上野竜生です。自然数の逆数を足したり引いたりするとlog2に近づき、奇数の逆数を足したり引いたりすると\(\frac{\pi}{4} \)に近づくという面白い性質があります。それを証明します。
それと同時に高校生が間違いやすい積分評価もあるので是非ご覧ください。
今回示したいこと
・整数の逆数を足したり引いたりするとlog2に近づく(メルカトル級数)
・奇数の逆数を足したり引いたりすると\( \frac{\pi}{4} \)に近づく(ライプニッツ級数)
証明の流れ
初項1、公比-xの等比数列の初項から第n項までの和を0から1まで積分する。これでほぼlog2が見えるのですが「余り」が出てきます。
この「余り」のn→∞での極限が0であることを示せばうまく示せます。
なお、奇数の逆数のほうは初項1、公比-x2にするだけです。
「余り」の極限が0であることを示す
まずはよくある間違いで示します。
×(誤答) 0<x<1では \(\displaystyle \lim_{n \to \infty} x^n =0 \)なので
\( \displaystyle \lim_{n \to \infty} \int_0^1 \frac{(-x)^{n}}{1+x} dx = \int_0^1 \frac{0}{1+x}dx=0 \)
なぜこれがダメかというと一般に積分と極限は順序交換できないからです。つまり
\( \displaystyle \lim_{n \to \infty} \int_0^1 f_n(x) dx = \int_0^1 \lim_{n \to \infty} f_n(x) dx \)
がなりたつとは限らないからです。ではどうするかというとはさみうちします。
分母を評価します。0<x<1のとき\( \displaystyle \frac{1}{2} < \frac{1}{1+x} < 1 \)なのでこれで評価すればOKです。
○(正答)
0<x<1では\( \displaystyle -x^{n} < \frac{(-x)^{n+1}}{1+x} < x^{n} \)が成立するので
\(\displaystyle \int_0^1 -x^{n} dx < \int_0^1 \frac{(-x)^{n}}{1+x}dx < \int_0^1 x^{n} dx \)
\(\displaystyle \int_0^1 x^{n} dx = \left[\frac{x^{n+1}}{n+1} \right]_0^1=\frac{1}{n+1}\)より両側を計算すると
\(\displaystyle -\frac{1}{n+1} < \int_0^1 \frac{(-x)^{n}}{1+x}dx < \frac{1}{n+1} \)
\( \displaystyle \lim_{n \to \infty} \frac{1}{n+1} =0 \)なのでハサミウチの原理より
\( \displaystyle \lim_{n \to \infty} \int_0^1 \frac{(-x)^{n}}{1+x} dx =0 \)
メルカトル級数の証明
初項1、公比-xの等比数列の初項から第n項までの和は
\(\displaystyle \sum_{k =1}^n (-x)^{k-1} = \frac{1-(-x)^{n}}{1+x} \)
0から1まで積分すると
(∵有限個の和ならΣと極限は順序交換できる。)一般に無限個の和なら順序交換はできません。
この式でn→∞とすると先ほど示した「余り」の極限の式より
これでメルカトル級数が示せました。
ライプニッツ級数の証明
「余り」の極限はメルカトル級数と全く同様にして
\(\displaystyle \lim_{n\to \infty} \int_0^1 \frac{(-x^2)^{n}}{1+x^2}=0 \)が示せます。
またx=tanθと置換する積分で\(\displaystyle \int_0^1 \frac{1}{1+x^2}dx = \frac{\pi}{4} \)が示せます。
ここまでは既知としています。
初項1、公比-x2の等比数列の初項から第n項までの和は
\(\displaystyle \sum_{k =1}^n (-x^2)^{k-1} = \frac{1-(-x^2)^{n}}{1+x^2} \)
0から1まで積分すると
この式でn→∞とすると
\(\displaystyle \sum_{k=1}^{\infty} \frac{(-1)^{k+1}}{2k-1} = \int_0^1 \frac{dx}{1+x^2} +0= \frac{\pi}{4} \)
これでライプニッツ級数が示せました。
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僕は、ε-N論法を使い、試みましたが、nが取れない事が、わかるので、剰余項を0にするためには、はさみうちの原理を利用してすべてに0≦X≦1の積分をすべてにとり、すると右辺は、1/n+1となるので、極限をとってはさみうちの原理を利用することにより右辺は0となるので、剰余項は0になるということは、余りが、0より割りきれた事になるので、使いました。ありがとうございます。
補足事項:何故、ε→N論法を使おうと、考えたのは、当然ながらでは、ありますが、極限関数を考え、極限と積分の順序交換が、可能か、不可能かを調べる為でありました。nが取れない事から、その時点でεN論法は使えないのは、明らかでした。これより、剰余項を0にする方法を考えれば、はさみうちの原理を使い、極限をとってはさみうちの原理を使えば、剰余項が、0となる事が明らかになりました。以上になります。ありがとうございました。
語弊がありましたので、訂正修正致しますεN論法より初めのnを定める事が、不可能であったと、訂正修正致します。申し訳ございませんでした。
ライプニッツ級数に関しては、最後にarctanθ=π/4を出しておいて、アーベルの連続性定理に、持ち込む為に、ダランベールの収束半径R=1>0から、1/1+x^2をマクローリン級数展開し、さらにx^2=-tとおいて、級数を計算し、さらにt=-x^2とおいて級数展開すれば、後は、収束半径-1<R<1
(-1<×<1)これより、項別積分可能より、
x=1は自明なので、1-1/3+1/5-1/7+・・・=π/4 R=1>0よりアーベルの連続性定理より級数は、π/4に収束するという別証明も考えてみました。個人的にアーベルの連続性定理は大好きなので。遠回りしても使って見たかったのが、好奇心からでした。