上野竜生です。因数定理とは次の定理です。
多項式f(x)が(x-α)で割り切れる⇔f(α)=0
たったこれだけですがかなり使えます。実際に例題をいくつか見ていきましょう。
例題1
この問題は次のように言い換えられます。
余りをax+bとおくと
\( x^5+3x^2-ax-b\)は(x-1)(x-2)で割り切れる。
そこで,この左辺(5次式のほう)をf(x)とします。
(x-1)で割り切れるからf(1)=0,
(x-2)で割り切れるからf(2)=0です。
この2つを連立させます。
\( \displaystyle \left\{ \begin{eqnarray}
f(1)=4-a-b&=&0 \\
f(2)=44-2a-b&=&0 \end{eqnarray} \right. \)
よりa=40 , b=-36 ゆえに余りは40x-36
このような使い方ができます。
例題2
このような場合も\(f(x)=x^3-2x-4\)とおき,f(2)=0になることに気づけば(x-2)で因数分解できることがわかります。あとは割り算を実行して
\( (x-2)(x^2+2x+2) \)が答えとなります。
さらに言うとここからこの方程式の解を求めることができます。高校数学では因数分解できないタイプの3次式は解けません。(本当は求める公式がありますが誘導なしではとても無理)なのでこのやり方をマスターすれば試験に出る3次式はすべて解けることになります。
少し難しい問題を出します。
例題3
これはどうでしょう?例題1と同様に余りをax+bとおいて計算します。
\( f(x)=x^5+3x^2-ax-b \)とおくとf(1)=0かつf(1)=0??
あれ?となってしまいます。まず,f(1)=0は間違いないのでa+b=4は導出できます。方法としてはここでb=4-aを代入し(x-1)で実際に1回割ります。
解1 実際に割り算をする
\( (x-1)(x^4+x^3+x^2+4x-(a-4)) \)になるのでこの右の( )内についてもう1度因数定理を使えば1+1+1+4-a+4=0となり,a=11,つまりb=-7が出ます。
よって答えは11x-7と出せます。
解2 変数変換して二項定理
「\( x^5+3x^2-ax-b\)が\((x-1)^2\)で割り切れる」をy=x-1とおいて変数変換してみます。x=y+1を代入すると
\( (y+1)^5+3(y+1)^2-a(y+1)-b \)が\(y^2\)で割り切れる となるので二項定理で展開すればOKです。
\( (y+1)^5+3(y+1)^2-a(y+1)-b \\
=y^5+5y^4+10y^3+10y^2+5y+1+3y^2+6y+3-ay-a-b
\\=y^5+5y^4+10y^3+13y^2+(11-a)y+(4-a-b)\)
となり,a=11, b=-7が得られるので答えは11x-7となります。
解3 微分の条件
しかし,実は\( (x-a)^2 \)で割り切れる条件を簡単に出すことができます。
これを使えば一瞬で出せます。
f(1)=0よりa+b=4
f'(1)=0を計算する。\(f'(x)=5x^4+6x-a\)よりf'(1)=11-a=0
よってa=11,b=-7となり11x-7
2変数以上の因数分解にも使えます。
例題4
\( P(x)= (x-1)(x+1)^2 Q(x) +ax^2 + bx +c \)とおける。
x-1で割ると余りが1だから剰余定理より
P(1)=a+b+c=1 ・・・①
次にP(x)を(x+1)2で割ると
\( P(x)= \{ (x-1)Q(x)-a\} (x+1)^2 + (b-2a)x+(c-a) \)
余りが3x+2だから
b-2a=3かつc-a=2・・・②
①②を解くとa=-1,b=1,c=1
よって余りは\( -x^2+x+1 \)
例題5
これをaの関数とみてf(a)とします。対称式なので(a+b+c)でくくれそうです。そこで因数定理からf(-b-c)を計算してみます。これが0になれば(a-(-b-c))つまり(a+b+c)でくくれることがわかります。
\(\begin{eqnarray} f(-b-c)&=&(-b-c)^3+b^3+c^3-3(-b-c)bc\\&=&-b^3 - 3b^2c -3bc^2 -c^3 + b^3+c^3+3b^2c+3bc^2\\&=&0 \end{eqnarray}\)
よって(a+b+c)で割り切れ,実際にひっ算をすると答えは
\((a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)\)と求まります。
この考えができない人が多いです。
最後に応用問題を出します。解けた人は自信を持ってくださいね。
例題6
一般のn乗でも出せなくはないですが,何でもいいのでnを決めないと高校生には厳しいと思います。そこで今回は10にしてみました。これ,因数分解できますか?
\(f(x)=x^{10}-1\)とおく。f(1)=0なので(x-1)で割り切れる。よって
\( (x-1)(x^9+x^8+x^7+x^6+x^5+x^4+x^3+x^2+x+1)\)
これでは不十分です。
f(-1)=0なので(x-1)(x+1)で割り切れるから
\( (x-1)(x+1)(x^8+x^6+x^4+x^2+1) \)
これでもまだ不十分です。さて,わかりますか?
まず,\( (x^{10}-1)=(x^5+1)(x^5-1) \)とできればあとは難しくありません。それぞれ因数定理を使えば
\( (x^5+1)=(x+1)(x^4-x^3+x^2-x+1), \\ (x^5-1)=(x-1)(x^4+x^3+x^2+x+1) \)
となるので
\( (x+1)(x-1)(x^4+x^3+x^2+x+1)(x^4-x^3+x^2-x+1)\)
一応これが答えです。でもせっかくだから3つめと4つめの( )内がもう因数分解できないことを示したいところです。
4次式なので1次式か2次式で割り切れるはず。1,-1を代入しても0にはならないから1次式では割り切れません。あとは2次式で割り切れると仮定して\( (x^2+ax+b)(x^2+cx+d)\)を展開し係数比較すればOKです。a,b,c,dは存在しないことがわかります。
例題7
\(x^2+x+1\)で割る問題もたまに出ます。この問題はズバリωに注目します。ωとは\(ω^3=1\)を満たすもののうちω=1でないものの1つのことで,次の2つの性質を満たします。
ii) \(ω^2+ω+1=0\)
これを使うとf(ω)=0,f(\(ω^2\))=0となるので\((x-ω)(x-ω^2)=x^2+x+1\)で割り切れます。
<補足>
\( f(\omega)=\omega^7+\omega^2+1=(\omega^3)^2\omega+\omega^2+1\)
\(=\omega+\omega^2+1=0\)
となります。
このぐらいできれば因数定理はマスターしたといっていいでしょう。
解説を読んで数学がわかった「つもり」になりましたか?数学は読んでいるうちはわかったつもりになりますが演習をこなさないと実力になりません。そのためには問題集で問題を解く練習も必要です。オススメの参考書を厳選しました
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