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上野竜生です。今回は広義積分の一様収束と順序交換を学びます。「順序交換をしていいか確認」「順序交換していいことは認めたうえで結論を導く」の2つの難所がありますがどちらもなかなか手強く,かなり難しいです。

今回の議論では領域DとかけばD=[a,∞)×[α,β]とします。

一様収束

f(x,t)を領域D=[a,∞)×[α,β]上の関数とする。任意のε>0に対してあるM>0が存在して
b≧M , α≦t≦β ならば
\(\displaystyle \left| \int_a^{\infty} f(x,t)dx- \int_a^b f(x,t)dx \right| < \epsilon \)
が成り立つとき広義積分\(\displaystyle \int_a^{\infty} f(x,t)dx \)はtについて一様収束するという。

定義に従って一様収束するかを確認するのは面倒なことが多いので十分条件を覚えておきましょう。

一様収束するための十分条件

f(x,t)を領域D上の関数とする。
D上で|f(x,t)|≦g(x)が成り立ち,かつ\(\displaystyle \int_a^{\infty} g(x)dx \)が収束するような関数g(x)が存在するなら,広義積分\(\displaystyle \int_a^{\infty} f(x,t) dx \)はtについて一様収束する。このようなg(x)は優関数という。

定理

・f(x,t)がD上で連続であるとする。このとき広義積分\(\displaystyle F(t)=\int_a^{\infty} f(x,t) dx \)がtについて一様収束するならば...
① F(t)は連続関数である。
② F(t)はα≦t≦β上で積分可能であり
\(\displaystyle \int_{\alpha}^{\beta} \int_a^{\infty} f(x,t) dx dt = \int_{a}^{\infty} \int_{\alpha}^{\beta} f(x,t)dt dx \)
が成り立つ。

・f(x,t)はD上で連続で偏導関数\( f_t (x,t) \)もD上で連続可能であるとする。このとき広義積分\(\displaystyle \int_a^{\infty} f_t (x,t) dx \)がtについて一様収束するならば,
\(\displaystyle F(t)=\int_a^{\infty} f(x,t) dx \)は[α,β]上で微分可能で
\(\displaystyle F’(t)=\int_a^{\infty} f_t (x,t) dx \)が成り立つ。

つまり,うまい優関数を見つけてきて一様収束が言えたら広義積分の順序交換や微分との順序交換をしていいということですね。

1年生の授業ではここまで意識して定期試験対策をすることは少ないですが院試験などの対策をするときにいつの間にか習っていた扱いになって焦る分野でもあります。とりあえずここまでの内容をしっかり頭に入れれば,一見複雑な応用問題も手が出せるようになります。それでは少し難しい応用問題を解いてみましょう。

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例題1

a>0を定数とする。次の値を求めよ
\(\displaystyle I=\int_0^1 \frac{x^a-1}{\log{x}}dx \)
答え\(\displaystyle \frac{x^a-1}{\log{x}} = \int_0^a x^t dt \)
なので
\(\displaystyle I=\int_0^1 \int_0^a x^t dt dx \)
積分領域の範囲で\(\displaystyle  |x^t|\leq 1 , \int_0^1 1 dx =1<\infty \)より一様収束。\( x^t \)は[0,1]×[0,a]で連続だから
\(\displaystyle I=\int_0^1 \int_0^a x^t dt dx = \int_0^a \int_0^1 x^t dx dt \\ = \displaystyle \int_0^a \left[ \frac{x^{t+1}}{t+1} \right]_{x=0}^{x=1} dt = \int_0^a \frac{1}{t+1}dt= \log{(a+1)} \)

イメージとしては\(\int_0^a \int_0^1 x^t dx dt \)を計算するのにx→tの順に計算すれば最後まで答えがたどり着き,t→xの順に計算すればtは計算できるけどxで行き詰まるタイプの積分です。問題ではあらかじめtだけ積分して行き詰まった形からスタートしているのでまず1度重積分に戻してあげて順序交換して解きなおす感じです。かなり難しいですね。

例題2

\( \displaystyle F(t)=\int_0^1 \frac{\log{(1+tx)}}{1+x^2} dx \)(t>0)とする。
(1)F’(t)を積分を用いないtの式で表せ。
(2)\(\displaystyle J=\int_0^1 \frac{\log{(1+x)}}{1+x^2}dx \)を求めよ。

\( \displaystyle f(x,t)=\frac{\log{(1+tx)}}{1+x^2} \)とおく。
\(\displaystyle F(t)=\int_0^1 f(x,t)dx \)なので\(\displaystyle F’(t)=\int_0^1 f_t (x,t) dx \)と言えれば楽である。ただしこれは微分と積分の順序交換をしているのでこれをしたければうまい優関数g(x)を見つける必要がある。つまり
\( |f_t (x,t)|\leq g(x) \)かつ\( \displaystyle \int_0^1 g(x) dx \)が収束するようなg(x)を見つけて示す必要があります。それが言えれば順序交換するだけですが積分も意外と厄介です。

答え(1)\( \displaystyle f(x,t)=\frac{\log{(1+tx)}}{1+x^2} \)とおくと
\(\displaystyle f_t(x,t)=\frac{x}{(1+x^2)(1+tx)} \)
t>0,x>0では\(\displaystyle |f_t(x,t)| \leq \frac{x}{1+x^2} \)であり
\(\displaystyle \int_0^1 \frac{x}{1+x^2} dx = \left[\frac{1}{2} \log{(1+x^2)} \right]_0^1 =\frac{1}{2} \log{2} <\infty \)より収束するので微分と積分が順序交換できる。
順序交換すると
\(\displaystyle F’(t)=\int_0^1 \frac{x}{(1+x^2)(1+tx)} dx \)
被積分関数を部分分数分解すると
\(\displaystyle \frac{x}{(1+x^2)(1+tx)} = \frac{ax+b}{1+x^2} + \frac{c}{1+tx} \)とおける。
分母を払うと
\( (ax+b)(1+tx)+c+cx^2 =x \)
これがxについての恒等式だから係数に着目して
at+c=0 , a+bt=1 , b+c=0
これを解くと
\(\displaystyle a=\frac{1}{1+t^2}, b=\frac{t}{1+t^2} , c=-\frac{t}{1+t^2} \)
よって積分を計算すると
\(\displaystyle \int_0^1 \frac{ax}{1+x^2}+\frac{b}{1+x^2} + \frac{c}{1+tx} dx \\ = \displaystyle \left[ \frac{a}{2}\log{(1+x^2)} \right]_0^1 + b\cdot \frac{\pi}{4} + \left[\frac{c}{t}\log{(1+tx)} \right]_0^1 \\ =\displaystyle \frac{\log{2}}{2(1+t^2)} + \frac{\pi t}{4(1+t^2)} - \frac{\log{(1+t)}}{1+t^2} \)
(2) (1)の結果を0から1まで積分すると
\(\displaystyle \int_0^1 F’(t)dt = \int_0^1 \frac{\log{2}}{2(1+t^2)} + \frac{\pi t}{4(1+t^2)} - \frac{\log{(1+t)}}{1+t^2} dt \)
計算すると
\(\displaystyle F(1)-F(0)=\frac{\log{2}}{2} \cdot \frac{\pi}{4} + \left[\frac{\pi}{8} \log{(1+t^2)} \right]_0^1 - \int_0^1 \frac{\log{(1+t)}}{1+t^2} dt \)
\(\displaystyle J-0=\frac{\pi \log{2}}{8} + \frac{\pi \log{2}}{8} - J \)
∴\(\displaystyle J=\frac{\pi \log{2}}{8} \)

大学1年生の微分積分の最終段階の応用問題だけあってかなり難しかったと思います。ここまでできれば1年生の微分積分は完了したといっていいでしょう。

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