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上野竜生です。数学検定準1級の積分(高校数IIIレベル)はできるけれど,数学検定1級レベルの積分はどんなの?という人に向けて準1級の知識を仮定して1級を解説します。

数検1級レベル積分

 

ちなみに\(\displaystyle  \int_{0}^{\infty} は \lim_{R\to \infty} \int_{0}^{R} \)だと思ってください。他も同様です。ただし,マイナス無限大から無限大の積分は

$$ \int_{- \infty}^{\infty} f(x) dx = \lim_{R\to \infty , R'\to \infty} \int_{-R}^{R'} f(x)dx $$

です。つまり,RとR'は一致するとは限らないことに注意してください。

ただし「値を求めよ」といわれる積分は大体R=R'と仮定して大丈夫です。(特に数検1級1次のような答えのみの場合)

増えるパターンは大きく4つです。

逐次積分

単純に積分を2回行います

例1:$$ \int_{0}^{1} \int_{0}^{2} xy dxdy = \int_{0}^{1} \left[ \frac{1}{2}x^2 y \right]_{x=0}^{x=2} dy $$ $$= \int_{0}^{1} 2y dy=[ y^2 ]_{0}^{1}=1 $$

例2:$$ \int_{0}^{1} \int_{0}^{y} xy dxdy = \int_{0}^{1} \left[ \frac{1}{2}x^2 y \right]_{x=0}^{x=y} dy $$ $$= \int_{0}^{1} \frac{1}{2}y^3 dy=\left[ \frac{1}{8}y^4 \right]_{0}^{1}=\frac{1}{8} $$

 

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逐次積分(順序変更つき)

上の例では「x→y」の順番に積分していますが,ある条件の下では「y→x」の順番に積分しても結果は変わりません。その条件は本当は毎回確かめるべきなのですが数検1級1次でそんなことを確認している余裕はないはずですので試験にでる関数は全部順序交換可能だと思ってもいいでしょう。

上の例で順序を交換してみます。

例1$$ \int_{0}^{1} \int_{0}^{2} xy dxdy =\int_{0}^{2} \int_{0}^{1} xy dydx $$ $$=
\int_{0}^{2} \left[ \frac{1}{2}xy^2 \right]_{y=0}^{y=1} dx = \int_{0}^{2} \frac{1}{2}x dx=1 $$

例2$$\begin{eqnarray}
& &\int_{0}^{1} \int_{0}^{y} xy dxdy =\int_{0}^{1} \int_{x}^{1} xy dydx\\
&=&
\int_{0}^{1} \left[ \frac{1}{2}x y^2 \right]_{y=x}^{y=1} dx  \\
&=& \int_{0}^{1} \frac{1}{2}(x - x^3) dx=\left[ \frac{1}{4}x^2 - \frac{1}{8}x^4 \right]_{0}^{1}=\frac{1}{8}
\end{eqnarray} $$

となり,上の例と答えは一致します。ここで2つめの式の最初の順序交換に注目しましょう。積分区間がx→1ですね?

なぜこのようになるのかというと積分区間は0<x<yかつ0<y<1,つまり0<x<y<1です。xからみるとまず0→yで積分し,次にyを0→1で積分してますが,順序を交換したことによってyからみるとまずx→1で積分し,次にxで0→1で積分すれば同じ領域で積分したことになります。この対応を間違わないようにすることが大切です。

積分区間参考図

なお,順序交換しても値は変わりませんがどちらか片方は積分が不可能(原始関数が見つからない)ことがあります。こういうときは必ず順序を交換しましょう。

 

ヤコビ行列を用いた積分

x,yによる積分を置換して他の文字(たとえばr,θ)で積分することができます。ただし,このとき

dxdy=drdθ

は一般には成り立ちません。(dxdy=(ヤコビ行列式)×drdθがなりたちます。)特に有名なのは極座標変換(r,θ)でそのときのヤコビアンはrです。

例題:原点を中心とする半径1の円の内部をDとするとき,\( \int_{D} e^{(-x^2-y^2)}dxdy \)を計算せよ

積分する領域が円なので,これは間違いなく極座標に変換します。極座標変換のヤコビ行列式はrです。(←重要なので覚えましょう。)なお,全平面で積分するときも極座標変換が有効なことがあります。被積分関数に「\( x^2+y^2 \)」が含まれるなど,極座標にすればキレイな形なのに・・・と思えば変換してみましょう。

よって

答え \(\displaystyle \int_{D} e^{(-x^2-y^2)}dxdy
\\ \displaystyle =\int_{0}^{2\pi} \int_{0}^{1} e^{-r^2} r drd\theta
\\ \displaystyle = \int_{0}^{2\pi} \left[-\frac{1}{2} e^{-r^2}\right]_{r=0}^{r=1} d\theta
\\ \displaystyle = \int_{0}^{2\pi} \frac{1}{2} - \frac{1}{2}e^{-1} d\theta \\ \displaystyle = \pi \left( 1-\frac{1}{e} \right) \)

となります。

最初のイコールですが極座標変換なので\(x^2+y^2=r^2\)です。さらに単位円の内部なのでrの範囲は0≦r≦1,1周全部なのでθの範囲は0≦θ≦2πです。dxdy=ヤコビアン×dydθ=rdrdθとなります。

その他のヤコビアンの計算方法についてはこちら

 

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複素積分(→別ページで解説します)

これを解説するとそれだけで1ページ使えるのでこれは次回に回します。

いずれも準1級レベルはできないと話にならないのでそこまでで詰まってる人はそこを完璧にしましょう。置換積分や部分積分などは当たり前に出てきます(他分野の問題でも)。

 

この辺りの参考書が欲しい方は次の本をオススメします。

参考書は上にある解析入門IIの7章が役に立ちます。

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