上野竜生です。恒等式や不等式の証明方法について書いていきます。
恒等式とは
xなどの変数にどんな値をいれても等号が成立するものを恒等式といいます。
例:(x+1)2=x2+2x+1 , sin(x+y)=sinx cosy+cosx sinyなど。
一方でx2=xのように一部のxでしか成り立たない式を方程式といいます。(この場合x=0,1しか成り立たない)
恒等式に関する問題は主に2パターンです。
1. (x+1)2=x2+ax+1など与えられた式が恒等式となるような定数aの値を定める。
2. 与えられた式が恒等式であることを証明する。
1.は普通係数比較をするか数値代入して求めます。今回は2.の証明について述べていきたいと思います。
恒等式の証明方法
参考書によってはたくさんの方法が書いてあるところもありますが基本的に
(左辺)-(右辺)=0 を示す!
これが最も確実な方法となります。
多くの参考書ではこの問題に対し,(左辺)と(右辺)を展開し,両辺が等しいことを確認するやり方で証明してると思います。それでもOKです。ですが次の不等式の証明と混同すると面倒だし,左辺-右辺=0のやり方でやっても移項する手間が増えるだけで実質的な計算量は変わらないので原則として左辺-右辺=0のやり方で示します。
答え(左辺)-(右辺)
=a2c2+a2d2+b2c2+b2d2-(a2c2+2abcd+b2d2)-(a2d2-2abcd+b2c2)
=0
よって題意は成立。
ラスボス級の因数分解の公式a3+b3+c3-3abc=(a+b+c)(a2+b2+c2-ab-bc-ca)を知っていれば楽ですし,対称性を残したまま計算できれば美しいですが,確実な方法はc=2-a-bを代入し(左辺)-(右辺)=0を示すことです。
答えc=2-a-bを代入し(左辺)-(右辺)=0を示せばよい。
(左辺)-(右辺)
=a3+b3+(2-a-b)3-3ab(2-a-b)-2{a2+b2+(2-a-b)2-ab-b(2-a-b)-(2-a-b)a}
=a3+b3+8-a3-b3-12a+6a2-12b+6b2-3a2b-3ab2+12ab-6ab+3a2b+3ab2
-2{a2+b2+4+a2+b2-4a-4b+2ab-ab-2b+ab+b2-2a+a2+ab}
=8-12a+6a2-12b+6b2+6ab-2{3a2+3b2+4-6a-6b+3ab}
=8-12a+6a2-12b+6b2+6ab-6a2-6b2-8+12a+12b-6ab
=0
となり題意は成立。
確実ですが今回のように工夫しないと大変なときもあります。この場合だと(a+b+c)2=4や(a+b+c)3=8であることを使って工夫できそうです。
答え(a+b+c)2=a2+b2+c2+2ab+2bc+2ca=4
(a+b+c)3=a3+b3+c3+3(a2b+ab2+b2c+bc2+c2a+ca2)+6abc=8より
(左辺)=8-3(a2b+ab2+b2c+bc2+c2a+ca2)-9abc
(右辺)=2(4-3ab-3bc-3ca)
よって(左辺)-(右辺)
=-3(a2b+ab2+b2c+bc2+c2a+ca2)-9abc+6ab+6bc+6ca
=-3(a2b+ab2+b2c+bc2+c2a+ca2+3abc)+6ab+6bc+6ca
=-3{a(ab+bc+ca)+b(ab+bc+ca)+c(ab+bc+ca)}+6ab+6bc+6ca
=-3(a+b+c)(ab+bc+ca)+6(ab+bc+ca)
=-6(ab+bc+ca)+6(ab+bc+ca)=0 (∵a+b+c=2)
より題意は成立
こういうやり方(対称式のまま)で解けたら気持ちいいですが確実性はなくなります。ひらめきの部分に頼ることになるのでこのやり方でできたらラッキー、無理なら地道に上のやり方で・・・という形になります。
不等式の証明
不等式の証明の基本は2つです。
1. (大きいほう)-(小さいほう)≧0を証明する。
2. (左辺)≧0,(右辺)≧0ならば(大きいほう)2-(小さいほう)2≧0を示しても良い。
もしかしたら参考書には(左辺)を計算し,(右辺)と見比べて示すやり方も紹介してるかもしれませんが恒等式の時に比べて不等式の証明はこのやり方でやるのは至難の業になりやすいです。だから恒等式も不等式も両辺を引き算して0と等しい(0以上)を証明するやり方をオススメしているわけです。
答え(左辺)-(右辺)
=x2+y2+z2-xy-yz-zx
=\(\frac12\{(x-y)^2+(y-z)^2+(z-x)^2 \}\)
≧0
x-y=0かつy-z=0かつz-x=0つまりx=y=zのとき
と答えましょう。
(左辺)-(右辺)≧0を示せればいいですが難しそうです。ルートが入っているので2乗して比較しましょう。2乗するときは必ず両辺が0以上であることを答案上に残しましょう。
答え\( 1+x\geq 0, \sqrt{1+2x} \geq 0\)より両辺2乗した式
(1+x)2>1+2xを示せばよい。
(左辺)-(右辺)=1+2x+x2-(1+2x)=x2>0
より元の不等式も成立
基本をしっかり理解したうえで計算量が多くなりそうな時だけ工夫する。それが鉄則です。
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