),f(12),f(-1),f(-2),f(-3),f(-4),f(-6),f(-12)のいずれかが0になる。
各項は正だからf(1),f(2),f(3),f(4),f(6),f(12)はすべて正となるので0にはならない。
ここで\( f(x)=x(x+2)(x^2+3)+12 \)なので
x≦-2ではf(x)>0である。
f(-1)=1-2+3-6+12=8≠0
よって(1次式)でも因数分解できない。以上より題意は満たされた。
因数分解したときに3次式以上が現れる。よって(2次式)×(2次式)には因数分解できない。
(3次式)×(1次式)に分解できるとすると
f(1),f(2),f(3),f(4),f(6),f(12),f(-1),f(-2),f(-3),f(-4),f(-6),f(-12)のいずれかが0になる。
各項は正だからf(1),f(2),f(3),f(4),f(6),f(12)はすべて正となるので0にはならない。
ここで\( f(x)=x(x+2)(x^2+3)+12 \)なので
x≦-2ではf(x)>0である。
f(-1)=1-2+3-6+12=8≠0
よって(1次式)でも因数分解できない。以上より題意は満たされた。
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例題4(大学で習います)
pを素数とする。xp-1を因数分解せよ。ただし2次以上の因数が残る場合,それ以上因数分解できないことも示せ。
答えまずx=1を代入すれば0になるので
(x-1)(xp-1+xp-2+・・・+x+1)
と因数分解できる。
右側の因数がこれ以上分解できないことを示す。
f(x)=xp-1+xp-2+・・・+x+1とする。
f(x)が因数分解できることとf(x+1)が因数分解できることは同値なので
f(x+1)を計算すると(等比数列の和の公式も用いて)
\[ f(x+1)=\frac{(x+1)^p-1}{(x+1)-1}= x^{p-1} + {}_p C_1 x^{p-2} + {}_p C_2 x^{p-3}+\cdots + {}_p C_{p-2} x + {}_p C_{p-1} \]
ここで\( {}_pC_1 , {}_p C_2 ,\cdots , {}_p C_{p-1} \)はpの倍数であり,定数項はp2の倍数ではないから例題2の判定法より因数分解すると(p-1)次以上の式が残る。
f(x)がもともと(p-1)次式だから,f(x)はこれ以上因数分解できない。
よって求める因数分解は
\[ x^p-1=(x-1)(x^{p-1}+x^{p-2}+\cdots +x+1) \]
(x-1)(xp-1+xp-2+・・・+x+1)
と因数分解できる。
右側の因数がこれ以上分解できないことを示す。
f(x)=xp-1+xp-2+・・・+x+1とする。
f(x)が因数分解できることとf(x+1)が因数分解できることは同値なので
f(x+1)を計算すると(等比数列の和の公式も用いて)
\[ f(x+1)=\frac{(x+1)^p-1}{(x+1)-1}= x^{p-1} + {}_p C_1 x^{p-2} + {}_p C_2 x^{p-3}+\cdots + {}_p C_{p-2} x + {}_p C_{p-1} \]
ここで\( {}_pC_1 , {}_p C_2 ,\cdots , {}_p C_{p-1} \)はpの倍数であり,定数項はp2の倍数ではないから例題2の判定法より因数分解すると(p-1)次以上の式が残る。
f(x)がもともと(p-1)次式だから,f(x)はこれ以上因数分解できない。
よって求める因数分解は
\[ x^p-1=(x-1)(x^{p-1}+x^{p-2}+\cdots +x+1) \]
私は最後の例題4は大学3年生で習いました。一般入試を受ける高校生にはかなり難易度は高いと思います。
なお例題4の最後に使ったpCk(k=1,2,・・・,p-1)がpの倍数であることの証明はこちらで確認できます。
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