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上野竜生です。対称式以外の因数分解のやり方は前回お伝えしましたが今回は対称式の因数分解の仕方を教えます。

対称式の因数分解

対称式とは

たとえばx3+y3のような式のことです。ちなみにこういうのは明らかに対称式っぽいですが(3x-2y)(2x-3y)とかは対称式でしょうか?少し迷いませんか?正確な定義を書いておきますね。

対称式とは変数を入れ替えてももとの式と変わらないものをいいます。

今の式の場合(3x-2y)(2x-3y)=(3y-2x)(2y-3x)が成り立てば対称式ですし,成り立たなければ対称式ではありません。(右辺は左辺の式にx→yを,y→xを代入したもの)

実際計算するとこの等式は成り立ちますので対称式です。展開すると明らかですよね(6x2-13xy+6y2

3変数の場合x,y,zのところに(x,y,z)=(X,Y,Z)をいれようが(Y,Z,X)をいれようが(X,Z,Y)をいれようが同じになるものを言います。(6通りあります)

6通りというと大変そうですがあくまでも厳密な定義はこうだよ,というだけで実際は見たら明らかですのであまり気にしなくていいでしょう

具体例

x3+y3+z3-3xyz は対称式

xy+yz+zx は対称式

x+y+3z-xyz-2z も対称式

x2 + (y+z)2 は対称式ではない

重要な定理

すべての対称式は基本対称式の多項式で表すことができる。

基本対称式とは2次式の場合「x+y」と「xy」のみです。

3次式の場合「x+y+z」「xy+yz+zx」「xyz」のみです。

これを知っていれば因数分解は非常に楽です。

正攻法でできなければ(x+y+z)でくくってみよう

因数分解の最大のボスといっていい式が

$$ x^3+y^3+z^3-3xyz $$

ですよね。これを因数分解してみましょう。

正攻法だとたとえば

\(x^3+y^3\)が2次の対称式なのでこれは\(x+y\)と\(xy\)のみで

\(x^3+y^3=(x+y)^3-3x^2y-3xy^2\\=(x+y)^3-3xy(x+y)\)

と表すことができます。よって

\( x^3+y^3+z^3-3xyz\\=(x+y)^3 -3xy(x+y)+z^3-3xyz \\= (x+y)^3+z^3-3xy(x+y+z) \)

となります。ここで\( x+y=A\)と思うと\(A^3+z^3\)は上の式から\( (A+z)^3-3Az(A+z)\)と書けるので

(与式)

\(=(A+z)^3-3Az(A+z)-3xy(x+y+z) \)

ここで\(A=x+y\)を元に戻すと

(与式)

\(=(x+y+z)^3-3(x+y)z(x+y+z)-3xy(x+y+z) \)
\(= (x+y+z)\{(x+y+z)^2-3(x+y)z-3xy\}\)
\(=(x+y+z)\{(x^2+y^2+z^2+2xy+2yz+2zx)-3zx-3yz-3xy\}\)
\(=(x+y+z)(x^2+y^2+z^2-xy-yz-zx) \)

となります。

しかしこれを思い出せない場合はとりあえず(x+y+z)で割る!これを頭に入れておきましょう。

やり方は整式の除法で習う割り算のひっ算の形でやればいいです。

割り算のひっ算

これで

\( (x+y+z)(x^2-(y+z)x+y^2-yz+z^2) \)
\( = (x+y+z)(x^2+y^2+z^2-xy-yz-zx) \)

と因数分解できますね。

 

対称式っぽいけど正負が変わる場合

たとえば\( x^3-y^3 \)など、xとyを入れ替えるとプラスマイナス以外は同じですが符号が逆転してしまうものもあります。これらは交代式といいます。この場合、次のように計算します。

手順1: 2変数なら(x-y)で、3変数なら(x-y)(y-z)(z-x)で割ってみる

手順2: 残った部分は対称式なので今まで通りの方法で因数分解

これでできます。

 

展開と違って因数分解はテクニックが必要です。皆さんも因数分解をマスターしましょう!

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