上野竜生です。\(\int \frac{1}{\sin{x}}dx , \int \frac{1}{\cos{x}}dx \)の計算は今まで通り計算できますがこの2つを2パターンで解いてみたいと思います。
\( \displaystyle \int \frac{dx}{\sin{x}} \)
方法1: 分母分子にsinxをかけて分母を1-cos2xに直し,t=cosxとおく。
最も思いつきやすい方法ですし,いろいろな積分のテクニックを使います。実際に計算してみます。
\( \displaystyle \int \frac{dx}{\sin{x}} = \int \frac{\sin{x}dx}{\sin^2{x}}=\int \frac{\sin{x}dx}{1-\cos^2{x}} \)
ここで\( t=\cos{x} \)とおくと\( \frac{dt}{dx}=-\sin{x} \)なので
\( \displaystyle \int \frac{-dt}{1-t^2}=\int \frac{1}{2} \left(\frac{1}{t-1}-\frac{1}{t+1}\right) dt \\
=\displaystyle \frac{1}{2}(\log{|t-1|}-\log{|t+1|})+C\\
=\displaystyle \frac{1}{2}\log{\left|\frac{\cos{x}-1}{\cos{x}+1}\right|}+C=\frac{1}{2}\log{\frac{1-\cos{x}}{1+\cos{x}}}+C \)
ただしCは積分定数。
方法2: 分母を2倍角の公式で展開し分母分子を\( \cos^2{\frac{x}{2}} \)で割る
次に有名な方法です。一応のせますが,アイデアが難しいのでよっぽどでない限り方法1をオススメします。
\(\displaystyle \int \frac{dx}{\sin{x}}=\int \frac{dx}{2\sin{\frac{x}{2}}\cos{\frac{x}{2}}}=\int \frac{\frac{dx}{\cos^2{\frac{x}{2}}}}{2\tan{\frac{x}{2}}}\)
ここで\( t=\tan{\frac{x}{2}} \)とおくと
\( \displaystyle \frac{dt}{dx}=\frac{1}{2\cos^2{\frac{x}{2}}} \)なので
\( \displaystyle \int \frac{1}{t}dt = \log{|t|}+C=\log{\left|\tan{\frac{x}{2}}\right|}+C \)
と求めることができました。
結局t=tan(x/2)と置換するので最初からt=tan(x/2)と置換しても求められます。ただ,最初から置換すると計算がやや面倒です。
他の解法を紹介しているサイトもありますが実質この2パターンのどちらかですし,現実的に使うことはないのでここでやめておきます。
解法1の結果と解法2の結果は等しいの?
ぱっと見では異なる答えになってますが実はどちらも正しいです。解法1の答えと解法2の答えが等しいことを証明してみます。
[証明]
\( \displaystyle \frac{1}{2}\log{\frac{1-\cos{x}}{1+\cos{x}}}- \log{\left|\tan{\frac{x}{2}}\right|} \)が定数となることを示せば良い。(積分定数の違いは無視できるので必ずしも0でなくても良い)
半角の公式より
\(\displaystyle \frac{1}{2}\log{\frac{2\sin^2{\frac{x}{2}}}{2\cos^2{\frac{x}{2}}}}-\log{\left|\tan{\frac{x}{2}}\right|}\\
=\frac{1}{2}\log{(\tan{\frac{x}{2}})^2}-\log{\left|\tan{\frac{x}{2}}\right|}\\
=0 \)
(Q.E.D.)
それでは次にcosのほうの積分を考えてみます。
\( \displaystyle \int \frac{dx}{\cos{x}} \)
方法1: 分母分子にcosxをかけて分母を1-sin2xに直し,t=sinxとおく。
さっきと同様にできます。一応示しておきます。
\( \displaystyle \int \frac{dx}{\cos{x}} = \int \frac{\cos{x}dx}{\cos^2{x}}=\int \frac{\cos{x}dx}{1-\sin^2{x}} \)
ここで\( t=\sin{x} \)とおくと\( \frac{dt}{dx}=\cos{x} \)なので
\( \displaystyle \int \frac{dt}{1-t^2}=\int \frac{1}{2} \left(\frac{1}{t+1}-\frac{1}{t-1}\right) dt \\
=\displaystyle \frac{1}{2}(\log{|t+1|}-\log{|t-1|})+C\\
=\displaystyle \frac{1}{2}\log{\left|\frac{\sin{x}+1}{\sin{x}-1}\right|}+C=\frac{1}{2}\log{\frac{1+\sin{x}}{1-\sin{x}}}+C \)
ただしCは積分定数。
方法2: 1/sinxの解法2と同様に・・・?
同様にはできません。なぜならsinxとcosxでは2倍角の公式の形が異なるからです。このような場合\( \cos{x}=\sin{(\frac{\pi}{2}-x)}\)を利用して解くことになります。
ここまでくるとこの解法のありがたみは薄れてきます・・・。一応明示します。なお置換しなくても\( \int \frac{f'(x)}{f(x)} dx= \log{|f(x)|}+C \)を公式として利用すれば楽なので利用します。
\(\displaystyle \int \frac{dx}{\cos{x}}=\int \frac{dx}{\sin{(\frac{\pi}{2}-x)}}\\ =\displaystyle \int \frac{dx}{2\sin{(\frac{\pi}{4}-\frac{x}{2})}\cos{(\frac{\pi}{4}-\frac{x}{2})}}=\int \frac{\frac{dx}{\cos^2{(\frac{\pi}{4}-\frac{x}{2})}}}{2\tan{(\frac{\pi}{4}-\frac{x}{2})}}\\
=\displaystyle \int \frac{-\{\tan{(\frac{\pi}{4}-\frac{x}{2})}\}'}{\tan{(\frac{\pi}{4}-\frac{x}{2})}}\\
=\displaystyle -\log{\left|\tan{(\frac{\pi}{4}-\frac{x}{2})}\right|}+C\)
とりあえず受験生はどちらも方法1で計算できるようになれば十分でしょう。
解説を読んで数学がわかった「つもり」になりましたか?数学は読んでいるうちはわかったつもりになりますが演習をこなさないと実力になりません。そのためには問題集で問題を解く練習も必要です。オススメの参考書を厳選しました
<高校数学>上野竜生です。数学のオススメ参考書などをよく聞かれますのでここにまとめておきます。基本的にはたくさん買うよりも…
上野竜生です。大学数学の参考書をまとめてみました。フーリエ解析以外は自分が使ったことある本から選びました。 大…
上野竜生です。当サイトでも少し前まで各ページで学習サイトをオススメしていましたが他にもオススメできるサイトはた…