上野竜生です。数検1級や大学での学習では微分方程式を扱うこともあります。ここでは1階常微分方程式の解法を扱います。すべてy=(xの式)とします。1階なのでy'までしか登場しません。
変数分離形(基本)
\(\displaystyle \frac{dy}{g(y)}=f(x)dx \)となるので積分すればよい。解は
\( \displaystyle \int \frac{dy}{g(y)}=\int f(x)dx +C \)(Cは定数)
y'=2xy+y
答えy'=(2x+1)yより変数分離できる。y=0のとき微分方程式を満たす。y≠0のとき両辺をyで割って
\( \frac{1}{y}\frac{dy}{dx}=2x+1 \)
\( \int \frac{dy}{y}=\int (2x+1) dx \)
\(\log{|y|}=x^2+x+C\) (Cは定数)
よって\( |y|=e^{x^2+x+C}\)
\(y=Ae^{x^2+x}\) (A≠0)
y=0もあわせるとA=0も含めて\( y=Ae^{x^2+x} \)(Aは任意定数)
割とよく出る面白いアイデアの形(線形)
p(x)の原始関数の1つ(不定積分)をP(x)とする。
両辺にe-P(x)をかけるとy'e-P(x)-e-P(x)p(x)y=q(x)e-P(x)
左辺は{ye-P(x)}'に等しいからあとは右辺を積分すれば良い。
y'+(sinx)y=3sinx
答え両辺にe-cosxをかけると
y'e-cosx+(sinx)e-cosxy=3sinxe-cosx
{e-cosxy}'=3sinxe-cosx
e-cosxy=3e-cosx+C (右辺を積分しただけ。Cは積分定数)
y=3+Cecosx
このレベルは自分では思いつきにくく,勉強してきたかどうかを見るのにちょうど良いレベルです。
同次形
\( \displaystyle y'=f\left( \frac{y}{x} \right) \)の形
u=y/xとおく。\( u'=\frac{y'}{x}-\frac{y}{x^2} \)より\(y'=xu'+\frac{y}{x}=xu'+u\)
y'=xu'+u=f(u)となるのでこれは変数分離形である。
ベルヌーイ形
y'+P(x)y=Q(x)ynの形はu=y1-nとおく。
u'=(1-n)y-ny'よりもとの微分方程式に(1-n)y-nをかけると
u'+(1-n)uP(x)=(1-n)Q(x)となりこれは2番目に紹介した形(線形)になっている。
リッカチの形
y'=a(x)+b(x)y+c(x)y2の形は1つの解y=y1がわかっている場合,u=y-y1とおく。
u'+y1'=u'+a(x)+b(x)y1+c(x)y12=a(x)+b(x)(u+y1)+c(x)(u+y1)2
u'=b(x)u+c(x)u2+2c(x)uy1={b(x)+2c(x)y1}u+c(x)u2となりベルヌーイ形になる。
(1)この微分方程式を満たす1次関数を求めよ。
(2)この微分方程式の一般解を求めよ。
\(ax=9x^2+ax+b-a^2x^2-2abx-b^2 \)x2の係数を比較するとa=±3定数項を比較するとb=0,1
xの係数を比較するとab=0 よって(a,b)=(3,0),(-3,0)
以上よりy=±3x
(2)1つの解y=3xが見つかったのでu=y-3xとおく。
\(u'+3=9x+\frac{u+3x}{x}-\frac{u^2+6ux+9x^2}{x} \)
\(u'=-3+9x+\frac{u}{x}+3-\frac{u^2}{x}-6u-9x\\=(\frac{1}{x}-6)u-\frac{u^2}{x}\)
\( u'+(6-\frac{1}{x})u=-\frac{1}{x}u^2 \)となりベルヌーイ形になる。
ここから先はベルヌーイ形からの解法です。なおu=0のときは微分方程式の解なのでu=0つまりy=3xも解です。以下ではu≠0とします。
答え\( u'+(6-\frac{1}{x})u=-\frac{1}{x}u^2 \)
v=u1-2=u-1とおくとv'=-u-2u'となるので両辺に-u-2をかけると
\(v'-(6-\frac{1}{x})v=\frac{1}{x} \)
これは線形タイプ。\( 6-\frac{1}{x} \)の原始関数は6x-logx
両辺にe-(6x-logx)=xe-6xをかけると
\( xe^{-6x}v'-(6-\frac{1}{x})xe^{-6x}v=e^{-6x} \)
左辺=\( \{xe^{-6x}v \}'\)なので
\( xe^{-6x}v=-\frac{1}{6}e^{-6x}+C \)
\( v=-\frac{1}{6x}+\frac{Ce^{6x}}{x} \)
\( u=\frac{1}{v}\)より\( u=\frac{6x}{-1+6Ce^{6x}} \)
y=u+3xより\( y=3x+\frac{6x}{-1+Ae^{6x}} \)
AもCも定数なので6C=Aとおくことで6を消去しています。
(-xe-6xをかけてもこの答えと比較して両辺を-1倍しているだけなので全く同じです)
このように微分方程式は問題文が1行のわりに解くのは大変です。自分の研究分野に合わせて必要ならば勉強し,不要な形は捨ててもいいかもしれません。
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