上野竜生です。今回は行列の転置と対称行列・交代行列の定義を扱います。
転置行列
m×n行列Aに対し,行と列を入れ替えて出来るn×m行列をAの転置行列と言い,tAとかく。
例:\(A = \left(
\begin{array}{ccc}
1 & 2 & 3 \\
4 & 5 & 6 \\
\end{array}
\right)\)のとき\({}^t A = \left(
\begin{array}{cc}
1 & 4 \\
2 & 5 \\ 3 & 6
\end{array}
\right)\)
また紙の都合や,書くときの面倒さから縦ベクトル\(\left( \begin{array}{c} a \\ b \\ c \end{array} \right)\)をt(a,b,c)と書くこともある。
次が成り立つ。
t(tA)=A
t(A+B)=tA+tB
t(kA)=ktA
t(AB)=tBtA
最後は注意!行列は積の順序が入れ替えられないのでt(AB)≠tAtBです。
対角行列
対角成分(=(i,i)成分)以外の成分がすべて0である行列を対角行列という。
Aが対角行列ならAnは簡単に計算できる。対角成分以外はすべて0で対角成分はそれぞれのn乗となる。
\( A = \left(
\begin{array}{cc}
a & 0 & 0 \\
0 & b & 0 \\ 0 & 0 & c
\end{array}
\right) \)なら\( A^n = \left(
\begin{array}{cc}
a^n & 0 & 0 \\
0 & b^n & 0 \\ 0 & 0 & c^n
\end{array}
\right) \)
対称行列と交代行列
tA=AのときAを対称行列という。
tA=-AのときAを交代行列という。
定義から交代行列の対角成分は0であることがすぐわかりますね。
(∵Aの(i,i)成分をaiiとする。転置行列にしても対角成分は変わらないのでtAの(i,i)成分もaii。
よってaii=-aiiとなりaii=0)
例題1
対角行列には〇,そうでなければ×をつけよ。
(1)\(A = \left(
\begin{array}{ccc}
1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1
\end{array}
\right) \)
(2)\(A = \left(
\begin{array}{cccc}
1 & 1 & 0 & 0 \\ 1 & 1 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 1 & 1 \\ 0 & 0 & 1 & 1
\end{array}
\right) \)
(3)\(A = \left(
\begin{array}{ccc}
0 & 0 & 1 \\ 0 & 2 & 0 \\ 3 & 0 & 0
\end{array}
\right) \)
(4)\(A = \left(
\begin{array}{cccc}
1 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 2 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 0
\end{array}
\right) \)
(2)(1,2)成分など(i,i)以外の成分で0でないものを含むので×
(3)(1,3)成分が0でないので×(対角行列とは0でない成分が\方向に並ぶもののみを許します。/方向に並んでるものは対角行列とはいいません。)
(4)(i,i)成分以外はすべて0なので〇(対角成分は0でも0でなくても構いません)
例題2
成分計算してもいいのですが行列Aのまま扱えるならそのほうがスッキリするのでまずは行列のまま考えましょう。
tB=t(tAA)=tA t(tA)=tA A=B
となりB=tAAは対称行列である。
例題3
Aの対角成分が異なるという情報を行列のまま扱うのは大変そうなのでこちらは成分計算するほうがいいでしょう。
ABの(i,j)成分は\(\displaystyle \sum_{k=1}^n a_{i,k} b_{k,j} \),
BAの(i,j)成分は\(\displaystyle \sum_{k=1}^n b_{i,k} a_{k,j} \),
Aは対角行列だから\(a_{i,k}=a_{k,i}=0 (k\neq i ) \)
よってABの(i,j)成分は\( a_{i,i}b_{i,j} \)
BAの(i,j)成分は\( b_{i,j}a_{j,j} \)
よって\( a_{i,i}b_{i,j}=b_{i,j}a_{j,j} \) ∴\( (a_{i,i}-a_{j,j})b_{i,j}=0 \)
仮定よりAの対角成分は異なるから\(a_{i,i}- a_{j,j} \neq 0 \)(i≠j)
よって\( b_{i,j}=0 \)となりBは対角行列である。
例題4
第1項は
\( {}^t{\frac{1}{2}(A+{}^tA )}= \frac{1}{2}( {}^tA + A) \)より対称行列。
第2項は
\( {}^t{\frac{1}{2}(A-{}^tA )}= \frac{1}{2}( {}^tA - A) =-\frac{1}{2}(A-{}^tA)\)より交代行列。
よって対称行列と交代行列の和で表せる。
一意性の証明
A=B+C(Bは対称行列,Cは交代行列)とかけたとする。
tA=tB+tC=B-Cである。
ここからB,Cを求めれば上と同じものを得る。
このぐらいの証明問題なら定義を知ってるかを手軽に問えるのでテストに出ることもあります。このレベルは取りこぼさないようにしましょう。
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