上野竜生です。今回は大学数学の中で重積分の初歩を扱います。そこそこ分量があるように見えますが教えなくてもわかりそうなことがほとんどで,気を付けるべき点は順序交換するときの変数部分だけです。
動画
今回の内容は動画でも解説しています。
重積分のパターン
- 累次積分(1変数の積分計算を2回するだけの超基本形)
- 積分順序交換(順序交換後のパラメータに注意)
- 極座標変換(ヤコビアンrは認めたとしても応用パターンが多い)
- 一般の変数変換(ヤコビアンの計算からやる必要がある)
この4パターンをマスターすれば大学1年生の積分計算はできたといってもいいでしょう。ここでは1と2を扱います。テストによくでるのはパターン2と3です。
次の例題1はパターン1の例です。基本的には順番に積分すればOKなので解答を読めば普通に理解できると思います。これが基本形なのでまずは基本の型を見ておきましょう。
例題1
答え$$ \int_{0}^{1} \int_{0}^{2} xy dxdy \\= \int_{0}^{1} \left[ \frac{1}{2}x^2 y \right]_{x=0}^{x=2} dy \\= \int_{0}^{1} 2y dy\\=[ y^2 ]_{0}^{1}=1 $$
重積分の書き方はいろいろある!
例題1は上の1-Aの書き方で出題していますが,領域Dを指定して1-Bのような書き方で出題されることもあります。さらに積分の順序を変えてyから積分して1-Cのようにしても同じです。つまり1-Aから1-Cはすべて同じ意味の積分で,もちろん結果は一致します。念のために1-Cを計算してみます。
$$ \int_{0}^{1} \int_{0}^{2} xy dxdy =\int_{0}^{2} \int_{0}^{1} xy dydx $$ $$=
\int_{0}^{2} \left[ \frac{1}{2}xy^2 \right]_{y=0}^{y=1} dx = \int_{0}^{2} \frac{1}{2}x dx=1 $$
例題2
答え$$ \int_{0}^{1} \int_{0}^{y} xy dxdy = \int_{0}^{1} \left[ \frac{1}{2}x^2 y \right]_{x=0}^{x=y} dy $$ $$= \int_{0}^{1} \frac{1}{2}y^3 dy=\left[ \frac{1}{8}y^4 \right]_{0}^{1}=\frac{1}{8} $$
順序交換に注意
例題1と同様に積分領域を指定して書くやり方もあります。以下の画像をご覧ください。2-Bは積分区間しかかいていませんが正確には
のことです。そして重要なのは2-Cの順序交換です。例題1と同様にしてインテグラルをひっくりかえして
\(\displaystyle \int_0^y \int_0^1 xy dy dx \)
とするだけではありません。
なぜこのようになるのかというと積分区間は0≦x≦yかつ0≦y≦1,つまり0≦x≦y≦1です。xからみるとまず0→yで積分し,次にyを0→1で積分してますが,順序を交換したことによってyからみるとまずx→1で積分し,次にxで0→1で積分すれば同じ領域で積分したことになります。この対応を間違わないようにすることが大切です。図か式を書いて同じ領域になるように範囲を決める必要があります。
念のため2-Cも計算して結果が同じになることを確かめてみます。
& &\int_{0}^{1} \int_{0}^{y} xy dxdy =\int_{0}^{1} \int_{x}^{1} xy dydx\\
&=&
\int_{0}^{1} \left[ \frac{1}{2}x y^2 \right]_{y=x}^{y=1} dx \\
&=& \int_{0}^{1} \frac{1}{2}(x - x^3) dx=\left[ \frac{1}{4}x^2 - \frac{1}{8}x^4 \right]_{0}^{1}=\frac{1}{8}
\end{eqnarray} $$
例題3
答え\[ \displaystyle \int_0^2 \int_y^2 \sin{(x^2)} dx dy \\ =\displaystyle \int_0^2 \int_0^x \sin{(x^2)} dy dx \\ =\displaystyle \int_0^2 [y\sin{(x^2)}]_0^x dx \\ =\displaystyle \int_0^2 x\sin{(x^2)}dx \\ =\displaystyle \left[ -\frac{1}{2}\cos{(x^2)} \right]_0^2 \\ =\displaystyle \frac{1-\cos{4}}{2} \]
順序交換をすることで積分区間にあったxが被積分関数に入ってきたので置換積分ができる形になりました。このように,順序交換をしないと計算できない問題も作れるので順序交換は大学数学ではよく使うテクニックになり,テストによく出てきます。領域の対応は少し練習しないとできないと思うのでいろいろな問題を解いて慣れておきましょう。
解説を読んで数学がわかった「つもり」になりましたか?数学は読んでいるうちはわかったつもりになりますが演習をこなさないと実力になりません。そのためには問題集で問題を解く練習も必要です。オススメの参考書を厳選しました
<高校数学>上野竜生です。数学のオススメ参考書などをよく聞かれますのでここにまとめておきます。基本的にはたくさん買うよりも…
上野竜生です。大学数学の参考書をまとめてみました。フーリエ解析以外は自分が使ったことある本から選びました。 大…
上野竜生です。当サイトでも少し前まで各ページで学習サイトをオススメしていましたが他にもオススメできるサイトはた…