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上野竜生です。今回はベクトル空間の部分集合が部分空間かどうかの判定を中心に扱います。

 

部分空間とは?

ベクトル空間(たとえば\( \mathbb{R}^3=\{ (x,y,z) | x\in \mathbb{R} , y\in \mathbb{R} , z \in \mathbb{R} \} \)など)の部分集合Mをとってくる。この集合Mが部分空間であるとは次の2条件を満たすことです。

i) Mの元(要素)をどのように2つu,vととってきてもその和u+vがまたMに属する。
ii) Mの元uをどのようにとってきてもそのスカラーk倍kuがまたMに属する。

つまりi) ii)の少なくとも一方を満たさなければ部分空間ではありません。Mに属するという書き方がまだ抽象的かもしれませんがより具体的に言えばM={(x,y,z)| (x,y,zに関する条件式(★))}と与えられたとき,「(★)を満たすもののどうしの和とスカラー倍もまた(★)を満たすか?」ということを問われているのです。抽象的な表現なので練習しないと手が付けられず白紙になりますが(実際私も最初は不合格でした),理解してしまえばそれほど抽象的ではないと思います。

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例題1

\( \mathbb{R}^2 \)の部分集合\( M_1, M_2\)を

\( M_1 =\left\{ \left( \begin{array}{c} x \\ y \end{array} \right) \in \mathbb{R}^2 | x=0 \right\} , M_2= \left\{ \left( \begin{array}{c} x \\ y \end{array} \right) \in \mathbb{R}^2 | y=0 \right\} \)

とする。
(1)\(M_1\)は\(\mathbb{R}^2 \)の部分空間であることを示せ。
同様にすれば\(M_2 \)も\(\mathbb{R}^2 \)の部分空間である。
(2)\(M_1\cap M_2 \)は\(\mathbb{R}^2 \)の部分空間であることを示せ。
(3)\(M_1 \cup M_2 \)は\(\mathbb{R}^2 \)の部分空間ではないことを示せ。

例題1は部分空間かそうでないかの結果を与えているので証明を探すか反例を探すかがハッキリしているものです。どれも基本的なのでここで証明方法を確認しておきましょう。

答え(1)M1の要素は\(\left( \begin{array}{c} 0 \\ y \end{array} \right) \)とかけるからM1から2つの要素\( \boldsymbol{u}=\left( \begin{array}{c} 0 \\ a \end{array} \right) , \boldsymbol{v}= \left( \begin{array}{c} 0 \\ b \end{array} \right) \)を取ってくる。
\( \boldsymbol{u}+\boldsymbol{v} \in M_1 , k\boldsymbol{u} \in M_1 \)を示せばよい。

\(\boldsymbol{u}+\boldsymbol{v}=\left( \begin{array}{c} 0 \\ a+b \end{array} \right) , k\boldsymbol{u}=\left( \begin{array}{c} 0 \\ ka \end{array} \right)\)

でどちらもx成分が0だから\(M_1 \)に属する。よって\(M_1 \)は\(\mathbb{R}^2 \)の部分空間である。
(2)\( M_1 \cap M_2 \)の要素は\( \left( \begin{array}{c} 0 \\ 0 \end{array} \right)\)のみである。

\( \left( \begin{array}{c} 0 \\ 0 \end{array} \right)+\left( \begin{array}{c} 0 \\ 0 \end{array} \right)=\left( \begin{array}{c} 0 \\ 0 \end{array} \right) , k\left( \begin{array}{c} 0 \\ 0 \end{array} \right)=\left( \begin{array}{c} 0 \\ 0 \end{array} \right) \)

はともに\(M_1 \cap M_2 \)に属するから\(M_1 \cap M_2 \)は\(\mathbb{R}^2 \)の部分空間である。
(3)何か具体的な反例を見つければよい。(1)よりM1どうし,M2どうしだと部分空間になるからM1の元(要素)とM2の元を足してみるのが怪しいと予想できるはず。
\( M_1 \cup M_2 \)から2つの元\( \left( \begin{array}{c} 0 \\ 1 \end{array} \right),\left( \begin{array}{c} 1 \\ 0 \end{array} \right) \)を取ってくる。
この和は
\(\left( \begin{array}{c} 1 \\ 1 \end{array} \right) \)となり\( M_1\cup M_2 \)には属さない。
よって\( M_1 \cup M_2 \)は\(\mathbb{R}^2 \)の部分空間ではない。

 

例題2

次の集合は\(\mathbb{R}^3\)の部分空間となるか?
(1) 

\( M_1= \left\{\left( \begin{array}{c} x \\ y \\ z \end{array} \right) \in \mathbb{R}^3| x+y+z=1 \right\} \)

以下では|より右側の条件部分のみをかきます。M1と同様すべて3次元ベクトルです。
(2) M2: x+y+z=0
(3) M3: x≧y
(4) M4: x=y=z
(5) M5: x2+y2+z2=1

丁寧な書き方は例題1で行ったので正誤判定を中心に重要なポイントだけ示します。直感的に予想するときは○x+△y=0のような1次式=0(定数項なし)の形になっているものとそれらが複数組み合わさったもの(例:2x+3y=0かつy+5z=0)だけが部分空間で,それ以外は違うと予想しておけばOK。ただし念のため直感的な「予想」が正しいか証明・反例をつけたいところです。

答え(1) 直感的には定数項が邪魔するので部分空間とはならなさそう。というわけで反例を探しましょう。具体的にM1の元2つ取ってきて足すかスカラー倍した結果がM1の元にならないものを探しましょう。
M1の元として\(\left( \begin{array}{c} 1 \\ 0 \\ 0 \end{array} \right), \left( \begin{array}{c} 1 \\ 0 \\ 0 \end{array} \right) \)を取ってくるとこれらの和は
\( \left( \begin{array}{c} 2 \\ 0 \\ 0 \end{array} \right) \)となり,これはM1に属さないので部分空間ではない。
以下では(縦ベクトルが面倒なので)ベクトルを横に書きます。手で答案を作成するときは縦ベクトルの方が見やすくて良いでしょう。
(2) 直感的には部分空間になりそうなので証明する方針でいきます。
M2の元を2つ(xA,yA,zA),(xB,yB,zB)とってくる。(xA+yA+zA=0 , xB+yB+zB=0)
このときこの2つの和は(xA+xB , yA+yB , zA+zB)となり(xA+xB)+(yA+yB)+(zA+zB)=0だからこれもM2の元である。
またスカラー倍はk(xA,yA,zA)=(kxA,kyA,kzA)となりkxA+kyA+kzA=0だからこれもM2の元である。よってM2は部分空間である。
(3) 直感的には部分空間でないので反例探しです。和では見つからなさそうなのでスカラー倍で反例を探しましょう。
M3の元(1,0,0)をとってくる。-1倍すると(-1,0,0)となり-1≧0ではないのでこれはM3の元ではない。よって部分空間ではない。
(4) x-y=0かつx-z=0なので直感的には部分空間です。証明しましょう。
M4の元を2つ(xA,yA,zA),(xB,yB,zB)とってくる。(xA=yA=zA , xB=yB=zB)
このときこの2つの和は(xA+xB , yA+yB , zA+zB)となり(xA+xB)=(yA+yB)=(zA+zB)だからこれもM4の元である。
またスカラー倍はk(xA,yA,zA)=(kxA,kyA,kzA)となりkxA=kyA=kzAだからこれもM4の元である。よってM4は部分空間である。
(5) ここまで来ればM5は全然部分空間になりそうな気配がないのでなんとでも反例はあげれるでしょう。和でもスカラー倍でも無作為に例をあげれば基本的に反例になるので反例探しは苦労しないでしょう。
M5の元を(1,0,0)ととると2倍すれば(2,0,0)でこれはM5の元ではない。よって部分空間ではない。

概念さえ理解すれば決して難しくないですが言葉遣いが抽象的なので初見ではなかなか点数を取りにくい分野です。難しくはないのでしっかり練習しましょう。例題2の下にある直感も理解しておくと部分空間かどうかの判定が楽になります。

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