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上野竜生です。今回は微分演算子を用いた微分方程式の解法を紹介します。

微分演算子とは

今まで\(\frac{dy}{dx}\)やy’と表していたものをDyと表します。このDを微分演算子といいます。
たとえば3y’は3Dyと書けますし,y’+2y=(D+2)y という風にDの式で書くことができます。
\(D^2 \)は\( y’’=\frac{d^2y}{dx^2} \)のことです。以下同様にn階微分のことを\(D^n \)で表します。

Dで表現すると「何で微分したのか」の情報は抜け落ちます。つまり\(\frac{dy}{dx} \)も\(\frac{dy}{dt} \)もDyになっちゃいます。
今は線形の微分方程式の解法としてDを用いると便利だよ!ってことを紹介しています。たとえば\( (y’)^2 \)はどう表すの?って思った人もいるかもしれませんがそれは表現できません。もはや線形の域を超えているので表せなくても問題ないのです。
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例題1

(D2-3D+2)[sin5x]を求めよ。
答え求めるものはf(x)=sin5xとおいたときの
f''(x)-3f'(x)+2f(x)
である。
f'(x)=5cos5x , f''(x)=-25sin5xだから
-25sin5x-15cos5x+2sin5x
=-23sin5x-15cos5x

このようにyが与えられていたときDyも(D2-3D+2)[y]も一般にf(D)[y]も求めるのは非常に簡単です。だって微分するだけですから。
今から問題にしたいのはこの逆,たとえば(D2-3D+2)f(x)=sin5xとなるf(x)をどうやって求めるか,一般にはg(x)が与えられていて,Dy=g(x)とか(D2-3D+2)[y]=g(x)とかを満たすyを求めることが問題です。これがまさに線形の微分方程式の解法になります。
微分演算子を使うといろいろな「公式」が生まれるのでそれを工夫して適用すれば比較的簡単に求められます。まずDの式は普通の多項式のように扱うことができます。(D-a)(D-b)=(D-b)(D-a)とか部分分数分解とかそういうのが普通にできます。たとえばf(D)[y]=g(x)を満たすyは\(\displaystyle y=\frac{1}{f(D)}[g(x)] \)と表現できます。あとはこの右辺をあらゆる「公式」を駆使して計算するということになります。

公式はたくさんありますが絶対覚えなければならないものは下の3つです。

ポイント
①オールマイティ \(\displaystyle \frac{1}{D-a}[f(x)]=e^{ax} \int e^{-ax} f(x)dx \)
②eaxの場合 \(\displaystyle \frac{1}{f(D)}[e^{ax} ]= \frac{1}{f(a)}e^{ax}\)
③fが多項式の場合
\(\displaystyle \frac{1}{1-aD}[f(x)]=\{1+(aD)+(aD)^2+(aD)^3+\cdots +(aD)^n\}[f(x)] \)

証明は教科書に載っているはずなのでここでは省略します。結果を使いこなせるのが重要です。
なお③については「多項式の場合」と書いている理由を説明しておきます。両辺に(1-aD)をかけると
\(f(x)=\{ 1-(aD)^{n+1} \}[f(x)]=f(x)-a^{n+1} D^{n+1}[f(x)] \)
となりますが多項式の場合は何回か微分するといずれ0になるという性質があるので右辺の第2項がなくなり,両辺が等しくなります。つまりnは多項式の最高次の次数以上にする必要があります。

それではいくつかの具体例で計算してみましょう。

例題2

次の計算をせよ。
(1)\(\displaystyle \frac{1}{D}[\frac{1}{x}] \)
(2)\(\displaystyle \frac{1}{D^3+2D^2+5D+6}[e^{-2x}] \)
(3)\(\displaystyle \frac{1}{D-3}[e^{3x}] \)
(4)\(\displaystyle \frac{1}{D-2}[x^3+5x] \)
答え(1)①の公式にa=0を代入
\(\displaystyle \frac{1}{D}[\frac{1}{x}]=\int \frac{1}{x}dx=\log{|x|} \)

a=0のときはただの積分です。つまり微分作用素の計算をするためには積分計算はすべてできるだけの基礎数学力がなければなりません。

(2)②の公式にa=-2を代入

\(\displaystyle \frac{1}{D^3+2D^2+5D+6}[e^{-2x}]=\frac{1}{(-2)^3+2(-2)^2+5(-2)+6}e^{-2x}=-\frac{1}{4}e^{-2x} \)

(3)②の公式にa=3を代入しようとすると分母が0になるのでこの場合は②の公式は使えない。①のオールマイティの公式を使うしかありません。
①の公式にa=3を代入すると

\(\displaystyle \frac{1}{D-3}[e^{3x}]=e^{3x} \int e^{-3x}e^{3x}dx =xe^{3x} \)
ちなみに積分のところでxではなくx+C(積分定数)とすると\( (x+C)e^{3x} \)となりますよね。これでもいいのですが特解の1つを求めたくて計算しているので基本的に積分定数はなくてもいいです。なのでCを足していても足していなくても具体的な定数を足していてもどれでもOKです。
実はこういう場合の公式も存在します。最後に示しますが暗記量が多く大変だと思うので暗記は3つの公式に絞りました。覚える気力があるなら最後の公式を覚えてください。ただし採点する教授によってどこまで無証明で使えるかは微妙ですが...
答え(4)

\(\displaystyle \frac{1}{D-2}[x^3+5x] =\frac{1}{1-\frac{D}{2}}[-\frac{1}{2}x^3-\frac{5}{2}x] \\ \displaystyle = \{1+(\frac{D}{2})+(\frac{D}{2})^2+(\frac{D}{2})^3 \}[-\frac{1}{2}x^3-\frac{5}{2}x] \\ = (-\frac{1}{2}x^3-\frac{5}{2}x)+\frac{1}{2}(-\frac{3}{2}x^2-\frac{5}{2})+\frac{1}{4}(-3x)+\frac{1}{8}(-3) \\ \displaystyle = -\frac{1}{2}x^3-\frac{3}{4}x^2-\frac{13}{4}x-\frac{13}{8} \)

ここまではDの1次式,または右辺が指数関数のパターンを紹介しました。これはここまでの公式で1発で求まりますが次はDの2次式で,しかも右辺が指数関数ではないパターンです。1発ではないですがこれもここまでの公式で導けます。

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例題3

\( y’’-4y’+3y=x \)を満たすxの関数yを1つ求めよ。

\((D^2-4D+3)y=x \)なので求めるものは
\(\displaystyle y= \frac{1}{(D-1)(D-3)}[x]\)

答え解1 2回計算する
\(\displaystyle \frac{1}{D-1}[ \frac{1}{D-3}[x]] \)
まず\(\frac{1}{D-3}\)部分のみ計算する
\(\displaystyle \frac{1}{1-\frac{D}{3}}[-\frac{1}{3}x]\\ = (1+\frac{D}{3})[-\frac{1}{3}x] \\ = \displaystyle -\frac{1}{3}x-\frac{1}{9} \)
よって
\(\displaystyle \frac{1}{D^2-4D+3}[x] \\ \displaystyle =\frac{1}{D-1}[-\frac{1}{3}x-\frac{1}{9}] \\ \displaystyle = \frac{1}{1-D}[\frac{1}{3}x+\frac{1}{9}] \\ = \displaystyle  (1+D)[\frac{1}{3}x+\frac{1}{9}] \\ = \displaystyle \frac{1}{3}x+\frac{4}{9} \)
先にD-1のほうから計算しても同じです
\(\displaystyle \frac{1}{(D-3)(D-1)}[x] \\ \displaystyle =\frac{1}{D-3}[-x-1] \\ \displaystyle = \{ 1+(\frac{D}{3})\}[\frac{1}{3}x+\frac{1}{3} ] \\ \displaystyle = \frac{1}{3}x+\frac{4}{9} \)

答え解2 部分分数分解

\(\displaystyle \frac{1}{(D-1)(D-3)}[x] = \frac{1}{2}\{ \frac{1}{D-3}-\frac{1}{D-1} \}[x] \\ \displaystyle = \frac{1}{2}\frac{1}{D-3}[x] - \frac{1}{2}\frac{1}{D-1}[x] \)

解1と補足で計算した結果から

\(\displaystyle \frac{1}{D-3}[x]=-\frac{1}{3}x-\frac{1}{9} , \frac{1}{D-1}[x]=-x-1 \)

よって
\(\displaystyle \frac{1}{2}\{(-\frac{1}{3}x-\frac{1}{9})-(-x-1)\} \\ = \displaystyle \frac{1}{3}x+\frac{4}{9} \)

次は右辺が三角関数の場合です。これは
\(e^{ai\theta}=\cos{a\theta}+i\sin{a\theta} \)を用いると指数部分が虚数になる指数関数で表すことができるので公式②が使えます。それで計算した後,実部だけをとる,または虚部だけをとれば計算できます。

例題4

\(\displaystyle \frac{1}{D-a}[\cos{x}] \)を求めよ。

\( \cos{x}=Re(e^{ix}) \)を使います。
\(e^{ix} \)だと思って計算したあと実部を取ればOKです。

答え②の公式より
\(\displaystyle \frac{1}{D-a}[e^{ix}]=\frac{1}{i-a}e^{ix} \)
整理すると
\(\displaystyle \frac{(\cos{x}+i\sin{x})(i+a)}{(i-a)(i+a)} \\ \displaystyle = \frac{(a\cos{x}-\sin{x})+i(a\sin{x}+\cos{x})}{-a^2-1} \)
実部を取る
\(\displaystyle \frac{1}{D-a}[\cos{x}]=\frac{-a\cos{x}+\sin{x}}{a^2+1} \)

最後に,途中で与えた具体例を実際に解いてみます。

例題5

\(y’’-3y’+2y=\sin{5x} \)の一般解を求めよ。

ここまで学べば最初に示した問題も応用して解くことができます。

答えまず\(y’’-3y’+2y=(D^2-3D+2)y=0 \)の一般解は\((D^2-3D+2)=(D-1)(D-2)=0 \)の解が1,2だから
\(y=Ae^{x}+Be^{2x} \) (A,Bは任意定数)
次に\( (D-1)(D-2)y=\sin{5x} \)を満たす解を1つ求めればよい

\(\displaystyle y=\frac{1}{(D-1)(D-2)}\sin{5x} =(\frac{1}{D-2}-\frac{1}{D-1})\sin{5x} \)

を計算すればよい。

\(\displaystyle \frac{1}{D-a}[e^{5ix}]=\frac{1}{5i-a}e^{5ix}=\frac{(\cos{5x}+i\sin{5x})(5i+a)}{(5i-a)(5i+a)} \)

なので虚部をとれば
\(\displaystyle \frac{1}{D-a}[\sin{5x}]=\frac{5\cos{5x}+a\sin{5x}}{-25-a^2} \)
よって
\(\displaystyle \frac{1}{D-2}[\sin{5x}]=\frac{-5\cos{5x}-2\sin{5x}}{29} \)
\(\displaystyle \frac{1}{D-1}[\sin{5x}]=\frac{-5\cos{5x}-\sin{5x}}{26} \)
となるから特殊解の1つは

\(\displaystyle \frac{-5\cos{5x}-2\sin{5x}}{29}-\frac{-5\cos{5x}-\sin{5x}}{26} \\ \displaystyle = \frac{15\cos{5x}-23\sin{5x}}{754}\)

まとめると求める一般解はA,Bを任意定数として

\(\displaystyle Ae^{x}+Be^{2x}+\frac{15\cos{5x}-23\sin{5x}}{754}\)

【参考】特に覚えなくてもいい公式

公式②で分母が0になる場合

\(\displaystyle \frac{1}{(D-a)^n}e^{ax}=\frac{x^n}{n!}e^{ax} \)
⇒この場合はオールマイティ①の式に代入しても少ない計算量で導けるのでこの公式の暗記は不要。

sin,cosの場合で②の分母が0になるとき

\(\displaystyle \frac{1}{D^2+a^2}\sin{ax}=-\frac{1}{2a}x\cos{ax} \)
\(\displaystyle \frac{1}{D^2+a^2}\cos{ax}=\frac{1}{2a}x\sin{ax} \)
⇒この場合も\(D^2+a^2=(D+ia)(D-ia) \)として1回ずつ計算すればよい。(D+ia)は指数関数の公式②から計算でき,そのあとでオールマイティ①を使って(D-ia)を計算すれば比較的容易に導出できる。暗記は不要。

指数関数×f(x)

\(\displaystyle \frac{1}{g(D)}e^{ax}f(x)=e^{ax} \frac{1}{g(D+a)}f(x) \)
⇒使用頻度が高くない。この場合について教授が勉強しなさいと言われてないのなら暗記を捨ててオールマイティ①で計算すればよい。

本当は連立微分方程式も紹介する予定でしたが流石に長すぎるので別のページに分けます。

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