上野竜生です。\(\displaystyle a_{n+1}=\frac{aa_n+b}{ca_n+d} \)の形を1次分数型の漸化式と呼ぶことにします。出題頻度はあまり高くありませんがこの形の解法を紹介します。c=0のときはそもそも特殊解型になるのでc≠0とします。
一般的な解法
b=0のとき
逆数をとると\(\displaystyle \frac{1}{a_{n+1}}=\frac{ca_n+d}{aa_n}=\frac{d}{aa_n}+\frac{c}{a} \)
\(\displaystyle b_n=\frac{1}{a_n} \)とおけば特殊解型になる。
ただし逆数を取る前に\(a_n \neq 0\)を確かめる必要があります。\(a_1 \neq 0\)なら帰納的に明らかですが,書かないと減点になる恐れがあるのでひとこと書きましょう。
b≠0のとき
特性方程式(漸化式の\(a_{n+1},a_n\)の部分をαに変えて得られる式)の解をs,tとする。
よって\(\displaystyle \alpha=\frac{a\alpha+b}{c\alpha+d} \)
\( c\alpha^2+(d-a)\alpha-b=0 \)の解がsだから
\( cs^2+(d-a)s-b=0 \)・・・①
このとき漸化式の両辺からsを引くと
\(\displaystyle a_{n+1}-s =\frac{(aa_n+b)-s(ca_n+d)}{ca_n+d}=\frac{(a-sc)(a_n-s)}{ca_n+d} \)
が成り立つ。
(∵①を変形すれば\( b-sd=-s(a-sc) \)が成り立つので)
b=0の形に帰着される。つまり逆数をとって
\(\displaystyle b_n=\frac{1}{a_n-s} \)とおくと特殊解型になる。
1次分数型自体滅多に出ないのでこの解法だけ知っていればいいですが参考程度にもう1つの解き方をサクッと言っておきますと
\(\displaystyle b_n=\frac{a_n-t}{a_n-s}\)とおけば\(b_n\)は等比数列型になります。具体的には下の例題でやってみます。最初に示した特性方程式の解を引くやり方のほうが自然な発想だと思うのでこちらの解法は知らなくてもいいでしょう。
例題
(2)\(\displaystyle a_1=7 , a_{n+1}=\frac{3a_n-4}{a_n -2}\)
(3)\(\displaystyle a_1=4 , (a_{n+1}+1)(a_n-1)=-1\)
両辺の逆数をとると
\(\displaystyle \frac{1}{a_{n+1}}=\frac{2a_n-3}{a_n}=2-\frac{3}{a_n} \)
\(\displaystyle b_n=\frac{1}{a_n} \)とおくと\(\displaystyle b_1=\frac13 \)
\(\displaystyle b_{n+1}=-3b_n+2 \)
両辺から\(\frac12 \)を引くと
\(\displaystyle b_{n+1}-\frac12 =-3(b_n-\frac12) \)
\( \displaystyle \{ b_n -\frac12 \} \)は初項\(-\frac16 \),公比\(-3\)の等比数列だから
\(\displaystyle b_n-\frac12 = -\frac{1}{6}\cdot (-3)^{n-1} =\frac{(-3)^n}{18} \)
\(\displaystyle b_n= \frac{9+(-3)^n}{18} \)
\(\displaystyle a_n=\frac{1}{b_n} = \frac{18}{9+(-3)^n} \)
(2)特性方程式を解く
\(\displaystyle \alpha=\frac{3\alpha-4}{\alpha-2} \)
\( \alpha^2 - 2\alpha=3\alpha-4 \)
\( (\alpha-1)(\alpha-4)=0 \)
\( \alpha=1,4 \)
両辺から1または4を引けばよさそうとわかります。ここでは1をひいてみます。
\(\displaystyle a_{n+1}-1=\frac{3a_n-4}{a_n-2}-1=\frac{2(a_n-1)}{a_n-2}\)
帰納的に\(a_n \neq 1\)なので両辺の逆数をとると
\(\displaystyle \frac{1}{a_{n+1}-1}=\frac{a_n-2}{2(a_n-1)}=\frac{1}{2}-\frac{1}{2(a_n-1)} \)
\(\displaystyle b_n=\frac{1}{a_n-1} \)とおくと\(\displaystyle b_1=\frac16 \)
\(\displaystyle b_{n+1}=-\frac{1}{2}b_n+\frac{1}{2}\)
両辺から\(\frac13 \)をひくと
\(\displaystyle b_{n+1}-\frac13 =-\frac12 (b_n-\frac13) \)
\( \{b_n-\frac13 \} \)は初項\(-\frac16 \),公比\(-\frac12 \)の等比数列だから
\(\displaystyle b_n=-\frac{1}{6}(-\frac12)^{n-1}+\frac13=\frac{ (-\frac{1}{2})^n +1}{3} \)
よって
\(\displaystyle a_n=\frac{1}{b_n}+1 \\ =\displaystyle \frac{3}{(-\frac12)^n+1}+1 \\ \displaystyle= \frac{(-\frac12)^n +4}{(-\frac12)^n + 1}\)
【別解】 \(\displaystyle c_n=\frac{a_n-4}{a_n-1}\)とおく。
\(\displaystyle c_{n+1}=\frac{a_{n+1}-4}{a_{n+1}-1} \\ = \displaystyle \frac{\frac{3a_n-4}{a_n-2}-4}{\frac{3a_n-4}{a_n-2}-1} \\ = \displaystyle \frac{(3a_n-4)-4(a_n-2)}{(3a_n-4)-(a_n-2)} \\ = \displaystyle \frac{-a_n+4}{2a_n-2}=-\frac{1}{2}c_n \)
\(c_n \)は初項\(\frac12 \),公比\(-\frac12 \)の等比数列だから
\(\displaystyle c_n=\frac12 (-\frac12)^{n-1}=-(-\frac12)^n \)
よって
\(\displaystyle \frac{a_n-4}{a_n-1} =-(-\frac12)^n \)を\(a_n \)について解けばよい。
\(\displaystyle a_n-4=-(-\frac12)^na_n+(-\frac12)^n \)
∴\(\displaystyle a_n=\frac{(-\frac12)^n+4}{(-\frac12)^n+1}\)
与えられた漸化式を整理すると
\( a_n a_{n+1}-a_{n+1}+a_n=0 \)
\(a_{n+1}=0\)と仮定すると上の式から\(a_n=0\)
繰り返すと\(a_n=a_{n-1}=a_{n-2}=\cdots=a_1=0\)
これはa1=4に矛盾。よってan≠0
両辺を\( a_n a_{n+1}\neq 0 \)で割ると
\(\displaystyle 1-\frac{1}{a_n} + \frac{1}{a_{n+1}}=0 \)
\(\displaystyle c_n=\frac{1}{a_n } \)とおくと\(c_1=\frac14 \)
\(\displaystyle c_{n+1}=c_n-1 \)
\(\displaystyle c_n=\frac{1}{4}-(n-1)=\frac{-4n+5}{4} \)
\(\displaystyle a_n=\frac{1}{c_n}=\frac{4}{5-4n} \)
\(\displaystyle a_{n+1}+1=-\frac{1}{a_n-1} \)
\(\displaystyle a_{n+1}=-\frac{a_n}{a_n-1}\)
逆数を取ると
\(\displaystyle \frac{1}{a_{n+1}}=\frac{1-a_n}{a_n}=-1+\frac{1}{a_n} \)
のように考えて1次分数型に持ち込みます。ただこういう変形過程を見せてしまうと途中でan≠1も示さなくてはなりません。かなり面倒です。本質的には逆数にしたあとの式だけあれば十分(これならan≠0だけ示せばよい)のでan≠1を確かめなくてもよくなるように変形しているのです。
調和数列型も1次分数型も出題頻度は低いのでできるだけ覚えることは少なくしたいところです。
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