上野竜生です。今回はベクトルを使った不等式の証明を5つ扱います。どれも有名なのでどこかでみたことあるかとは思いますが,このサイトでも扱うことにします。
例題1 内積と大きさの不等式
\(\vec{a} , \vec{b} \)がどちらも\(\vec{0}\)ではないとする。このとき\(\vec{a},\vec{b} \)のなす角をθとすると内積の定義より
\(\vec{a}\cdot \vec{b}= |\vec{a}| |\vec{b}| \cos{\theta} \)となる。
-1≦cosθ≦1より両辺に\( |\vec{a}||\vec{b}| \)をかければ求める不等式を得る。
正確には\(\vec{a},\vec{b} \)の少なくとも一方が\(\vec{0} \)のときは「なす角」が定義できないので場合分けするほうがいいです。
例題2 次の三角不等式を示せ
(2)\( |\vec{a}+\vec{b}+\vec{c}| \leq |\vec{a}|+|\vec{b}|+|\vec{c}| \)
(右辺)2-(左辺)2≧0を示せばよい。
(最後の不等号は例題1の結果より)
左側の不等式を示す。
\(|\vec{a}|-|\vec{b}|<0 \)ならば(左辺)<0≦(右辺)なので成立。
\(|\vec{a}|-|\vec{b}|\geq 0 \)のとき両辺0以上だから
(最後の不等号は例題1の結果より)
よって求める不等式は成立。
【左側の別解】
右側の結果において\(\vec{a} \)を\(\vec{a}+\vec{b} \)に,\( \vec{b} \)を\(-\vec{b} \)におきかえると
\( |(\vec{a} + \vec{b})-\vec{b}| \leq |\vec{a}+\vec{b}|+|-\vec{b}| \)
整理すると
\( |\vec{a}| \leq |\vec{a}+\vec{b}| + |\vec{b}| \)
となるから\( |\vec{a}| -|\vec{b}| \leq |\vec{a}+\vec{b}| \)
は成立。
\( |\vec{a}+ (\vec{b}+\vec{c}) | \leq |\vec{a}|+|\vec{b}+\vec{c}| \)
もう1度(1)の右側の不等式を使うと
\( |\vec{b}+\vec{c}| \leq |\vec{b}|+|\vec{c}| \)
まとめると求める不等式
\( |\vec{a}+\vec{b}+\vec{c}| \leq |\vec{a}|+|\vec{b}|+|\vec{c}| \)
を得る。
例題3 3つのベクトルに関する次の不等式を示せ
(2)\(|\vec{a}+\vec{b}+\vec{c}|^2 \geq 3(\vec{a}\cdot \vec{b}+\vec{b}\cdot \vec{c}+\vec{c}\cdot \vec{a} )\)
(2) (左辺)
\\ = 3(\vec{a}\cdot \vec{b}+\vec{b}\cdot \vec{c}+\vec{c}\cdot \vec{a})\)
=(右辺)
(途中で(1)の結果を用いた)
それぞれ証明方法が一本道ではなく,あらゆる独特な方法で証明してあって覚えようとすると大変ですが普通の式の証明でも使っている手法が多いので慣れていれば出来ると思います。式の証明自体の頻度は低いですし,結果を適用することもさほど頻度は高くないので勉強が大変な人は次に進んでもいいでしょう。ベクトルで最も重要なのはここではなく,一次独立からの係数決定のところです。
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