上野竜生です。行列式の求め方をいくつか紹介します。高校生で四面体の体積を求める記事から飛んできた人は前半の3×3の行列式の公式まで(最初の定義がわからなければ飛ばしてもOK)で十分です。数検1級を目指す人は最後まで理解しましょう。
行列式の定義
行列Aの行列式をdet(A)と書きます。ただし\( a_{ij}\)はAのi行j列の成分です。
まず1×1行列(a)の行列式はその成分aです。
n×n行列まで定義されたとします。(n+1)×(n+1)行列の行列式は次のように定義できます
このようにして帰納的に定義されます
ただし\( A_{kj} \)はAからk行目とj列目を取り除いて得られるn×n行列
j=1でも2でもnでも何でもいいので1つ固定します。また行だけでなく列でも同様の式が成り立ちます。つまり,
\( \displaystyle \sum_{k=1}^{n+1} (-1)^{i+k} a_{ik}det(A_{ik}) \)
も成り立ちます。
とりあえず4×4ぐらいまでしか手計算では無理なので,そこまでの解き方を見ていきましょう。
2×2行列のとき
\( \left(
\begin{array}{cc}
a & c \\
b & d \\
\end{array}
\right)\\ \) の行列式は\(ad-bc\)です。たとえば(0,0),(a,b),(c,d)を頂点とする三角形の面積は\( \displaystyle \frac{1}{2} |ad-bc| \)ですがここにも行列式と関係のある式が登場します。
3×3行列のとき
\( A= \left(
\begin{array}{ccc}
a & d & g \\
b& e & h \\
c& f & i
\end{array}
\right)\\ \)の行列式は\(aei+bfg+cdh-gec-afh-bdi\)です。実際文字の場所を追っていくとたすき掛けのようになっています。 たとえば(0,0,0),(a,b,c),(d,e,f),(g,h,i)を頂点とする四面体の体積は\(\displaystyle \frac{1}{6}|det(A)| \)と書けます。
」高校生まではここまででOKです。
4×4行列のとき
一般には行基本変形を使い,3×3に帰着させます。ただし,特殊な場合は4×4でもすぐに求められます。ここが1級で狙われるポイントといってもいいでしょう。
行列式のもつ性質がいくつかありますのでそれを使って変形します。
i) ある行に別の行の定数倍をくわえても行列式は変わらない。
ii) ある行と別の行を入れ替えると行列式は(-1)倍になる。
iii) ある行をc倍すると行列式はc倍になる。
「行」を「列」に変えても同様です。
これを使うと少し楽になります。
(i) det(I)=1 ただし、Iは単位行列(対角成分が1、その他の成分は0)
(ii) det(AB)=det(A)det(B)
(iii) \(\displaystyle det(A^{-1})=\frac{1}{det(A)}\)
よくあるパターン
次の行列の行列式を因数分解した形で求めよ。
\( \left(
\begin{array}{ccc}
1 & a & a^2 \\
1& b & b^2 \\
1 & c & c^2
\end{array}
\right)\\ \)
たすき掛けでもできますが,上の性質を知っていれば最初からある程度因数分解した形で求めることができます。数検1級ではこの「因数分解した形で」と指定されることがありますのでこのやり方を覚えておきましょう。
求める答えをXとする。
\( X= det \left(
\begin{array}{ccc}
1 & a & a^2 \\
1 & b & b^2 \\
1 & c & c^2
\end{array}
\right)\\ =det \left(
\begin{array}{ccc}
1 & a & a^2 \\
0 & b-a & b^2-a^2 \\
0 & c-a & c^2-a^2
\end{array}
\right)\\ \)
この変形は第2行目に第1行目の(-1)倍をくわえても行列式は変わらないという性質です。同様に第3行目にも第1行目の(-1)倍を加えています。
ここまでくるとj=1で定義通り展開します。
\( X=1\cdot det \left(
\begin{array}{cc}
b-a & b^2-a^2 \\
c-a & c^2-a^2 \\
\end{array}
\right)\\ + (-1)\cdot 0 \cdot det \left(
\begin{array}{cc}
a & a^2 \\
c-a & c^2-a^2 \\
\end{array}
\right)\\ + 0 \cdot det \left(
\begin{array}{cc}
a & a^2 \\
b-a & b^2-a^2 \\
\end{array}
\right)\\ = det \left(
\begin{array}{cc}
b-a & b^2-a^2 \\
c-a & c^2-a^2 \\
\end{array}
\right)\\ \)
となります。この計算で0が多く出るようにうまく変形したわけです。ここまでくると2×2行列の行列式の定義から
\( \begin{eqnarray} X&=& (b-a)(c^2-a^2)-(c-a)(b^2-a^2)\\
&=& (b-a)(c-a)((c+a)-(b+a))\\ &=&(a-b)(b-c)(c-a) \end{eqnarray}\)
と求めることができます。
ちなみに最後の2×2行列から計算方法に関する性質(iii)を用いて因数分解しやすい形で計算することもできます。1行目が(b-a)でくくれることと2行目が(c-a)でくくれることを利用しています。
\(det \left(
\begin{array}{cc}
b-a & b^2-a^2 \\
c-a & c^2-a^2 \\
\end{array}
\right)\\=
det \left(
\begin{array}{cc}
b-a & (b-a)(b+a) \\
c-a & (c-a)(c+a) \\
\end{array}
\right)\\=
(b-a)(c-a)det \left(
\begin{array}{cc}
1& b+a \\
1& c+a \\
\end{array}
\right)\\
=(b-a)(c-a)(c+a-b-a) \\ =(b-a)(c-a)(c-b)=(a-b)(b-c)(c-a) \)
4×4行列で特別な場合には便利な公式があります。
\begin{array}{cc}
A & B \\
B & A \\
\end{array}
\right)\\=det(A+B)det(A-B)\)
これを使えば楽に計算できます。もちろん左辺の形になっている必要があります。
大学生および数学検定1級のためには学習しておきましょう。
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