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上野竜生です。極限の求め方のうち追い出しの原理やハサミウチの原理を用いたものを紹介します。

 

追い出しの原理

追い出しの原理はたまに使いますが収束するときの定理ではありません。試験ではよく収束値を求めさせたりしますのでハサミウチの原理ほどの使用頻度ではありません。

POINTすべての自然数n(ある値より大きいすべての自然数でも可)に対し
\( a_n \leq b_n \)であり,\( \displaystyle \lim_{n \to \infty} a_n = \infty \)ならば
\( \displaystyle \lim_{n \to \infty}b_n=\infty \)

追い出しの原理の例題は有名な調和数列の問題(自然数の逆数の和は発散する)を見ておけば十分でしょう。なかなか難しい発想です。

例題1

\(\displaystyle \lim_{n \to \infty} \sum_{k=1}^n \frac{1}{k} \)は発散することを示せ。

答えnを十分大きな数とし,\( n>2^m \)を満たす最大のmをとる。n→∞のときm→∞である。

\(\displaystyle 1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\frac{1}{5}+\cdots+\frac{1}{8}+\frac{1}{9}+\cdots+\frac{1}{16}+\cdots+ \frac{1}{n}  \\
\displaystyle > 1+\frac{1}{2}+(\frac{1}{4}+\frac{1}{4})+(\frac{1}{8}+\cdots +\frac{1}{8})+\frac{1}{16} + \cdots + \frac{1}{2^m} \\
\displaystyle = 1+\frac{1}{2}+\frac{1}{2}+\frac{1}{2}+\cdots +\frac{1}{2} = \frac{m+2}{2} \)

\(\displaystyle \lim_{m \to \infty} \frac{m+2}{2} = \infty \)なので追い出しの原理より
\(\displaystyle \lim_{n \to \infty} \sum_{k=1}^n \frac{1}{k}=\infty \)

やっぱり途中の不等式のところの発想が難しいので初見ではやりにくいでしょう。方針を暗記する必要もあるかもしれません。

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ハサミウチの原理の利用

ハサミウチの原理とは次のようなものです。

POINTすべての自然数n(ある値より大きいすべての自然数でも可)に対し
\( a_n \leq b_n \leq c_n \)であり,\( \displaystyle \lim_{n \to \infty} a_n = \lim_{n \to \infty} c_n =\alpha \)ならば
\( \displaystyle \lim_{n \to \infty}b_n=\alpha \)

nは実数でも成り立ちます。つまり,任意の実数nに対しa(n)≦b(n)≦c(n)で,a(n)とc(n)の極限が一致すればb(n)の極限もその値になります。

これを使う場合「何で挟むか」は自分の直感で決めることになります。計算しやすそう・一度計算問題で見たことある形・問題文の誘導などから判断しましょう。

やってみた結果,ちゃんとはさめたら正解ですがやってみるまで正解かわかりません。

例題2 自分で挟むものを考える

\(\displaystyle \lim_{n \to \infty} \frac{\sin{n}}{n} \)を求めよ。
答え\( -1 \leq \sin{n} \leq 1 \)なので
\(\displaystyle -\frac{1}{n} \leq \frac{\sin{n}}{n} \leq \frac{1}{n} \)
\(\displaystyle \lim_{n \to \infty} -\frac{1}{n}=0 , \lim_{n \to \infty} \frac{1}{n}=0 \)
ハサミウチの原理より
\(\displaystyle \lim_{n \to \infty} \frac{\sin{n}}{n}=0 \)

例題3 誘導に乗って挟む

(1) すべての自然数nに対し\( n < 2^{n} \)を示せ。
(2) \(\displaystyle \lim_{n \to \infty} ne^{-n} \)を求めよ。

(1) これ自体はハサミウチの原理を使う問題ではありません。(今回のテーマに関係ないのでここで行き詰った人は(1)を認めて先に(2)を読んでください)とにかくなんでもいいので示します。

答え(1)
数学的帰納法で示す。
n=1のとき(左辺)=1,(右辺)=2より成立。
n=kで成立すると仮定する。つまり
\( k<2^k \)と仮定するとn=k+1のとき
(右辺)-(左辺)
\( = 2^{k+1}-(k+1) \\ = 2(2^k)-k-1 \\ > 2k-k-1 =k-1 \\ \geq 0 \)
よって(左辺)<(右辺)
(2)n≧1のとき
\(\displaystyle 0 < ne^{-n} < 2^{n}e^{-n}= \left(\frac{2}{e}\right)^n \)
が成立する。
\( \displaystyle \lim_{n\to \infty} 0 =0 , \lim_{n \to \infty} \left(\frac{2}{e}\right)^n=0 \left(∵\frac{2}{e}<1\right)\)よってハサミウチの原理より\( \displaystyle \lim_{n\to \infty} ne^{-n}=0 \)

nが整数でなくても実数xでもx≧1のときx<2xが成り立ち極限も同様のことが成り立ちます。
同様に\(\displaystyle \lim_{n \to \infty} \frac{n}{2^n} \)などについても
n≧2のとき\( 2^n = (1+1)^n = {}_{n} C_{0}+{}_{n}C_{1}+{}_{n}C_{2} + \cdots > {}_n C_{2} \)
またはn≧5のとき帰納法で\( 2^n \geq n^2 \)などを示すことにより
\(\displaystyle 0 < \frac{n}{2^n} < \frac{n}{{}_n C_{2}}=\frac{2}{n-1} \)
となるのでハサミウチの原理から極限は0とわかります。この手法はたまに使われるので挟む関数を覚えてしまうのも手です。

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