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上野竜生です。an+1=f(an)で定められた数列で(一般項は出せないけど)極限だけ出せるタイプの問題を解説します。

an+1=f(an)の極限の求め方

一般項が求まる漸化式の場合

一般項を求めてから極限計算するだけです。ほとんどが数Bの範囲になるので何も難しくないでしょう。

実は一般項は求まらないのに極限だけわかる場合もあるのです。それを紹介します。

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一般項が求まらない漸化式の極限の求め方

1. 漸化式のan+1やanなどの項をすべてαにおきかえてできる式を解く。以下この値をαとおく。
2. |an+1-α|≦r|an-α|を示す。 (r<1を満たす定数でないとダメ)
3. 2.の関係式を繰り返し用いる
|an-α|≦r|an-1-α|≦r2|an-2-α|≦・・・≦rn-1|a1-α|
この一番右の式はn→∞のとき0に収束する。よって\(\displaystyle \lim_{n\to \infty}|a_n−\alpha|=0\)となり\(\displaystyle \lim_{n\to \infty}a_n=\alpha\)となる。

難しいのはstep2です。なんとかしてこのステップを乗り越えればあとのステップ3は頭の中にある定型文を書き写すだけみたいなものなので楽勝です。

例題

次の漸化式で定められる数列anを考える。
\( a_1=\sqrt{2} , a_{n+1}=\sqrt{a_n +2}\)
(1) すべての自然数nに対し\( \sqrt{2} \leq a_n \leq 2 \)が成り立つことを示せ。
(2) 極限\(\displaystyle \lim_{n \to \infty} a_n \)を求めよ。

(1)は(2)step2のための誘導です。本質ではないので軽く紹介します。

答え(1) 数学的帰納法で示す。n=1のとき明らか。

n=kで成立を仮定してn=k+1での成立を示す。\( f(x)=\sqrt{x+2} \)とおくと単調増加なので\( \sqrt{2} \leq x \leq 2\)ならば\( f(\sqrt{2}) \leq f(x) \leq f(2) \)

つまり\( \sqrt{2} \leq \sqrt{\sqrt{2}+2} \leq f(x) \leq 2 \)となる。

x=akを代入すると\( \sqrt{2} \leq a_k \leq 2 \)ならば\( \sqrt{2}\leq f(a_k) \leq 2\)

f(ak)=ak+1なのでn=k+1でも成立。以上よりすべての自然数nに対し成立。

これを使って(2)を解説します。

step1 anやan+1をαにおきかえて得られる式\( \alpha=\sqrt{\alpha+2} \)を解く。

両辺2乗すると\( \alpha^2=\alpha+2 \)

整理すると\( \alpha^2-\alpha-2=(\alpha+1)(\alpha-2) =0 \)より\( \alpha=-1,2\)

α=-1はこの方程式を満たさないのでα=2

2乗しているので同値変形ではありません。最後に解の吟味をしましょう。
なお,これだけで極限値は2と結論付けるのはまだ早いです。むしろこの計算は答案上に残す必要は特にありません。
以下の「答え」の枠内を(2)の答案とすればOKです。

step2 |an+1-2|≦r|an-2|を示す。

答え\(\displaystyle |a_{n+1}-2|=|\sqrt{a_n+2}-2|=\left|\frac{(a_n+2)-2^2}{\sqrt{a_n+2}+2} \right| \)…(★)
(∵分子の有理化。分母分子に\( (\sqrt{a_n+2}+2) \)をかけた。)
(★)=\(\displaystyle \frac{1}{|\sqrt{a_n+2}+2|}\cdot |a_n-2|\)
ここで(1)より\( \sqrt{2} \leq a_n \leq 2 \)だから
\( \displaystyle \frac{1}{|\sqrt{a_n+2}+2|} \leq \frac{1}{\sqrt{\sqrt{2}+2}+2} \leq \frac{1}{3} \)
よって\(\displaystyle |a_{n+1}-2| \leq \frac{1}{3} |a_n-2| \)が成立する。
step3 この関係式を繰り返し用いる
\(\displaystyle  |a_n-2| \leq \frac{1}{3} |a_{n-1}-2| \leq \left( \frac{1}{3} \right)^2 |a_{n-2}-2| \leq \cdots \leq \left( \frac{1}{3} \right)^{n-1} |a_1-2| \)
つまり\(\displaystyle 2-\left( \frac{1}{3} \right)^{n-1} |\sqrt{2}-2| \leq a_n \leq 2+\left(\frac{1}{3} \right)^{n-1} |\sqrt{2}-2| \)
\( \displaystyle \lim_{n \to \infty} \left( \frac{1}{3} \right)^{n-1} =0 \)だからハサミウチの原理より\(\displaystyle \lim_{n \to \infty} a_n =2 \)
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注意

step1について

\( \displaystyle \lim_{n \to \infty} a_n = \alpha \)ならば当然\( \displaystyle \lim_{n \to \infty} a_{n+1} =\alpha \)なのでstep1のような方程式を解けば極限値の候補が求まります。これは「もし極限値が存在すればその値はαしかない」ことがいえただけで極限値が存在しないかもしれません。なのでstep1で終わってはいけないのです。

なお別の方法などで極限が存在することが保証できればstep1だけで終わっても問題ないでしょう。

大学に行くと「有界な単調数列は収束する」というのがありますので(1)で有界(無限に発散はしない)ことが,数学的帰納法で単調増加(an+1>an)が示せますのでこれで極限の存在は保証できるでしょう。

step2について

(★)の2行下の式

(★)=\(\displaystyle \frac{1}{|\sqrt{a_n+2}+2|}\cdot |a_n-2|\)

から\(\displaystyle \frac{1}{|\sqrt{a_n+2}+2|}<1\)なのでstep2を完了

としてはいけません。1より小さい定数でおさえる必要があります。

\(\displaystyle \frac{1}{|\sqrt{a_n+2}+2|}<\frac{1}{2}\)ならOKです。

これは最後のstepで0<r<1の定数のとき\(\displaystyle \lim_{n \to \infty} r^n =0 \)を使うのですが定数でないとこの関係式は成り立ちません。(反例:\( r=1-\frac{1}{n} \))

なので必ず定数でおさえる。これが重要です。

 

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