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上野竜生です。今回は行列の和と差とスカラー倍,行列同士の積の計算をできるようにします。前半は教えなくてもわかるぐらい簡単ですが,積は少し複雑です。

今回の動画


今回の範囲は動画にしてあります。必要に応じて利用してください。

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行列とは

数字を長方形上に並べたものを行列という。i行j列目の成分を(i,j)成分という。
例:(i,j)成分が\(a_{i,j} \)であるm×n行列(=m行n列の行列)は
\[ \left(
\begin{array}{ccc}
a_{1,1} & a_{1,2} & \cdots & a_{1,n} \\
a_{2,1} & a_{2,2} & \cdots & a_{2,n} \\ \vdots & \vdots & \ddots &\vdots  \\
a_{m,1} & a_{m,2} & \cdots & a_{m,n}
\end{array}
\right) \]

特にm=nのとき(n次)正方行列という。
行列AとBが等しいとはA,Bのサイズ(行数・列数)が一致していて,かつそのすべての成分が等しいことをいう。
すべての成分が0である行列を零行列といい,Oで表すことが多い。
また対角成分(=(i,i)成分のこと)がすべて1でそれ以外が0である行列を単位行列という。

和・差・スカラー倍

これは単純です。それぞれの成分を足したり引いたりスカラー倍するだけです。スカラーとはベクトルや行列じゃない普通の数のことだと思ってください。厳密な定義式を書くより具体例で見る方が速いでしょう。
なお,サイズが一致しない行列の和・差は定義できません。

例題1

\(A=\left( \begin{array}{ccc} 1 & 2 & 3 \\ 4 & 5 & 6 \end{array} \right), B=\left( \begin{array}{ccc} 1 & 3 & 5 \\ 2 & 4 & 6 \end{array} \right) , C=\left( \begin{array}{ccc} 1 & 2 \\ 3 & 4 \\ 5 & 6 \end{array} \right) \)

とする。次の計算は定義できるか?定義できるときは計算せよ。
(1)A+B (2)A-B (3)A+C (4)2A (5)-A+3B

足し算や引き算・スカラー倍は行数・列数が一致していれば定義出来てそれぞれの成分を普通に足し引き・スカラー倍するだけですから簡単です。(4)までは結果のみ書きます。

答え(1)\(A+B=\left( \begin{array}{ccc} 2 & 5 & 8 \\ 6 & 9 & 12 \end{array} \right)\)
(2)\(A-B=\left( \begin{array}{ccc} 0 & -1 & -2 \\ 2 & 1 & 0 \end{array} \right)\)
(3)定義できない
(4)\(2A=\left( \begin{array}{ccc} 2 & 4 & 6 \\ 8 & 10 & 12 \end{array} \right)\)
(5)

\(-A+3B=\left( \begin{array}{ccc} -1+3\cdot 1 & -2+3\cdot 3 & -3+3\cdot 5 \\ -4+3\cdot 2 & -5+3\cdot 4 & -6+3\cdot 6 \end{array}\right)=\left( \begin{array}{ccc} 2 & 7 & 12 \\ 2 & 7 & 12 \end{array} \right)\)
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行列の積

これは少し複雑です。一般の場合で書くともっと複雑なので具体的な行列で説明します。

2次正方行列同士の積

\(\left( \begin{array}{ccc} a_{11} & a_{12} \\ a_{21} & a_{22} \end{array} \right) \left( \begin{array}{ccc} b_{11} & b_{12} \\ b_{21} & b_{22} \end{array} \right) \\ = \left( \begin{array}{ccc} a_{11}b_{11}+a_{12}b_{21} & a_{11}b_{12}+a_{12}b_{22} \\ a_{21}b_{11}+a_{22}b_{21} & a_{21}b_{12}+a_{22}b_{22} \end{array} \right)\)
丸暗記しようとすると大変です。実際計算するときは下の図のように行列を右上に書いて計算すると覚えやすいです。

行列計算

3×3でも4×4でも同様になります。
たとえば2×3行列Aに対してA2を計算するとどうなるでしょうか

積が定義できない例

このように数が合わなくなります。このような場合は積が定義できません。

よってm1×n1行列Aとm2×n2行列Bに対してABが定義できる条件はn1=m2となり,計算結果のABはm1×n2行列になります。
先ほどと違いm1=m2やn1=n2でなくても構いません。

例題2

例題1と同じ行列A,B,Cに対して次の計算をせよ。

\(A=\left( \begin{array}{ccc} 1 & 2 & 3 \\ 4 & 5 & 6 \end{array} \right), B=\left( \begin{array}{ccc} 1 & 3 & 5 \\ 2 & 4 & 6 \end{array} \right) , C=\left( \begin{array}{ccc} 1 & 2 \\ 3 & 4 \\ 5 & 6 \end{array} \right) \)

とする。次の計算は定義できるか?定義できるときは計算せよ。
(1)AB (2)AC (3)CA (4)A2

答え(1)(4)は上の例と同じサイズなので定義できない
(2)(3)は下の通り。
答え

例題3

\(A=\left( \begin{array}{ccc} 1 & 2 \\ 0 & 0 \end{array} \right),B=\left( \begin{array}{ccc} 0 & 1 \\ 0 & 2 \end{array} \right) \)とする。
(1)ABを計算せよ。
(2)AB=BAが成り立つか?
(3)一般に「AB=OならばA=OまたはB=O」は成り立つか?

計算用紙に自分で計算するときは行列を斜め右上に書くやり方がやりやすいですが今後授業などで教科書や他人の板書を読むときはいちいち斜めには書いてくれません。まっすぐに書かれても読めるように訓練しましょう。頭の中で斜め右上に書いてあるイメージをします。

答え(1)\(AB=\left( \begin{array}{ccc} 1 & 2 \\ 0 & 0 \end{array} \right) \left( \begin{array}{ccc} 0 & 1 \\ 0 & 2 \end{array} \right) =\left( \begin{array}{ccc} 0 & 5 \\ 0 & 0 \end{array} \right) \)
(2)\(BA=\left( \begin{array}{ccc} 0 & 1 \\ 0 & 2 \end{array} \right) \left( \begin{array}{ccc} 1 & 2 \\ 0 & 0 \end{array} \right) =\left( \begin{array}{ccc} 0 & 0 \\ 0 & 0 \end{array} \right) \)
となるのでAB≠BA
AB=BAは成り立たない
(3)B≠O,A≠OだがBA=Oとなっているので成り立たない。
ポイント
・一般にAB=BAとは限らない。AB=BAのときももちろんある。
・A≠O,B≠OでもAB=Oとなることがある。

例題4

\( A=\left( \begin{array}{cccc} 0 & 1 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 1 \\ 0 & 0 & 0 & 0 \end{array} \right) \)とする。
(1)A2,A3,A4を計算せよ。
(2)n≧5に対しAnを計算せよ。

答え(1)

\( A^2=\left( \begin{array}{cccc} 0 & 1 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 1 \\ 0 & 0 & 0 & 0 \end{array} \right)\left( \begin{array}{cccc} 0 & 1 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 1 \\ 0 & 0 & 0 & 0 \end{array} \right)=\left( \begin{array}{cccc} 0 & 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 1 \\ 0 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 0 \end{array} \right) \)
\( A^3=\left( \begin{array}{cccc} 0 & 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 1 \\ 0 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 0 \end{array} \right)\left( \begin{array}{cccc} 0 & 1 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 1 \\ 0 & 0 & 0 & 0 \end{array} \right)=\left( \begin{array}{cccc} 0 & 0 & 0 & 1 \\ 0 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 0 \end{array} \right) \)
\( A^4=\left( \begin{array}{cccc} 0 & 0 & 0 & 1 \\ 0 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 0 \end{array} \right)\left( \begin{array}{cccc} 0 & 1 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 1 \\ 0 & 0 & 0 & 0 \end{array} \right)=\left( \begin{array}{cccc} 0 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 0 \end{array} \right) \)

(2) \( A^4=O \)である。AO=Oなのでn≧5はすべて\( A^n=O \)

A3=AAA=A2A=AA2なのでAとA2の順番はどちらでも構いません。

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