上野竜生です。直交行列など特殊な行列の対角化を扱います。

実対称行列の対角化

<復習>対称行列とはAt=Aを満たす正方行列のこと。特にAの成分が実数ならば実対称行列という。

POINT実対称行列は次の性質が成り立つ
①固有値はすべて実数
②異なる固有値に対する固有ベクトルは互いに直交する
直交行列Pを用いてP-1APが対角行列になるように対角化できる。
ただし直交行列PとはPP-1=Eを満たす行列のこと。

具体的にPを求めるとき異なる固有値に対する固有ベクトルは性質②より必ず直交するのですが同じ固有値に対する固有ベクトルが複数出てきた場合はグラムシュミットの直交化法を用いて固有ベクトルを無理やり直交させればOKです。

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正規行列

A*を次のように定義する
A*はAの転置行列の各成分を共役な複素数に変えたもの。
AA*=A*Aが成り立つときAを正規行列という。

A=A*を満たす行列をエルミート行列という。エルミート行列は正規行列である。
AA*=A*A=Eを満たす行列をユニタリー行列という。もちろんユニタリー行列は正規行列である。

POINT次の性質が成り立つ。
①ユニタリー行列の固有値の絶対値は1である。
②Aが正規行列ならばAの異なる固有値に対する固有ベクトルは直交する。
正規行列Aはユニタリー行列Pを用いてP-1APが対角行列になるように対角化できる。
④逆に正方行列Aがユニタリー行列Pで対角化できるならばAは正規行列である。

注:②において複素数ベクトルの内積は次のように定義される。
\( \boldsymbol{x} \cdot \boldsymbol{y} = x_1 \bar{y_1} + x_2 \bar{y_2} + \cdots + x_n \bar{y_n} \)

例題1

実対称行列
\(A= \begin{pmatrix} 1 & 1 & 1 \\ 1 & 1 & -1 \\ 1& -1 & 1 \end{pmatrix} \)
を直交行列Pを用いて対角化せよ。
答え固有値を求める。固有多項式は
\( \det{(xE-A)} = \det{} \begin{pmatrix} x-1 & -1 & -1 \\ -1 & x-1 & 1 \\ -1 & 1 & x-1 \end{pmatrix} \\ = x^3-3x^2+3x-1+1+1-(x-1)-(x-1)-(x-1) \\ = x^3-3x^2+4 \\ = (x+1)(x-2)^2 \)
となるので固有値は-1と2。
固有値-1に対する固有ベクトルを求める。
\( A-(-1)E=A+E \\ =\begin{pmatrix} 2 & 1 & 1 \\ 1 & 2 & -1 \\ 1 & -1 & 2 \end{pmatrix} \\ \to \begin{pmatrix} 1 & \frac12 & \frac12 \\ 0 & \frac32 & -\frac32 \\ 0 & -\frac32 & \frac32 \end{pmatrix} \\ \to \begin{pmatrix} 1 & \frac12 & \frac12 \\ 0 & 1 & -1 \\ 0 & 0 & 0 \end{pmatrix} \\ \to \begin{pmatrix} 1 & 0 & 1 \\ 0 & 1 & -1 \\0 & 0 & 0 \end{pmatrix} \)
より 固有ベクトルは
\( \begin{pmatrix} 1 \\ -1 \\ -1 \end{pmatrix} \)
固有値2に対する固有ベクトルを求める。
\( A-2E = \begin{pmatrix} -1 & 1 & 1 \\ 1 & -1 & -1 \\ 1 & -1 & -1 \end{pmatrix} \\ \to \begin{pmatrix} 1 & -1 & -1 \\ 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 \end{pmatrix} \)
固有ベクトルを
\(\boldsymbol{x}=\begin{pmatrix} a \\ b \\c \end{pmatrix} \)とおくと
\( A\boldsymbol{x}=2\boldsymbol{x} \)つまり\( (A-2E)\boldsymbol{x} =\boldsymbol{0} \)なので
a-b-c=0 ∴a=b+c
よって固有ベクトルは
\( \begin{pmatrix} b+c \\ b \\ c \end{pmatrix} = b \begin{pmatrix} 1 \\ 1 \\ 0 \end{pmatrix} + c \begin{pmatrix} 1 \\ 0 \\ 1 \end{pmatrix} \)
直交行列で対角化したいので固有ベクトルを正規直交化する。
固有値-1に対する固有ベクトルを正規直交化する
\( \frac{1}{\sqrt{3}} \begin{pmatrix} 1 \\ -1 \\ -1 \end{pmatrix} \)
固有値2に対する固有ベクトルをシュミットの直交化で正規直交化する。
\( \boldsymbol{a_1}= \begin{pmatrix} 1 \\ 1 \\ 0 \end{pmatrix} , \boldsymbol{a_2}=\begin{pmatrix} 1 \\ 0 \\ 1 \end{pmatrix} \)とおく。
\( \boldsymbol{u_1}=\frac{1}{\sqrt{2}} \begin{pmatrix} 1 \\ 1 \\ 0 \end{pmatrix} \)
\( \boldsymbol{u_2}=\boldsymbol{a_2} – \{ \boldsymbol{u_1} \cdot \boldsymbol{a_2} \} \boldsymbol{u_1} \\ =\begin{pmatrix} 1 \\ 0 \\1 \end{pmatrix}-\left\{ \frac{1}{\sqrt{2}}\begin{pmatrix} 1 \\ 1 \\0 \end{pmatrix} \cdot \begin{pmatrix} 1 \\ 0 \\1 \end{pmatrix} \right\} \frac{1}{\sqrt{2}} \begin{pmatrix} 1 \\ 1 \\0 \end{pmatrix} \\ =\begin{pmatrix} 1 \\ 0 \\1 \end{pmatrix}-\frac{1}{2}\begin{pmatrix} 1 \\ 1 \\0 \end{pmatrix} \\ = \frac{1}{2}\begin{pmatrix} 1 \\ -1 \\2 \end{pmatrix} \)
正規化すると
\( \displaystyle \frac{1}{\sqrt{6}} \begin{pmatrix} 1 \\ -1 \\2 \end{pmatrix}\)
以上より
\( P=\begin{pmatrix} \frac{1}{\sqrt{2}} & \frac{1}{\sqrt{6}} & \frac{1}{\sqrt{3}} \\ \frac{1}{\sqrt{2}} & -\frac{1}{\sqrt{6}} & -\frac{1}{\sqrt{3}} \\ 0 & \frac{2}{\sqrt{6}} & -\frac{1}{\sqrt{3}} \end{pmatrix} \)
とすると
\( P^{-1}AP=\begin{pmatrix} 2& 0 & 0 \\ 0 & 2 & 0 \\ 0 & 0 & -1 \end{pmatrix} \)
となる。
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例題2

\( A= \begin{pmatrix} -1-4i & -2i \\ 2i & -1-4i \end{pmatrix} \)を考える
(1)Aはエルミート行列であるか?また正規行列であるか?
(2)Aをユニタリー行列Pを用いて直交化せよ。
答え(1)\( A= \begin{pmatrix} -1-4i & -2i \\ 2i & -1-4i \end{pmatrix} \)
\(A^* =\begin{pmatrix} -1+4i & -2i \\ 2i & -1+4i \end{pmatrix} \)
A≠A*なのでエルミート行列ではない。
\( AA^* =\begin{pmatrix} -1-4i & -2i \\ 2i & -1-4i \end{pmatrix} \begin{pmatrix} -1+4i & -2i \\ 2i & -1+4i \end{pmatrix} =\begin{pmatrix} 21 & 4i \\ -4i & 21 \end{pmatrix} \)
\( A^* A =\begin{pmatrix} -1+4i & -2i \\ 2i & -1+4i \end{pmatrix} \begin{pmatrix} -1-4i & -2i \\ 2i & -1-4i \end{pmatrix} =\begin{pmatrix} 21 & 4i \\ -4i & 21 \end{pmatrix} \)
\( AA^* = A^* A \)よりAは正規行列である。(2)
固有多項式は
\( \det{(xE-A)} = \det{} \begin{pmatrix} x+1+4i & 2i \\ -2i & x+1+4i \end{pmatrix} \\ = (x+1+4i)^2-2i(-2i) \\ = x^2+(2+8i)x-15+8i-4 \\ = x^2+(2+8i)x +(8i-19) \)
固有値を求めると
\( x=-1-4i \pm \sqrt{(1+4i)^2-(8i-19)} \\ = -1-4i \pm \sqrt{4} \)
となり固有値は\( 1-4i,-3-4i \)
固有値1-4iに対する固有ベクトルを求める。
\( A-(1-4i)E= \begin{pmatrix} -2 & -2i \\ 2i & -2 \end{pmatrix} \\ \to \begin{pmatrix} 1 & i \\ 0 & 0 \end{pmatrix} \)
より固有値は\( \begin{pmatrix} -i \\ 1 \end{pmatrix} \)
正規化すると
\(\displaystyle \frac{1}{\sqrt{2}} \begin{pmatrix} -i \\ 1 \end{pmatrix} \)
固有値-3-4iに対する固有ベクトルを求める。
\( A-(-3-4i)E= \begin{pmatrix} 2 & -2i \\ 2i & 2 \end{pmatrix} \\ \to \begin{pmatrix} 1 & -i \\ 0 & 0 \end{pmatrix} \)
より固有値は\( \begin{pmatrix} i \\ 1 \end{pmatrix} \)
正規化すると
\(\displaystyle \frac{1}{\sqrt{2}} \begin{pmatrix} i \\ 1 \end{pmatrix} \)よって\( P= \frac{1}{\sqrt{2}} \begin{pmatrix} -i & i \\ 1 & 1 \end{pmatrix} \)
で\( P^{-1}AP=\begin{pmatrix} 1-4i & 0 \\ 0 & -3-4i \end{pmatrix} \)

例題3

正方行列Aが直交行列Pで対角化可能ならばAは対称行列であることを証明せよ。
答えPは\( P^t P=E \)を満たすので\( P^{-1}AP=D \)・・・①(Dは対角行列)となれば
\( A=PDP^{-1} \)・・・②
①に転置をとる
\( (P^{-1}AP)^t=P^t A^t (P^{-1})^t =D^t =D \)
\( P^t P=E \)より\( P^t =P^{-1} , (P^t)^t = P=(P^{-1})^t \)を使うと
\( P^{-1}A^t P=D \)
よって\( A^t = PDP^{-1} \)・・・③
②③より\( A=A^t \)
よってAは対称行列である。

例題4 難

エルミート行列の固有値は実数であることを証明せよ。
答え\( A\boldsymbol{x}=\lambda \boldsymbol{x} \)より
\( \boldsymbol{x^*} A \boldsymbol{x} = \boldsymbol{x^*} \lambda \boldsymbol{x} = \lambda \boldsymbol{x^*} \boldsymbol{x} \)・・・①
\( A=A^* \)より
\( \boldsymbol{x^*} A \boldsymbol{x} = \boldsymbol{x^* } A^* \boldsymbol{x} = (A\boldsymbol{x})^* \boldsymbol{x} = (\lambda \boldsymbol{x})^* \boldsymbol{x}= \bar{\lambda} \boldsymbol{x^*}\boldsymbol{x} \)・・・②
①②より\( \lambda \boldsymbol{x^*} \boldsymbol{x} = \bar{\lambda} \boldsymbol{x^*} \boldsymbol{x} \)で\( \boldsymbol{x} \neq \boldsymbol{0} \)より\( \boldsymbol{x^* } \boldsymbol{x} >0\)だから\( \lambda=\bar{\lambda} \)
∴λは実数。

\( (A\boldsymbol{x})^*\\ =( \bar{A} \bar{\boldsymbol{x}} )^t = (\bar{\boldsymbol{x}})^t (\bar{A})^t \\ = \boldsymbol{x}^* A^* \)

普通の大学生なら例題2・1(シュミットの直交化の部分を除く)をマスターしておき,余裕があるor試験で証明問題が出るならシュミットの直交化も含んだ対策と例題3ぐらいまで理解したいところです。例題4は数学科などハイレベルな学生用といってもいいでしょう。

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