上野竜生です。今回は2変数関数の極限の計算ができるようにします。1変数よりかなり複雑です。
2変数の極限の定義
任意のε>0に対しあるδ>0が存在し
\( 0< || \vec{x}-\vec{a} || < \delta \)
つまり
\( 0< \sqrt{(x-a)^2+(y-b)^2} < \delta \)
ならば
|f(x,y)-α|<ε
が成り立つとき極限はαといい
\(\displaystyle \lim_{(x,y)\to (a,b)} f(x,y)=\alpha \)もしくは
\( f(x,y) \to \alpha ((x,y) \to (a,b)) \)
とかく。
1変数の時は0<|x-a|<δといえば数直線上でx=aの右側から近づくか左側から近づくかの2通りしかなかったので2通り調べて一致すれば極限は存在するとしてきましたが2変数の場合xに近づくやりかたは無数に存在します。なのでかなり厄介なのです。x軸から近づくかもしれない,y軸から近づくかもしれない,斜め35°ぐらいから近づくかもしれない,さらには(a,b)に向かって真っすぐ近づくとは限らず放物線状の形で近づくかもしれない,ぐるぐるまわりながら近づくかもしれない・・・それらすべてが一致しないと極限は存在しないというのです。
ということで「極限が存在しないこと」を示すのは簡単で2通りの近づき方をうまく選んで一致しなければOKなのですが「極限が存在すること」を示すのはかなり厄介だということがわかります。
公式
和・差・積・商・絶対値などは1変数と同様に成り立つ。つまり
\(\displaystyle \lim_{(x,y)\to (a,b)} f(x,y)=\alpha , \lim_{(x,y)\to (a,b)} g(x,y)=\beta \)ならば
\(\displaystyle \lim_{(x,y)\to (a,b)} kf(x,y) = k \alpha \)
\(\displaystyle \lim_{(x,y)\to (a,b)} f(x,y) \pm g(x,y)= \alpha \pm \beta \)(複号同順)
\(\displaystyle \lim_{(x,y)\to (a,b)} f(x,y) g(x,y)= \alpha \beta \)
\(\displaystyle \lim_{(x,y)\to (a,b)} \frac{f(x,y)}{g(x,y)}= \frac{\alpha}{\beta} \)(β≠0)
\(\displaystyle \lim_{(x,y)\to (a,b)} |f(x,y)|= |\alpha| \)
はさみうちの定理
(a,b)の近傍上の点(x,y)≠(a,b)について
|f(x,y)-α|≦g(x,y)
かつg(x,y)→0( (x,y)→(a,b) )のときf(x,y)→α((x,y)→(a,b))
もちろんこれらは3変数以上でも成り立つ。
原点で「極限が存在するか?存在するなら値を求めよ」の解き方
(x,y)=(t,kt)とおいてt→0の極限を考える。このときkの値によって結果が変わるのならば極限は存在しない。
step2
kの値によって結果が変わらないからと言って極限が存在するとは言い切れない。
\( r=\sqrt{x^2+y^2} \)とすると|x|≦r, |y|≦rなどが成り立つ。これを利用してrの極限にして求められないか考える。求められれば極限は存在する。
step3
どちらもうまくいかないなら(t,kt)以外の向きから反例を探す。
例題1
(1)\(\displaystyle \lim_{(x,y)\to (0,0)} \frac{xy}{\sqrt{x^2+y^2}} \)
(2)\(\displaystyle \lim_{(x,y)\to (0,0)} \frac{xy}{x^2+y^2} \)
(3)\(\displaystyle \lim_{(x,y)\to (0,0)} \frac{x^2 \sin{y}}{x^2+y^2} \)
(4)\(\displaystyle \lim_{(x,y)\to (0,0)} \frac{xy^2}{x^2+y^4} \)
この解答ではすべて原点での極限なので\(\displaystyle \lim_{(x,y)\to (0,0)} \)は省略する。
(1)step1
(t,kt)の向きから極限を求めると
\(\displaystyle \lim_{t\to 0} \frac{kt^2}{\sqrt{t^2+(kt)^2}}=\lim_{t\to 0} \frac{k|t|}{\sqrt{1+k^2}}=0 \)
となりkに依存せず0になる。これだけでは極限があるともないとも言い切れない。
step2
\( \displaystyle \left| \frac{xy}{\sqrt{x^2+y^2}} \right| = \frac{|x||y|}{r} \leq \frac{r^2}{r} \to 0 (r \to 0) \)
となるのでここで極限が0だと確定する。よって極限は存在し,その値は0。
(2)
step1
\(\displaystyle \frac{xy}{x^2+y^2}=\frac{kt^2}{t^2+k^2t^2} \to \frac{k}{1+k^2} (t\to 0) \)
となりkによって値が変わる。よって極限は存在しない。
(3)step1
\(\displaystyle \frac{t^2 \sin{(kt)}}{t^2+k^2 t^2}=\frac{\sin{(kt)}}{1+k^2} \to 0 \)
これでは極限があるかないかわからない
step2
\(\displaystyle \left| \frac{x^2 \sin{y}}{x^2+y^2} \right| \leq \frac{r^3}{r^2} \to 0 (r\to 0) \)
となるから極限が存在し,その値は0である。
(4)
step1
\(\displaystyle \frac{k^2 t^3}{t^2+k^4 t^4}=\frac{kt}{1+k^4 t^2} \to 0 \)
なのでこれでは極限が存在するかわからない。
step2
分母が少し汚いので普通に証明するのは難しそう。
step3
y2をYに置き換えればきれいな形になりそうなので
すると
\(\displaystyle \frac{kt^4}{t^4+k^4 t^4}=\frac{k}{1+k^4} \)
となりkの値に依存して値が異なるので極限は存在しない。
教科書などでは存在するときはいきなりstep2から書かれていて存在しない時はstep1だけを書いていることが多いです。もちろん実際の答案ではそれだけ書けばOKなのですが,存在するかもわからないときにstep1をやるのかstep2をやるのかわからないと思います。実際には裏でこういう試行錯誤が行われているのです。存在しない時は大抵step1のやり方で排除できるので簡単なものを先に排除してから証明を考えます。(4)のようにstep1でkに依存しなかったのに極限が存在しないパターンもあるので注意です。
連続性
基本的には1変数と同じです。
任意の点(a,b)でf(x,y)の(x,y)→(a,b)での極限がf(a,b)と等しければ連続です。
問題に出てくるような関数は大体1点以外では明らかに連続なので最後の1点だけ調べれば良いというのも同じです。
例題2
は連続か?
1変数と同じように本来は全部の点で連続か言わないといけませんが明らかに(0,0)以外は連続なので(0,0)だけ確認すればよいことになります。
つまりf(x,y)の(0,0)での極限がf(0,0)の値と等しいかを確認することになります。
step1は省略します。sin(xy)を1ではなく|xy|でおさえるとkに依存しないことがわかります。
実際の答案のようにstep2から書きます。
\( r=\sqrt{x^2+y^2} \)とおくと|x|≦r,|y|≦r,sin(xy)≦|xy|≦r2であることに注意すると
\( \displaystyle \left| \frac{\sin{(xy)}}{\sqrt{x^2+y^2}} \right| \leq \frac{r^2 }{r} \to 0 (r\to 0) \)なので
\(\displaystyle \lim_{(x,y)\to (0,0)} \frac{\sin{(xy)}}{\sqrt{x^2+y^2}}=0=f(0,0) \)
となり(0,0)で連続。よって連続である。
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