上野竜生です。コーシーシュワルツの不等式は難関大学だとたまに出てきたりします。知っておくと便利ですし,内積と結び付ければ覚えやすいと思うので難関大学を狙う人は理解しましょう。
コーシーシュワルツの不等式(一般)
\( \displaystyle \left(\sum_{k=1}^n a_k^2 \right) \left( \sum_{k=1}^n b_k^2 \right) \geq \left( \sum_{k=1}^n a_kb_k \right)^2 \)
等号成立は比としてa1:a2:…:an=b1:b2:…:bnのとき
[証明]
xについての2次方程式
$$ f(x)=\sum_{k=1}^n (a_k x- b_k)^2 $$
を考える。f(x)≧0なのでf(x)の判別式は0以下である。f(x)を展開すると
$$ f(x)=\left(\sum_{k=1}^n a_k^2\right)x^2-2\left(\sum_{k=1}^n a_kb_k\right)x+\left(\sum_{k=1}^n b_k^2\right) $$
であるから,判別式をDとするとD/4は
$$ \left( \sum_{k=1}^n a_kb_k \right)^2-\left(\sum_{k=1}^n a_k^2 \right) \left( \sum_{k=1}^n b_k^2 \right) \leq 0$$
となり、求める不等式を得る。等号成立はすべてのk(1≦k≦n)に対し
akx-bk=0となるときである。よってa1:a2:…:an=b1:b2:…:bnである。
覚えてないと書けないようなうまい証明ですが、あまり一般のnに対するコーシーシュワルツの不等式は入試頻出ではありません。n=2,3の場合が頻出です。
n=2,3の場合のコーシーシュワルツの不等式
(i) \( (a^2+b^2)(x^2+y^2)\geq (ax+by)^2 \)
等号成立はa:b=x:yのとき
(ii) \( (a^2+b^2+c^2)(x^2+y^2+z^2) \geq (ax+by+cz)^2 \)
等号成立はa:b:c=x:y:zのとき
これはベクトルの内積で考えれば覚えやすいです。
\( \vec{\alpha}=(a,b,c) , \vec{\beta}=(x,y,z) \)とし、\(\vec{\alpha},\vec{\beta}\)のなす角をθとおくと
\( |\vec{\alpha}|^2|\vec{\beta}|^2 \geq (\vec{\alpha}\cdot \vec{\beta})^2 \)
がなりたつ。(∵\(\vec{\alpha}\cdot \vec{\beta} = |\vec{\alpha}||\vec{\beta}|\cos{\theta}\))
これを成分で書くと(ii)を得る。2次元ベクトルにすると(i)を得る。
等号成立はcosθ=±1のとき,つまり2つのベクトル(a,b,c)と(x,y,z)のなす角が0または180°であり,a:b:c=x:y:zのときである。
応用例
例1:(x+y+z)2≦3(x2+y2+z2)を示せ
→上のn=3の場合のコーシーシュワルツの不等式にa,b,c=1を代入すればすぐ。
例2:x2+y2+z2≧xy+yz+zxを示せ
→上のn=3の場合のコーシーシュワルツの不等式にa=y,b=z,c=xを代入すれば示せる。
ちなみにこれらの正攻法の証明は
例2: (左辺)-(右辺)
=\( \frac{1}{2}(2x^2+2y^2+2z^2-2xy-2yz-2zx) \\
=\frac{1}{2}\{ (x-y)^2+(y-z)^2+(z-x)^2 \} \geq 0\)
例1: (右辺)-(左辺)
=2x2+2y2+2z2-2xy-2yz-2zx
なので以下例2と同様。
となります。
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