上野竜生です。高校の数IIIで逆関数を学びました。三角関数の逆三角関数を大学では扱います。まずは定義を理解して方程式を解く練習までします。逆三角関数の微分積分はまた次の機会とします。また,大学では双曲線関数も学びます。こちらはすぐ終わるのでついでにこのページで紹介します。
定義
sinxの逆関数をarcsinxとかく。つまりx=siny⇔y=arcsinx
cosxの逆関数をarccosxとかき,tanxの逆関数をarctanxとかく。
ところで,「関数」とはそもそもxの値を1つ定めればyの値が1つ定まるものでした。このままだとy=arcsinxは逆「関数」になりません。なぜならこのままだとarcsin0=0,±π,±2π・・・など複数定まってしまうからです。しかしy=sinxの\( -\frac{\pi}{2} \leq x \leq \frac{\pi}{2} \)の部分のみの逆関数を考えてみると,こちらはうまく1つだけ対応します。同様にcosxは0≦x≦πの部分のみ,tanxは\( -\frac{\pi}{2} < x < \frac{\pi}{2} \)の部分のみの逆関数はしっかりと逆「関数」になってくれます。そこで定義域と値域に注意して次のように定義します。
・\( \cos{x} (0 \leq x \leq \pi) \)の逆関数を\( \arccos{x} \)とかく。つまりarccosxの定義域は-1≦x≦1,値域は\( 0 \leq \arccos{x} \leq \pi \)
・\( \tan{x} (-\frac{\pi}{2} < x < \frac{\pi}{2}) \)の逆関数を\( \arctan{x} \)とかく。つまりarctanxの定義域は実数全体,値域は\( -\frac{\pi}{2}< \arctan{x} < \frac{\pi}{2} \)
たとえばsinxの\(\frac{\pi}{2} \leq x \leq \frac{3\pi}{2} \)の部分…(★)でもちゃんと逆「関数」になるじゃないか!と思うかもしれません。確かにそうです。でも参考書によって定義域がバラバラになると扱いずらいのでどの教科書でも緑枠のように0を含む区間を三角関数の定義域にしているはずです。
参考書によっては注意1の(★)でもarcsinxとしては認めるけど,特に上の緑の枠の逆正弦関数をArcsinx(Aを大文字)として区別する人もいます。またarcsinとかかずにsin-1と書いたり,特に上の緑の枠の逆正弦関数を先頭大文字でSin-1と書いたりします。このサイトではarcsinと書いて緑枠の定義域のものを指すと思ってください。
\(\displaystyle \arctan{x} \neq \frac{\arcsin{x}}{\arccos{x}} \)です。
例題1
(1)\(\arctan{(-\sqrt{3})} \)
(2)\(\arcsin{(\sin{3})} \)
(3)\(\cos{(\arctan{3})}\)
(4)\( 2\arcsin{\frac{4}{5}}+\arcsin{\frac{24}{25}} \)
\( \theta=-\frac{\pi}{3}\)
(2) \( \sin{\theta}=\sin{3} \)となる\( \theta (-\frac{\pi}{2}<\theta<\frac{\pi}{2}) \)が求めるものである。
\( \sin{3}=\sin{(\pi-3)} \)なので\(\theta=\pi -3 \)
これは定義域に入っている。
一般にsin(arcsinx)=xですがarcsin(sinx)はsinの定義域が実数全体(≠arcsinの値域)になっているせいでxとは限りません。cos,tanも同様です。
arctanの定義より\(-\frac{\pi}{2}<\alpha<\frac{\pi}{2} \)で特にα>0は明らか。つまりcosα>0
\( \tan{\alpha}=3 \)だから\(\cos{\alpha}=\frac{1}{\sqrt{10}} \)
(4)\( \sin{\alpha}=\frac{4}{5} (-\frac{\pi}{2} \leq \alpha \leq \frac{\pi}{2}) \),
\( \sin{\beta}=\frac{24}{25} (-\frac{\pi}{2} \leq \beta \leq \frac{\pi}{2}) \)
とするとき\( 2\alpha+\beta \)はいくらかという問題です。高校の数IIでやったと思うのでその通り解いていきましょう。
\(\cos{\alpha}=\frac{3}{5} , \cos{\beta}=\frac{7}{25} \)
\( \sin{2\alpha}=2\sin{\alpha}\cos{\alpha}=\frac{24}{25} \)
\( \cos{2\alpha}=2\cos^2{\alpha}-1=-\frac{7}{25}\)
\( \sin{(2\alpha+\beta)}=\sin{2\alpha}\cos{\beta}+\cos{2\alpha}\sin{\beta}=0\)
\( 0<\alpha< \frac{\pi}{2} , 0<\beta <\frac{\pi}{2} \)より\( 0< 2\alpha+\beta < \frac{3}{2}\pi \)なので\( 2\alpha+\beta=\pi \)
よって\( 2\arcsin{\frac{4}{5}}+\arcsin{\frac{24}{25}}=\pi \)
例題2
(1)\( \arcsin{x}=\arccos{\frac{1}{3}} \)
(2)\( 2\arccos{x}=\arctan{3} \)
\( \sin{(\arcsin{x})}=\sin{(\arccos{\frac13})} \)・・・①
\( \sin{(\arcsin{x})}=x \)より①の左辺はx
\( \arccos{\frac{1}{3}}=\alpha \)とおくと\( \cos{\alpha}=\frac13 \)で①の右辺は\( \sin{\alpha} \)である。arccosの定義域を考えるとαは\( 0<\alpha<\frac{\pi}{2} \)を満たすので
\( \sin{\alpha}=\frac{2\sqrt{2}}{3} \)
よって\( x=\frac{2\sqrt{2}}{3} \)
(2)両辺にcosをとると
\( \cos{(2\arccos{x})}=\cos{(\arctan{3})}=\frac{1}{\sqrt{10}} \)
(∵例題1(3)より)
左辺は2倍角の公式より
\( 2\cos^2{(\arccos{x})}-1 = 2x^2-1 \)
よって\( 2x^2-1=\frac{1}{\sqrt{10}} \)
\( \displaystyle x=\pm \sqrt{\frac{10+\sqrt{10}}{20}} \)
定義域よりx>0であるから\( \displaystyle x= \sqrt{\frac{10+\sqrt{10}}{20}} \)
双曲線関数
高校の指数関数のみで定義できるので高校でも練習問題で解いてきたはずです。
定義域と値域
すべて定義域は実数全体です。
値域はsinhxは実数全体coshx≧1,-1<tanhx<1となっています。
関係式
\(\cosh^2{x}-\sinh^2{x}=1 \)
\( \sinh{(x\pm y)}=\sinh{x}\cosh{y}\pm \cosh{x}\sinh{y} \)
\( \cosh{(x\pm y)}=\cosh{x}\cosh{y} \pm \sinh{x}\sinh{y} \)
\( \displaystyle \lim_{x\to \pm \infty}\tanh{x} =\pm 1 \)(すべて複号同順)
微分
指数関数の微分積分は高校でやっているのですべて容易。
\(\displaystyle \frac{d}{dx}\sinh{x}=\cosh{x}\)
\(\displaystyle \frac{d}{dx}\cosh{x}=\sinh{x}\)
\(\displaystyle \frac{d}{dx}\tanh{x}=\frac{1}{\cosh^2{x}}\)
積分も基本的には指数関数の積分で導けます。
例題3
(1)\(\sinh{(\log{2})}\)
(2)\(\tanh^{-1}{\frac{1}{2}}\)
(2)\( \displaystyle \tanh{x}=\frac{e^x-e^{-x}}{e^x+e^{-x}}=\frac{1}{2} \)となるxを求めればよい。
\( 2e^x-2e^{-x}=e^x+e^{-x} \)より\( e^x=3e^{-x} \)
つまり\(e^{2x}=3\)となるので2x=log3
∴\(x=\tanh^{-1}{\frac{1}{2}}=\frac{1}{2}\log{3}\)
具体的な逆三角関数の方程式が過去問で出ないような先生の授業なら自力で解けるまで練習しなくてもいいでしょう。
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