上野竜生です。偶関数と奇関数の定積分は簡単に計算できるものもあります。それを紹介します。
偶関数・奇関数とは
偶関数とはf(-x)=f(x)が成り立つものです。y軸について対称となります。
奇関数とはf(-x)=-f(x)が成り立つものです。原点について対称となります。
多項式だけに限定すれば(n≧0)
f(x)=xnが偶関数 ⇔ nが偶数
f(x)=xnが奇関数 ⇔ nが奇数
となります。
偶関数・奇関数の定積分
積分区間が-aからaまでという風に対称でないと次の公式は使えません。
\(\displaystyle \int_{-a}^a f(x) dx = 0 \) (f(x)が奇関数)
\(\displaystyle \int_{-a}^a f(x) dx =2 \int_0^a f(x) dx \) (f(x)が偶関数)
いずれも対称性とグラフを書けば明らかだと思います。一応証明します。一般には数IIIの知識が必要なので数IIIを勉強しない人は適当に対称なグラフを書いてなんとなくあってそう・・・ぐらいでいいです。
[証明] 数IIIレベル(一般の場合)
奇関数のとき
\(\displaystyle \int_{-a}^a f(x)dx \\
=\displaystyle \int_{-a}^0 f(x) dx + \int_0^{a} f(x) dx\\
=\displaystyle -\int_0^{-a} f(x) dx + \int_0^a f(x) dx \)
ここで1つめの積分に対しt=-xと置換すると
\( \displaystyle -\int_0^a f(-t) (-dt) + \int_0^a f(x) dx \) 」
ここでf(x)は奇関数だから-f(-t)=f(t)なので
\( \displaystyle -\int_0^a f(t)dt + \int_0^a f(x) dx = 0 \)
偶関数のとき
」までは奇関数と同じ。
ここでf(x)は偶関数だからf(-t)=f(t)なので
\( \displaystyle \int_0^a f(t)dt + \int_0^a f(x) dx = 2\int_0^a f(x) dx \)
Q.E.D.
ちなみに数IIまでの人は置換積分ができませんがその代わり扱う積分がそもそも多項式だけなので多項式に限定して証明できます。
[証明] 数IIレベル 多項式の場合
f(x)=xnのときだけ示せばあとは足したり定数倍しても同様に示せる。
奇関数のとき(つまりnが奇数のとき)
\( \displaystyle \int_{-a}^a x^n dx = \left[\frac{1}{n+1}x^{n+1} \right]_{-a}^a=\frac{a^{n+1}-(-a)^{n+1}}{n+1} \) 」
nが奇数ならばan+1=(-a)n+1なのでこの値は0
偶関数のとき(つまりnが偶数のとき)
」までは同じ。nが偶数ならばan+1=-(-a)n+1なのでこの値は
\(\displaystyle \frac{2a^{n+1}}{n+1}\)
一方右辺を計算すると
\( \displaystyle 2\int_0^a x^n dx =2\left[\frac{1}{n+1}x^{n+1} \right]_0^a=\frac{2a^{n+1}}{n+1}\)
となり両辺は等しい。Q.E.D.
具体的な例題で慣れよう
(1) \(\displaystyle \int_{-2}^2 \left( x^5 -7x^3+ 3x^2+9x-5 \right)dx \)
(2) \(\displaystyle \int_{-5}^5 x(x^2+1)(x^4+x^2+1) dx \)
今回はこれ単独の計算を問題にしているので丁寧に答えます。慣れれば下のほうの答えでも十分です。
答え(1) x5,-7x3,9xは奇関数だから-2から2で積分するとその値は0。
よって\(\displaystyle \int_{-2}^2 \left( x^5 -7x^3+ 3x^2+9x-5 \right)dx = \int_{-2}^2 (3x^2-5)dx \)
3x2 , -5は偶関数だから
\(\displaystyle \int_{-2}^2 (3x^2-5)dx = 2\int_0^2 (3x^2-5) dx=2\left[x^3-5x\right]_0^2=2\cdot (-2)=-4 \)
実際はこんな単純な計算問題を記述式にはしないと思います。答えのみであったり,別の問題を解いてる途中にこの計算が出た場合などは,その部分を問われてるとは考えにくいので次のように省略しても問題ないでしょう。
答え(簡易版)\(\displaystyle \int_{-2}^2 \left( x^5 -7x^3+ 3x^2+9x-5 \right)dx = 2\int_0^2 (3x^2-5)dx\\ \displaystyle =2\left[x^3-5x\right]_0^2=2\cdot (-2)=-4 \)
(2) 展開して計算してもOKですが・・・次のように答えると楽です。
答えxは奇関数,x2+1やx4+x2+1は偶関数なので
奇関数×偶関数×偶関数=奇関数
よって被積分関数は奇関数だから求める値は0
多項式の場合指数法則よりxn・xm=xn+mなので
偶関数×偶関数=偶関数 ⇔ nが偶数,mが偶数ならn+mは偶数
偶関数×奇関数=奇関数 ⇔ n:偶数+m:奇数=n+m:奇数
奇関数×奇関数=偶関数 ⇔ 奇数+奇数=偶数
と対応します。一般の関数でもこれらの結果(⇔記号より左にある3つの結果)は成り立ちます。
対称性を利用すると計算量が減らせる例の1つです。受験生は計算ミスが命取りなのでしっかり練習しましょう。
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